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第20話 異次元なチャンピオン!?


「うんめぇぇぇっ!! 最高でヤンしゅう!!!」


(バリバリ!! ボリボリ!!)


「ふんがぁぁぁっ! これはたまらんじょぉぉぉっ!!」


(ボリボリ!! バリバリ!!)



 必死の形相! 血走った目! 飛び散る破片! 現場は死に物狂いで食い散らかす、猛獣たちに埋め尽くされていた。年に一度の祭典。その実体は暴食の祭りだったのだ!



「うわぁ……。想像してたよりもヤベぇな。俺らが解決した事件ですら、ちっぽけに思えてくるな。」


「全くだぜ。世の中にはヤベぇジャンキーがいるモンだな。ここまでむさぼり食うとはよっぽど餓えてたんだろうよ。やれやれ……。」



 俺達は恐ろしい物を目の当たりにすることになった……。あんなにも大きな玉を丸かじり! 普段はかわいらしい外見をしたピエール君や、普段俺と同じくアホ面を晒しているタニシまでもが凶暴な猛獣と化しているのだ! 親を殺した仇を食い殺すような勢いでむさぼり食っている! ……キャベツを!!



「もう、二人とも大げさですよ。何かの殺人事件みたいな感想を口にしないで下さい!」


「いやぁ、でも、こんなん見たら普通ドン引きするでしょ?」


「でもお祭りなんですよ? 人が誤解するような表現は慎んで下さい!」



 ここの名物という“キャベツ祭り”。牧畜も盛んだが、農作物も質がいいと評判であり、一部は法王庁にも献上しているそうだ。味は法王猊下のお墨付きであるらしい。



「これが原因か? 野菜自体は嫌いなタニシがキャベツ好き、いや、キャベツジャンキーになったのは?」


「ホームステイから帰ってきたと思ったら、キャベツ丸かじりばっかりし始めたんですよ。あの当時はそれが原因で栄養失調になって病院送りにもなったんですよ。」


「おバカなところは昔から変わってないんだな。」



 メイちゃんが言うには、キャベツ祭りに参加した時をさかいに、一転してキャベツ・ジャンキーと化してしまったそうだ。それまで野菜は何があっても食べなかったそうだが、キャベツ無しでは生きていけない体になったのだそうな。一時期、キャベツを見た途端に目が血走り、キャベツを食べずにはいられない衝動に駆られる事が多発したようだ。まるでヤク物中毒患者みたいだ。ヤバすぎ。



「ほんまおいしそうに食べてくれてて、嬉しいわぁ。これやから、仕事にやりがいを感じるねん。」



 パイタンがやってきた。あの日、酒場で情報を提供提供してくれた人物の一人だ。なんでも、キャベツはこの子の家で生産されたものであるらしい。まさか、コボルトたちにむさぼり食われるほどの物を生産しているとは思わなかった。



「難事件をたった一日で解決しはったやてなぁ! さすが、勇者さんやわ。」


「いやぁ、幸運が重なっただけだし、被害者はもう手遅れな状態だった。きれいに解決は出来なかったから、言うほどでもないよ。」


「そんな謙遜せんでもええやん。これまで誰も解決出来へんかったんやし。」



 一般的には、はぐれ魔族による仕業だったという事にしてある。なにせ魔王が二人も事件に関わっていたと知ったら、大騒ぎになるかもしれなかったからだ。



「でも、残念やわ。あの黒コボルトさんが魔族に操られたかわいそうな人やったなんて。」


「でも、倒したことで浄化は出来たと思うから、ちゃんと成仏出来たと思うよ。俺らに出来るのはそこまでだからね。」



 犬の魔王ははぐれ魔族に操られたコボルトだったことにしてある。そして、あの場で俺が倒したということにした。理由は他と一緒だ。アイツの様子からするとこの町に再び現れるとは思えなかったし。



「事件解決したから、もうこの町から旅立ってしまうん?」


「いや、しばらくは滞在して羽を伸ばすつもり。もともとはそれが目的だったしね。事件の解決はココを紹介してくれた知り合いの頼み事だったから引き受けたんだ。」


「じゃあ、やっぱ、味の女帝様と知り合いやったんや。」


「ブッ!?」



 どうやらサヨちゃんの事も知っているようだ。特選食材と聞きつければ一度くらいは顔を出していそうだもんな。料理人やグルメ以外に生産者ともコネを作っているようだな。あのいやしんぼめ!



「やっぱ知り合い?」


「うん、まあ。俺のスポンサーみたいなものだからね。」


「今度会うたら言うといて。マーケティング戦略のアドバイス、役に立ったって。」



 たはは、商売の相談にも乗っていたワケか。良い食材も世に知られてなかったら、宝の持ち腐れだもんな。幅広く活動してるな、あのロリババア。



「さて、キャベツ早食い競争も制限時間を向かえました。間もなくチャンピオンの発表となります!」



 そういえばドン引きしていたから忘れていたが、これは祭りの名物イベント、早食い競争だった。タニシとピエール君は食い過ぎで腹がパンパンになって、自分たちがキャベツみたいな外見になっている。食べ過ぎだ。



「今回の優勝者は……スミス・ダッフンドさんです!! コレでV3となります! 果たして彼に勝てる人はいるのでしょうか?」



 どこかで聞いたことのある名前だと思ったら……あの細長従業員だった! しかも、体細いままじゃないか! どこにキャベツは消えたのだろう? あの体は異次元につながっているのでは、と邪推せざるを得なかった……。ダッフンだ!

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