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第183話 強者たちが集う街


「やあ、エド、久しぶりだね! 君と会うのは大武会以来かな?」


「うむ、そうだ。君たち夫婦…とは言っても、結婚してから会うのは今回が初めてとなるか。」



 ガンツとジュリア、ローディアス夫妻に招待され、エル・ダンジュの街を訪れることになった。式そのものは半年ほど前に挙げたようだが、参列者は基本的に法王庁側のゲストで席が埋められていたので、我々の入り込む余地などなかった。


 新婦のジュリアが教団側の人間である以上、これは致し方ない事であった。そうしなければ、教団側のメンツを潰すことになるため、止むを得ずそういう形式にせざるを得なかったのだ。



「私としては今回の方が本番だからね! 今回の方がお金かけてるから期待しといてよ! 色々奮発してるからね!」



 それでは当人たちも納得できなかったのか、親しい者のみを招待して別個で披露宴を開くこととなった。そして、ロア達勇者一行の中には聖都入りが困難な者もいるため、聖都から離れた街で開かねばならなかったのだ。



「ハハ、それは楽しみだな。期待しておくよ。」


「いろんなゴチソウが食べられそうで良かったニャ!」


「やたーっ!! ゴチソウ、ゴチソウ!!」


「ちびっ子にも楽しんでもらえる様な催しがあるから、お楽しみにね!」



 私はジェイ親子と共にこの場所を訪れた。ちょうど直前の任務で共に行動していたからだ。なお且つ、彼の居住地域にも近かったので、どうせならということもあって倅を連れてくる事にしたのだ。



「でも、二人だけだったのか……。相変わらず、君たちは忙しいんだな。」


「ハハ、同行出来なかっただけさ、ウネグもクロエも明日には必ずやってくるから心配しなくても容易。」



 他の黒の兵団メンバーとは別行動だ。ウネグは重要任務のため遅れての参上となるし、クロエは…聖都で私事のために別ルートで訪れる事になっている。みんな多忙だが、仲間のためにスケジュールはしっかりと空けている。我々の仕事の特性上、いつどこで命を落とすかわからない。そのために仲間に合える機会には積極的に参加する癖を付けているのだ。



「あのへっぽこ勇者はどうしてるのかねぇ? なんか最近あちこちで大事に巻き込まれてるみたいだけど?」


「ハハハ、各地で更に新たな武勇伝を生み出しているそうじゃないか。魔術学院での騒乱を収めたり、聖歌隊を危機から救ったりしたそうだな。やはり時代が彼を必要としているのだろう。」


「ある意味、疫病神とかマッチポンプみたいな存在なんじゃない、アイツ?」



 他にも細かな所で魔族が関わる事件を解決したりといった活躍もしているようだ。これらの情報はファルからの報告書で確認した事柄だ。彼からは個別に連絡が来た事項もある。処刑隊…特に不可視の鎌がロアに目を付け始めたという情報が気になる。彼らが厄介なのは私もよく知っているからだ。



「聖歌隊の件では不可視の鎌の介入が見られたそうだ。とうとう勇者に対して動きを見せ始めたようだな。君たちも気をつけた方がいい。」



「そうね。元から私はアイツら、特にトップのオバちゃんには目をつけられてるからね。うちの母の代から因縁があるから、腐れ縁みたいな物だし、ずっと気は許してない。」



 同じ法王庁の組織とはいえ、ジュリアの所属する神官戦士団と異端審問会は昔から対立している。”魔”と関わった者全てを排除しようとする審問会と、それを良しとせず、弱き者全てを救済対象としている戦士団では意見が噛み合わないのだ。特にジュリア達母娘と審問会トップ、聖轢の貴婦人(マダム・クラッシャー)の名で恐れられるオードリー・ヒートバーンズの対立は激しかった。



「他に良からぬ噂も耳にした。例の学院での騒動に現れたとされる”鬼”と呼ばれる存在だ。」


「ああ……勇者君が学院から離れた後に現れたという?」


「”鬼”ねえ? でも、あの事件って魔神まで現れたんでしょ? 危険度で言えばそっちの方が気になるんだけど? あの恐怖の伝道者(デス・メッセンジャー)の配下でしょ? そっちの方がヤバくない?」


「それに関して気になる報告があるのだ。その”鬼”は勇者ロアと同じ、もしくはその源流とも言える流派の使い手であるそうなのだ!」



 事に当たっていたロッヒェンJr.の報告によれば、暗黒闘気と共にそれらの技を使っていたという。かの流派の源流に当たると本人は豪語していたようだ。彼は卓越した格闘術の使い手であり、魔神とも五分で渡り合い、迷宮に大穴を空けるほどの奥義を披露したという。


 魔族と同等以上の脅威でありながら、あの流派を使いこなすのだ。想像しただけでも恐ろしい。かの宗家とも手合わせしたが、私では足元にも及ばなかった。それに匹敵する脅威が現れた事に警戒心を抱かずにはいられない。



「何よそれ? なんでそんなのが遠くの国からやってきたのよ?」


「うむ、おそらくはロアを討伐するのが目的なのだろう。そして、グランデ嬢を陣営に引き入れるためでもあったようだ。」


「あの二人を……? 方方から狙われてるじゃん、あの二人。」


「しかも、この街の近隣で”鬼”と思しき影を目撃したとの報告も上がっている。」


「物騒ねぇ……。邪魔されなきゃいいけど……。」


「邪魔はさせぬさ。そのために私やジェイがいるのだ。必ず守ってみせる。」



 とは言ったものの、子供がいる手前、ジェイにも下がっていてもらわねばならない。ウネグやファル、そして念の為にスタンバイしてもらっている新人と協力して事に当たるつもりだ。この街の平和はクルセイダーズが守ってみせる!

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