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第187話 戦えるだけでもありがたいと思え!


「誰だお前は?」


「俺を知らないってか? 世界一の伊達男、ジン・フェイロン様のお出ましだぞ?」


「知るか!」



 やっぱり、戟覇じゃないか! ファルが知らないのも当然だが、俺もハッキリ言って対面した事はなかったので、顔までは知らなかった。ただ、噂だけは梁山泊内部でも知れ渡っていたので、どんな人間かはよく知っている。


 女たらしの優男だが、その実力は本物で唯一、宗家パイロンと渡り合えるだけの実力を備えた人物だという。次期宗家の候補としても名が上がっている男だ。



「アンタか? あの爺さんに土を付けたってのは? 冴えない顔だねぇ? こんなその他大勢みたいな顔つきの奴にやられるたぁ、爺さんも引退考えたほうがいいだろうな?」


「バカを言うな、フェイ! 父上に引退勧告をする役割は刀覇たるオレがふさわしい。このような有象無象の男にくれてやるつもりはない!」


「……。」



 刀覇だって? 先代は引退したのか? 会ったことはないけど、宗家と同じくらいの高齢の人物だと聞いたことがある。刀術は長らく実力者が現れなかったために代替わりすること無く続けていたそうだ。その先代をティンロンは破ったというのか? 若くして実力を身に着けているという話は聞いていたが、それほどまでだったとは……。



「フェイ、そこのうるさい亜人はお前が黙らせておけ。オレはこの男の処刑を断行する!」


「はいはい。じゃあ、俺達は色男同士でやり合わせてもらうよ!」


「その一言は余計だ!」



 ファル達は睨み合いを始めた。こうなったからには戟覇をファルに任せておくしかない。刀覇と戟覇、そのどちらか片方でさえ倒すのは不可能に近いのに二人がかりだと更に勝ち目がない。ここはファルに甘えて、ティンロンをどうにかすることだけを考えるしかない。



「あのさ、場所だけでも変えてもいいかな?」


「フン、大衆の面前で恥を晒すのは嫌だと申すのか? いいだろう、死に場所くらいは貴様が決めるが良い。せいぜい後悔のないようにな?」



 人が集まる中で全力を出すわけにはいかない。巻き込む可能性があるから。特に相手は人に被害が出たとしても平然と戦い続ける可能性があるだろうから、それを避けるためでもある。人も建物もない場所……それは必然的に街の外という事になる。一緒に付いてくるように相手へと促す。



「街の外か? 良かろう。誰も貴様の血飛沫など浴びたくはないだろうしな。今からオレの刀によって細切れとなって果てるのだからな。片付けの手間も省けるというもの。」



 道中でも、俺に散々に嫌味を言ってきている。やっぱり変わっていない。昔からこうだ。俺が一人で鍛錬している時、食事を作ったりなどの雑用を熟している時にいつもそういう嫌がらせをしてきたのだ。



「どこまで行くつもりだ? オレがどこまでも待ってやると思っていたとしたら、それは大間違いだぞ!」


「じゃあ、このへんで。」



 街の門からある程度離れたところ、何も障害物とかがない平地を選んだ。これなら存分に戦えるはずだ。誰にも迷惑はかからない。義手から剣を取り出し構えを取った。



「貴様、義手なのか? まあ、貴様のようなゴミならそうなるのも必然だろう。生きていたことだけは褒めてやろう。オレによって処刑される機会が出来たのだからな。」



 ティンロンは刀を抜いた。さっきと同じで片方だけ。本来二刀流で戦うところを片方だけで相手をしようというのだろう。刀覇の技は二刀流で真の力を発揮するとも言われ、極めるのならばそれを習得する道は避けられないとも聞く。それを発揮せずに戦おうというのだ。それだけ実力差があると思われているのかもしれない。



「感謝しろ。本来、貴様の様なゴミとは戦う価値さえない。戦えるだけでもありがたいと思え! エリートが直々に遊んでやると言うのだ!」


「……。」



 皮膚を刺す痛みを感じるほどの強烈な殺気。これは宗家から感じるものと全く同質のものだ。それだけでも半端ない強さなのが感じ取れる。ファルの剣を斬った、落葉割旋、あの一撃だけでも計り知れない実力の片鱗が垣間見えてしまった。アレを凌げるかどうかさえわからない。



(……キンっ!!!)



 その一撃は一瞬で来た! 瞬間的に間合いを詰め、俺に迫ってきた反射的に剣で防いだが全く見えない! 恐るべき速さの踏み込みだった! 反応できたのが不思議なくらいだ!



「反応しただと? しかも落葉割旋で斬れぬとは!」



 痺れが来るほどの一撃。衝撃自体は少なかったものの剣を通して伝わる威力がただの一撃ではなかったことを証明している。ある意味これは剣に助けられたようなものだ。ごく普通の剣だったら、腕ごと切り取られていたかもしれない。



「そう何度もまぐれは続かない!」



 矢継ぎ早に攻撃が来る! いや、攻撃と言うより、閃光だった。速すぎて一瞬の光しか見えないのだ! キラ、と光った瞬間に剣同士が打ち合う金属音が鳴り響く。鳴り響くということは辛うじて防御だけは出来ているということでもある。それに対応できている自分に対しても驚くばかりだ。



「ちぃい!? 何故だ! 何故反応できる! ならばこれはどうだ! 樹大招風(じゅだいしょうふう)!!」



 戦技一❍八計、樹大招風(じゅだいしょうふう)! 大木でさえ突風に曝されれば折れることもある。それを体現した技で、まるで竜巻のごとく体を旋回させつつ連撃を浴びせる攻撃だ。更に強まる旋風を俺は防ぎ切ることが出来るんだろうか?

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