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第163話 後の祭りは…天神祭?


「一時はどうなるものかとヒヤヒヤしながら見てました。」


「生きた心地がしなかったでヤンスぅ〜!」



 全てが終わり、俺達は楽屋に戻ってきた。一息つく代わりにメイちゃんとタニシが心情を吐露した。二人は見ていることしか出来なかっただろうから、大分、ハラハラしてしまっていたようだ。



「心配かけたな。色々、ハプニングはあったが、無事退けたぜ。」


「それを言うなら、無事、演り終えた、だろ。」


「演技なんてもんは途中からどうでも良くなってただろ! そんなのが公演なんて呼べるわけがない。」



 ヒヤヒヤもんのハプニングが目白押しで、途中から観客も混乱して理解できなさそうなくらいカオスな内容になっていたはず。もうアレだけ台本にない乱入者がいたら、アドリブどころの騒ぎではない。もう途中から演劇とは全然別物の公演となっていたと思う。よくあんなので無事終わることが出来たな、と。



「あれで良かったんでヤンすかね? 観客からは拍手喝さいでヤンしたけど。」


「うんまあ、良いんじゃない? 満足はしてくれてたみたいだし。評価はどうなるかわからんけど。」


「まさかのオリジナル要素ぶっこみまくりで、最大の見所の三者会談が端折られた挙句、Ⅱのボス軍団乱入なんてミラクル展開に発展!」


「そして、満を持してサマー・ウォーリア王子が登場となった訳ですよ!!」


「でた! 戦犯の一人がやってきやがったぞ!」



 話の途中でプリメーラが現れた。公演が終わってから、ここに中々戻ってこなかった理由は例の剣士にある。色々、二人で語らっていたようだったので、俺らだけで先に戻ってきたわけだ。憧れの人と再会したようだし、邪魔しちゃ悪いと思ったのでそっとしておこうという流れになったのだ。



「誰が戦犯だ! ちょうど盛り上がりそうなタイミングで登場してやったんだから、少しくらいは感謝しろ!」


「それ以前に、お前、全部すっぽかして不在になってただろうが! お前の穴を埋めるのにみんな四苦八苦してたんだからな! お前の方こそ感謝しろ!」


「うるさい! 師匠と修行してたんだから仕方ないの!」


「師匠って誰のことなんだよ? 何者だよ?」


「ガチでマジな本物の勇者にだよ! アンタみたいなパチもんとは違うからね!」


「誰がパチもんかぁ〜!?」



 パチもんとは何事か! 一応、先代から指名されているし、額冠も俺のことを所有者と認めてくれている。だというのにそんな言いぐさはないだろう? 勇者の素質があるからといって、現役の勇者を貶めるのは止めてほしいんだけど……。



「ああ、確かにパチもんだな。」


「オイ、コラ! ドサクサに紛れてお前まで言うな!」



 ついでに相棒まで……。元からファルにはそう思われていたが、最近は少し見直してくれたのかな、とは思っていた。結局、俺の不似合いイメージは払拭しきれていないようだ。もうさ、本当にプリメーラに勇者の座を譲っちゃおうかな?



「パチもんみたいだけど、師匠からまだお前は勇者になるには早いって言われちゃった。」


「だから師匠って誰なんだよ!」


「だからさ、グレートに決まってるじゃん! そんな事も知らないの?」


「知ってたとしても、お前の師匠と同一人物かどうかはわからないだろ!」



 グレート……!? 水邪・炎邪との戦いに行き詰まった時、俺に意識に紛れ込んできた兄を名乗る謎の存在! まさか、プリメーラにも接触を図っていたとは! 俺のいないところでエル達を助けてくれたりと、陰ながら俺をサポートしてくれているようだ。本人は影武者だとは言っているようだが、実際、何者なんだろう? 歴代勇者の誰か? それとも、本当に俺の生き別れの兄なんだろうか? 考えれば考えるほど謎が深まるばかりだ。



「グレートだと? 何者だ、ソイツは?」


「プリメーラだけじゃない。俺にスパーキング・イレイザーのヒントを教えてくれたのも同じ勇者だった。」


「あの突拍子もない行動の裏にそんな馬鹿げた事があったっていうのか?」


「パチモノの言うことは知らないけど、私は何日も一緒にいたもん! 一緒にシャイニング・イレイザーの特訓をしたから、出来るようになったんだもん!」


「いや、言ってるのがお前らだから、いまいち真実味が感じられないんだが?」


「コイツと一緒にするな!」


「ファル様ったらヒドい! 私の言うことを信じてくれないなんて! うう……!?」



 言うだけ無駄かもしれん。コイツ、大体、実際に目にしたり体験したりしないと信じないタイプだし。グレートも額冠が見せた幻影で、現状の勇者やその候補に見えてるだけなのかもしれない。……うん? それだと学院に現れたグレートの説明がつかないか? わからんなぁ。


「それよりも、ファル様……、」


「うん? なんだ? 改まって?」


「私は無事戻ってきて、無事公演を終え、アイリとの決着を付けました!」


「ああ、そうだな。お前はよくやったと思うぞ。お前にしてはな。」


「だから……、」


「だから……?」



 プリメーラは何かファルに求めている様な感じがした。求めてはいるが。相変わらずファルはそっけない態度を取っている。褒めてはいるが、ちょっと小馬鹿にしているような……。コイツ、例え女の子だったとしても、お馬鹿な人間には厳しいんだな、と思った。



「私へのご褒美に……結婚してくだしゃい!」


「は!? 何にってんだお前! 気でも狂ったか!」


「狂っててもいいでしゅ! むしろ、一緒に狂いましょう!」


「うわ、バカ、よるな! バカが移るからやめろ!」


「うへへ〜! ファルしゃまも一緒にバカになりましょう! ファルしゃまは俺の嫁〜!」


「うおおい! お前、言動と行動がエロおやじみたいになってるぞ!」


「今は女の子じゃない! 今はオッサンなのじゃい! ファルしゃまみたいな娘に色々エロいこと出来るんなら何にでもなってやるぅ!」



 プリメーラが大暴走を始めてしまった! 今の美少女化したファルを愛でたいがばかりに性別すらかなぐり捨てて、セクハラ行為に及ぶのだった……。今まで見てきて、ちょっとオッサンみたいなところは見受けられたものの、やはり、完全に中身はオッサンだったんじゃなかろうか? まさか、ホントに俺とファルみたいに女性化してるだけだったりして……?

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