第225話 収まらない胸騒ぎ……。
「どういうこと? みんなお揃いで登場だなんて? 待ち合わせでもしてたわけ?」
「いや、本当はここで落ち合うはずが……。色々トラブルが重なって、ほとんどがここに来る前に出会ってしまったと……。」
予期せぬ邂逅が連続したことによるトラブル。処刑隊、梁山泊五覇の3人衆、そして鬼。俺達勇者一行がそれぞれの場所で敵味方入り乱れての大乱闘となってしまった。
時には死闘を交え、時には協力し、隙あらば自分の陣営の味方に引き入れようとする者もいた。とにかく無事に収まって良かった。特に最大の驚異とも言えた鬼を撃退することが出来たのはある意味、奇跡に近かった。
「昨日話していた鬼が現れたのだ。噂通りの驚異的な戦闘力の持ち主だった。私やロアが対処に当たり、なんとか追い返すことが出来たのだ。これはほとんど、ロアの功績だと言ってもいい。私ではほとんど手も足も出なかった。」
「いや、事前にエドと戦っていたからアイツは消耗していたのかもしれない。そうじゃなければ、アイツの体力が尽きるなんて事もなかったろうし……。とにかくギリギリの戦いだった。」
俺が鬼と出くわす前にエドが鬼と戦っていた事を知った。知らないところで起きていた偶然が撃退に繋がっていたのである。エドは手も足も出なかったとは言っているが、確実に消耗をさせていたはず。
エドも魔族退治専門の戦士だから、鬼だって手こずったに違いない。手こずってなければ、エド自身の命を奪っていたはずだ。目的は俺だったのだから、倒し損ねてしまったのだろう。
「揃いも揃って鬼退治なんかに夢中になってたわけだ? 私の大事な披露宴が台無しになるのも構わずに? そんなにボロボロの状態なら普通、ドレスコードに引っかかるんだからね?」
「しゃあないだろ。俺らだって命がけだったんだから! 服くらいは着替えればいいし。顔面崩壊して、本体の眼鏡が壊れた挙句、諸便臭くなった、どっかのアホボンに比べたらマシだと思ってくれ。」
少し離れた所にいるティンロンを指差した。そう、奴ら五覇の3人衆も来ている。レンファさんも同行しているので、ちょうど梁山泊五覇が四人も揃うという事態になった。
一応、俺の知り合い枠ということで、ミスター珍からもお祝いの品を提供してもらっているので参加資格を貰っている。ジュリアからすれば、レンファさん以外は誰それ?的な感じだろうが。
「アホボン? なんか影の薄そうなモブみたいな子? あの子、ただのお付きの使用人とかにしか見えないけど? アレがアンタんトコの流派の跡継ぎ? 大丈夫?」
「ウン、まあ、隣りにいるイケメンに乗っ取られる可能性は高いけど、そのうち成長してまともになるだろう、まだ若いし。多分……。」
初対面のジュリアにさえ心配される始末……。眼鏡がないから余計に影が薄く見えるんだからしょうがない。眼鏡が本体という表現が間違っていなかったことを改めて痛感する。まだ、怪我をして顔面崩壊してた時のほうがキャラが立っていたのかもしれない。
「そういえば、処刑隊の二人はいつの間にかいなくなっていたな?」
「うむ。彼らは君たちが見ていないところでそのまま去っていったよ。元々、我々クルセイダーズの騎士団とは折り合いが悪いし、君たちに対しても対抗意識を燃やしているのだからな。そう簡単に仲良くはなれんだろうし、そういうポリシーで生きている男なのだ。」
ブレンダンはヘイゼルと話している所を見た。学院からいつの間にか姿を消して処刑隊に所属していたという事実には驚かされた。エルに復讐宣言をしていたから、そこに行くのが最善と考えたのだろうか? それ以前に彼女の母、ナドラおばさんは処刑隊にコネがあるという情報があったような気がするが、それも関係しているのかもしれない。
「そうか。でもエドは昔からアイツとは知り合い? 名前をお互いに知っていたみたいだけど?」
「ああ。互いにクルセイダーズ内部での実力者同士だったから、昔から意識しあっていたし、共に戦場で戦った時もある。彼が処刑隊に入る前の経歴を知っている。」
割と親しげに話し合っていると思ったら、昔からの知り合いだったわけか。過去も知っているとのことだが、最初からヤツは処刑隊にいたわけではなかったのだろうか? どうも気になるな。アイツがフェイタルギアのオリジナル品をもっている事といい、色々と謎の多いやつだ。
「あのブレンダンは昔はどんなヤツで、どんな部署に所属していたんだ?」
「ああ、アイツは法王庁のテンプル騎……、」
「ジェイ! それにジム! 一体どうしたんだ?」
俺がエドにブレンダンの過去を聞こうとしていた所に、突然のファルの声。何やら、ただごとではない雰囲気がする。見てみれば、学院で見た新型ゴーレム…おそらくあれはジム、そして何か体のあちこちを損傷しているようだ。それをジェイが肩を貸す感じでここまで辿り着いたようだ。何があったのか?
「ジェイは大丈夫だニャ。ジム君が怪我をしてる。」
「だ、大丈夫…ですよ。僕の体はゴーレムなんです。まともに動けなくなっている程度ですから、心配はご無用です。」
「ジム、なんという無茶を! 危険と判断すれば逃げても良いと言ったはずではないか!」
「ごめんなさい、イグレス隊長。でも、相手は魔王。しかも向こうの手の内にはタニシさんがいたんです……。」
「魔王だって!?」
多数の驚異を退けたと思ったら…今度は魔王が現れただと? しかもタニシが! 嫌な予感が的中してしまった! 何があったっていうんだ?