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第166話 チャーハン作るよ!


「名付けてチャーハン猫! 珍々酒家のイメージ・キャラクターでヤンス!」



 聖歌隊での一件が決着を迎え、旅立つ前にミスター珍の所へ別れの挨拶をしに来ていた。珍の店は料理店”珍々酒家”の経営も始めたわけだが、それも軌道に乗り始め、更なる客集効果を促進させるためにイメージ・キャラクターの導入を検討したようだ。今日はそれのお披露目の日となっていたようである。



「ていうか、これ、お前の”ボウケン猫”の衣装違いなだけじゃないのか?」


「これはボウケン猫とは生き別れの兄弟、チャーハン猫なのでヤンス! だから別人、いや、別猫なのでヤンス。」



 タニシが作り出したオリジナル・キャラクターの”ボウケン猫”であるが、とうとうメジャー・デビューの機会がやってきたのだ。学院でも展開を試みたが、色々あって頓挫してしまった過去があるので、今度こそはという願いを込めて再始動した。今までの活動の合間を縫って打ち合わせを重ね、デザインなどを完成まで持っていったらしい。



「でもさ、ナニコレ? チャーハン作るの失敗してる絵があるんだけど?」


「それはそういうキャラなんでヤンス。実際にしてるワケないヤンスよ!」


「ええ〜?」



 店の看板とか店の壁には猫がチャーハンを作る絵が書かれている。それが連続した場面を描いており、小話仕立ての構成が成されている。作っているまではいいのだが、途中で鍋からチャーハンをこぼしてしまい、慌てて猫が鍋に戻し、作るのを続行する、という流れになっている。これ、ホントにええんか? イメージ悪くならない? 心配になってしまう。



「これはただのギャグでヤンス。ある意味でのお約束みたいなものでヤンス! 要するにミ・ー・ム!!」


「ミームねえ……?」



 よくあるネタとかノリとかを総称して言う言葉であるらしい。例えば、エニッコス伝説の有名シーンとかもそれに該当するようだ。他にもタニシおなじみのC・F・Mキャンプ・ファイヤー・ミーティングとかも挙げられる。アレもダンジョン攻略でやりがちなミスとかを集めて、それを防止する活動なんだしな。



「ワタシ、いいアイデアだと思うアルよ。客の目を引くには多少過激な謳い文句を使うのは商売の上では定石アルね。内容の是非よりもお客さんの目を引くのが重要アルよ。」


「でも、これ下手したらクレーム来るんじゃない? ケチ付けられたら終わりなんじゃ?」


「無問題。コレ、あくまでイメージ・キャラクターがやってることネ。嘘八百アルから大丈夫アル。だから、架空のキャラクター採用したアルよ。」



 あくまで店実体とは切り離した存在を作り、道化を演じさせる。笑われたり、誹謗中傷の標的となってしまうのだろうが、あくまでそれは客寄せのための囮とかダミーみたいに使って、宣伝効果を狙うということか。雑技団の道化みたいなものか。ふざけたことをして笑いを誘うという行為がマイナスではなくプラスに作用するというような。一見、役に立たないように見えても、実は最大の貢献者なのである。



「ところで、ここを離れてどこへ行くアルか?」


「ああ、それだけど、当初の目的はそのまま法王の元へ向かうつもりだったけど、友人からの誘いで別の場所へ行くことにしたんだ。」



 アイリとの決着がつき、男に戻ってゆっくりしていたら、俺らの元に一通の手紙が届いた。ファルがクルセイダーズの詰め所に久しぶりに出向いたら、届いていたらしい。その差出人というのは……ジュリアだった。エルからじゃなかったので、ガッカリしたのは言うまでもない。



「まあ、なんちゅうか、知り合いがね、披露宴するから来い、なんていうことがかいてあったんだよ。」


「それは、それは! おめでたいことこの上ないアルよ。知らない人とはいえ、知り合いの知り合いアル。お祝いの言葉をお送りしたいアルよ。」


「いやあ、式自体はもうすでに終わってたらしいんだが、教団関係者なんで俺らはお呼ばれしなかったわけよ。身内にワケアリの人がいっぱいいるんでね。俺もその一人だと思うし、俺の彼女が特にそうなわけよ。」


「ああ、その事アルか。色々と察したアル。下手に呼ぶと戦争になりかねないアルな。」



 占いで……? まさかね? まあ、独自の情報網は持っているだろうから、俺達の素性はバレバレだろう。そこそこ有名人なわけだし、ちょっと調べればわかることだろう。別に驚くようなことでも……ないはず。


「どこまで知ってんの? 俺、ほとんど話してないよね?」


「ワタシ、何でも知ってるアルよ。当たるも八卦、当たらないも八卦アルよ!」



 勇者としての情報を知ってるんなら当然、俺が母国にいた頃の情報も掴んでいるかもしれない。宗家を倒したという話を聞いていないはずはない。あの爺さんはそれくらいの名士で影響力を持っているのである。いや、待てよ? 俺の居所を宗家が知っていたのは、この人が知らせたからなのでは……? いやいや、せっかくの同郷の知り合いなんだから、疑うのは止めておこう。



「まあ、それ置いといて、聖都から離れた、教団の影響力が少ない場所で披露宴を開くことになったらしいんだ。しょうがないから、そこに行くことにしたんだ。他の仲間もみんな集まるみたいだし。」


「それはどこアルか?」


「エル・ダンジュ、っていったかな? 天使の羽だか、そういう意味のある名前の街だそうだ。」


「ワタシの商会の支部がそこにあるアルよ。お祝いの品届けさせるから場所を教えてほしいアル。」


「そこまで気を使って貰わなくてもいいよ? ジュリアのこと知らないでしょ?」


「クルセイダーズ騎士団の総長の娘アルな?」


「知ってたのかよ!」


「なんでも知ってるアル。今回の件でお世話になったアルから、お礼の代わりと思ってみんなで楽しんでほしいアルよ。」


「まあ、そう言われちゃ、アイツも悪い気しないか? 喜んで受け取るとするよ。」


「なになに? なんか美味しそうなもの食べられるの? 私も参加したいんだけど?」



 その時、再び食いしん坊将軍の声が聞こえた! 食べ物の気配がすると必ず現れる筋金入りの食欲の持ち主だ! さっき、別れを済ませたはずなのになんでまた出てきたんだ!

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