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第179話 戦場なら一度死んでいる!


(ブオッ!!)


「フム。中々いい踏み込みだ。見た目によらず、その大剣を使いこなしているようだな?」


(ブワッ!!)



 またたく間に二撃を繰り出したがどちらも躱された! まず袈裟懸けに一閃。これは右側にスライドするような形で躱された。次は振り下ろしたところからその遠心力を利用して体を回転させ、更にスピードを乗せた横薙ぎの一撃を繰り出した。これもその場でしゃがみ込む様な動きで躱されてしまった。



「その大振りさ故に繊細な剣捌きよりも、その質量、剛性を頼りにした攻撃を仕掛けるのに適しているのだろう。」


(ヒュゴッ!!!)



 しゃがみこんだ体勢の彼に対して振り下ろす一撃を浴びせた。しかしこれも何事もなかったかのように躱された。それだけじゃない。今度は姿まで見えなくなった。あのしゃがんだ体勢からは信じられないような速さで姿を眩ませたのだ!



(ガッ!!!)



 振り下ろしの一撃は舗装された地面を刳り、剣はそのまま食い込んだ。相手が避けなければ彼自身がこの様な目にあっていたのだろうが、残念ながらそこに彼の姿はない。当たっていたら命の保証はないため、反面、ホッとしている自分もいる。



(……トッ!!)


「ああっ!? いつのまに?」


「クッ!?」



 地面に食い込んだ剣の切っ先…その上に立つような形で彼は立っていた。気付くと同時に左の頬に冷たい感触を感じた。彼が刀の側面を触れさせているのだ!



「これで貴様は一度死んだ。戦場であればオレは躊躇いなく貴様の首を落としていただろうな?」


「ううっ!?」



 ヒヤリとした。頬での感触が背筋にまで伝わったかのような錯覚を感じた。彼の言う言葉は冗談ではない。本気で首を落としかねないほどの殺気を言葉に込めていた。正に僕はこの時点で一度死んだ。



「この決闘は僕の負けで終わりということになるんでしょうか?」


「貴様は一度死んだことにはなるが、終わり、とは一言も言ってはいない。」


「では、続行ということで。」


「オレに刀を抜かせたのだ。もう少しオレを楽しませてみろ。」



 剣術そのものでは敵わなかった。でも僕の戦い方はこれだけじゃない。ここからはあらゆる手段を使って戦うつもりだ。恐らく彼はそれすらも見抜いているように感じる。その上であの様な発言をしたのだろう。



「では遠慮なく…!」


(……ヒュン!)


「ムッ!?」



 突然の飛来物だというのに、彼は顔を反らしただけで躱した。でもそれだけで終わるつもりはない! 矢継ぎ早に攻撃を繰り出す司令を飛ばす!



「おかしな形をした武器だと思っていたら、その様な隠し玉が仕込まれていたとはな! しかも念動力で自在に操る飛刀!」


(ヒュオッ!!)



 まだ不安定な剣の上に立っているというのに上半身の運動だけで追従剣の動きをしなやか動きで躱している! 彼は剣術のみならず、体術の習得や体幹の鍛錬を回避の術として体得しているのだろう。軽業師すら舌を巻きそうな程の洗練された動きをしている! これが東洋武術の真髄なのか!



「念動力とはいえ、実際の剣術にも劣らぬ動きを再現しているな。見事だ。だが我が流派にはそれも通用しない! 戦技一❍八計、柳枝不折。しなやかな柳は雪が積もろうとも風が強く吹こうとも折れはしないものだ。」



 今、戦技一❍八計、と言った? あの独特の体術はあの流派の技の一つだというのか? ということは彼は勇者さんと同じ流派の出身なのかもしれない。彼は一体何者なんだ?



「今の技名を聞いて、あなたが何者なのか興味が沸いてきました!」



 興味が沸いた……そう、あの流派の使い手なら挑戦する意義は大いにある! 僕はいずれ勇者さんを超えたいと思っている。その過程でもう一度再戦したいと考えていたから、事実上、再戦が叶ったとも見れるから、尚更、闘志が沸いてくる! その思いを胸に、未だ地面に釘付けされたままの剣を彼の体ごと一気に引き起こした!



「ぬうっ!?」


「あなたの流派が分かったのなら、存分に戦うことが出来る! 何故なら全力を以て挑まないと勝てないのは分かっているから!」


「ムウぅ!?」



 剣を引き起こした拍子に体勢を崩しかけた彼にこれでもかと言わんばかりの複合的な攻撃を浴びせた! 追従剣と自ら手にした剣での連携攻撃! 二人がかりでの攻撃にも等しい息つく暇もも与えないほどの勢いで攻め立てた!



「くっ!? やりおる!?」



 彼はたまらず、刀で攻撃を受け流す行為をしてしまっていた。とうとう本人の宣言通りにはいかない事態へと発展しているのがわかった。でも相変わらずもう片方の刀は抜いていない。これからそれも抜かせてみせる!



赫灼の雨ハイス・ロット・レーゲン!!!」


(ガギャ、ガギャ、ガギャ、ギィィィン!!!!!)



 けたたましい金属音が辺りに響き渡った。その一撃一撃でさえ絶命しかねない威力で繰り出しているというのに、彼は完全に対処している。左右に持った刀を使って!



「驚きましたよ! 僕の最大の奥義を全部防いでしまうなんて!」


「ふ、甘く見るなよ流派梁山泊を! その程度、我らの奥義の足元にも及ばない!」



 全力の奥義を全て防がれた……。正直ショックな事実だけど、彼に刀を使わせた。両方の刀を抜かせることに成功した! 少なくとも彼本来の力を引き出す事には成功したんだ!



「ちっ!? オレに刀を使った防御をさせてしまったな? しかも、刀を両方抜いてしまったではないか!」


「これであなたのお眼鏡に叶いましたか?」


「フン! 調子に乗るなよ。この事態で勝ったつもりでいるのなら、この後、地獄を見ることになるぞ? 今から貴様は醜い細切れ肉と化すのだからな? 我が妖刀を両方抜かせる事が何を意味するのか、貴様は身を以て知ることとなろう!」



 僕はその言葉に戦慄を抱いた。いや、言葉だけじゃない。彼の体から、刀から発せられる恐ろしい殺気を感じた瞬間から冷や汗が止まらなくなった。特にあの刀からは尋常じゃない気配を感じる! あれは僕の赤き十字の炎剣フランメ・クロイツ・ノイエ以上の力を持っている!



「待ちなさい! 二人共! こんな所で争ってはダメ!!」



 緊張感が走る僕たちの間に割って入る人がいた! Mrs.(フラウ)グランデだ! 彼女は危険を伴う行為をしてまで僕たち二人を止めに来たのだ。そして、その側には見覚えのない少女がいた。その子は眼鏡の少年を止めに立ちはだかっていた。これは一体……?

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