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第209話 お互い痛み分けということで……。


(ビキッ!!!)



 フェイロンさん達の攻撃が激しくぶつかった直後、何かに亀裂が入ったような音が聞こえた。見るとフェイロンさんの矛の穂先、ちょうど先端の刃が二股に分かれたところの中央部、そこに亀裂が走っていた!



「なっ!? 馬鹿な!? 俺の矛にヒビが!?」



 亀裂は徐々に根本に向かって伸びていき、穂先全体に伝わった時点で全て崩壊してしまった! 陶磁器の食器が砕け散るように割れて、矛はただの棒切れと化した。



「なってこった! 幾多もの激戦を乗り越えた矛が壊されちまった! 伝家の名矛だってのに……。」


「このブレンダン様の断頭台スペシャルとぶつかったんだ。ただじゃ済まされねえよ。体が無事だったことを幸運だと思うんだな。」


(ビシッ!!!)



 今度は処刑隊の…ブレンダン、次は彼のところから破砕音が聞こえた。あの細長い鉄板のような、建物とかの鉄骨のような剣に亀裂が入っていた。あんな頑丈そうな武器でさえ、あの瞬間に損傷を受けていたみたいだった。



「おやおや? おたくの武器も壊れてるじゃない? しかもさ、俺の矛みたいに繊細ななりじゃないのにねぇ?」


「馬鹿な! 下手な盾や城壁よりも頑丈な俺の”首断ち《ネック・クラッシュ》”が壊れただと!? そんなちゃちい矛なんぞに!!」


「こちらこそ、俺の独自の奥義、飛龍覇奥義を喰らったらただじゃおかないよ? 矛を壊されたのは癪だけどね。まあ、おたく自慢のイチモツをぶっ壊してやれたんだから、帳消しにしといてやるよ! 要するに、俺の勝ちね!」


「野郎……、言うじゃねえか? 獲物そっちのけでその首、意地でも叩き落としたくなってきたぜ!」



 お互いに武器は壊れたというのに、再び二人は睨み合いを始めた。武器が壊れただけで済んだんだから、ここで止めておけばお互い傷つくこともないはずなのに……。でも、男性は戦いのことになったら歯止めが利かなくなるのも知っているから、これを止めるのも難しい。どうしよう……。


「フェイ、それ以上はいけないアル! これ以上戦っても誰も得しないアルよ!」


「はいはい、おこちゃまは黙ってなさいよ。これは大人の問題。子供が首を突っ込むような案件じゃないのよ。」



 シャンリンちゃんは二人の我慢できなくなって、割って入っていった。さっきまでは押し黙っていたけれど、とうとう限界が来たみたい。好きな男の人がよくわからない相手と喧嘩して怪我するのは見てられなくなったんだと思う。



「またそうやって、私を子供扱いする! そんな理屈を盾にして人の言うことを聞かないのは、よくないアル! そんなの子供のワガママと大差ないアルよ!!」


「ハッ、面白い嬢ちゃんだな。だが、戦いやプライドが関わっている以上は誰にも止められねえ。これが大人の世界、男の世界ってヤツなんだぜ?」


「止めないなら……私が二人を成敗するアル!」


「は……? 何いってんの、お前? 冗談言うなよ?」


「ハハッ、嬢ちゃん、いい度胸してんな。俺に喧嘩売るたぁ……、」


「武器が壊れた馬鹿二人なら、余裕で倒せるアル!」



 その時、シャンリンちゃんからものすごい気迫が発せられた。普段の可愛らしい少女とは同一人物とは思えないくらいに! そういえば、この娘も五覇の一人。レンファ先生やフェイロンさん達と同じ称号を持っている。そう考えれば、その名に恥じない気迫を備えているのだと今更ながらに気付かされる結果になった。



「……ほう? 口だけじゃないんだな。割といい根性してるぜ。気に入った。」


「やれやれ……。マジになってんじゃないよ。ホント、俺らを相手にしたらお前でもただじゃ住まないぞ?」


「では、私が加わればどうなるかな?」


「レンファ殿だけではない。私も加わる覚悟はある。無益な戦いを止めるためならば!」



 一触即発の状態な三人の前に現れたのはレンファ先生と…イグレスさんだった! レンファ先生は彼に肩を貸してここまで来たようだった。彼の鎧が所々、凹んだり、曲がったりしている。誰かと戦って怪我をしているような状態だった。



「げっ!? レンファ!? しまった! アンタまで止めに入ってくるとは……。」


「イグレス!? やはりここに来てやがったのか!」


「ブレンダン、フェイロン殿、ここはお互い引き下がってもらえないか? レンファ殿やそこにいる少女の願いを聞き入れてもらいたい。」


「誰かは知らんが、俺は男の言うことなんて、さらさら聞くつもりはないぜ? そう簡単に引き下がれるもんかよ!」


「そんな怪我した状態で俺らを止めるだって? いくらアンタでも止めるのは無理だろうぜ?」


「止めてもらいたい理由は他にある。別の脅威がこの街、特に勇者の元に迫っているのだ!」


「脅威だぁ?」


「ハッ、脅威? まあ、魔族の軍勢や魔王が現れたってんなら話は別だがね?」


「十分にそれに匹敵しうる脅威だ! その正体は鬼だ! 魔人トウテツを名乗る男がこの街に現れたのだ!」


「饕餮!? 奴がこの場に現れたのか!?」


「鬼だと!? 東洋の魔族とかいう奴か!?」



 イグレスさんのもたらした情報は二人を驚愕させるには十分な内容だった。私も聞いた瞬間、全身の血の気が引いた。しかもロアを狙っている。それは私が最も恐れていた懸念だった。この前、鬼自身が言っていた様に雌雄を決するのが目的なのだとしたら、それは彼の”死”を意味している。早く、早く助けに行かないと、彼が殺されてしまう!

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