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第162話 俺達は挑戦状を叩きつける!!


「ぐおぁぁぁぁぁっ!!!!!!!!!!!」



 舞台に響き渡る、断末魔の叫び! もちろん俺やファルではないし、目の前の剛剣士と軽戦士が上げたわけではない。声を上げたのは鳥頭の魔神。強烈な閃光の一撃をもらい、今正に命が尽きようとしていた。消えゆく前だというのに再びアイリの姿に戻ろとしていた。



「フン、やられやがったか。口ほどにもない奴よ。聖歌隊の小娘にやられるとは、俺が相手をするまでもなかったな。」


「違うだろ。あの美形剣士が協力したから勝てたんだろよ。」


「だとしてもだ。あんな世間知らずの小娘に負けるってことは雑魚すぎる。付け入る隙ならいくらでもあったろうによ。」


「魔族にもプライドはあるだろうよ。強さに自信があるなら尚更だ。」



 いけすかない闇の勢力が魔族、魔王軍と呼ばれる連中だ。あいつらは人と行動原理が全然違うから、非道な行いや力を誇示して弱者をいたぶる事に後ろめたさなんか感じていない。とはいえ、一定の強さを持つ魔族には信念というか美学のような物を持っている奴がいることを知っている。人間の基準からしたらどこか歪んでいる場合が多いけど。



「魔族の肩を持つってのか? いけねぇなぁ? 勇者ともあろう者がそんな事をして大丈夫か?」


「大丈夫さ、問題ない。実際に何度か戦ってみて実感したことだし、その感覚には嘘はない。」


「ハッ! お人好しなこった! そんな甘い考えが魔族に通用すると思うなよ?」


「それは人が相手のときにも言えることだろ? 盗賊とか山賊、暗殺者みたいなのもいるんだから。」


「ハハッ! ちげえねえや。その考えには同意してやるぜ。」



 魔族の恐ろしさだけではなく、邪悪な人間が多いことも理解しているといった雰囲気だ。多分、俺なんかよりも酷いものを色々見てきた経験があるのかもしれない。



「ボス、どうします? 魔神のやつがやられちまいやがりましたぜ?」


「ああ、いいんだよ、あんな奴はそれよりもいい獲物を見つけちまったからどうでもいい。」


「クッ、まだやるのか? もう戦う意味なんてないだろ? あっちの二人も多分、黙って見てるだけじゃ終わらないと思うぞ?」


「こっちはまだ楽しみ……ヌウッ!?」


(ゴロン!!)



 ブレンダンが義手をこちらに向けた瞬間、何かがゴロンとこぼれ落ちた。金属の破片……だった! 義手の部品が何らかの原因で外れたようである。原因は当然、俺だ。



「壊れた? いや、壊しやがったのか、お前が?」


「ハハッ、効かなかったのかなと思ってヒヤヒヤしてたけど、一応、ダメージを与えてたみたいね。」



 攻撃を受け流しつつ、砕寒松拍を狙っていた。仕込むチャンスがあまりにも少なかったので、波紋震倒の効果を最大限に利用した。おかげで効果が出るのは遅かったが、確実に義手を破壊していたようだ。



「俺のフェイタル・ギアが壊れただと? こんなのは初めてだ。どんな細工をしやがったんだ?」


「いやー、それは企業秘密だから流石に言えないかな?」


「ケッ! 不気味な技を使いやがる! 評判通りの変態殺法ってのはコレのことか?」



 人を変態呼ばわりとは失礼なやつだ。どういう噂を聞いたのかは知らないが、特殊な技を使うという噂はあちこちに流付されているらしい。でも例えどんな尾ヒレ、背ヒレが付いたところでその実体が伝わるわけではない。信じがたい話ばっかりだろうしな。



「しゃあねえ、今回は引き下がってやる。こんなお遊戯会場では気分も盛り上がらないしな。」


「お遊戯とか言うなよ! 聖歌隊の子たちは真剣にやってんだから!」


「俺に取っちゃあ、戦い以外は全て戯れ事よ。ずらかるぞ、ギリー!」


「あいよ!」



 二人は戦いを止め、舞台から去ろうとしていた。その二人を出迎えるように観客席の入口から人影が入ってきた。カボチャのような兜を被った大男と細長い体型の獣人! あの獣人は……!?



「なんでスミスさんがこんな所にいるんだよ!」


「ハハッ、なんでだと思う? お前の行く先々でさり気なく現れたのはなんでだと思う?」



 ブレンダンは振り向きつつ、不敵に笑っていた。まるで俺が驚く顔をするのを期待していたかのようだった。



「まさか、俺達、ずっと見られていたのか?」


「その通り。俺らのメンバーだ。名はスミス・ザ・ホーネット。諜報活動を得意としているのさ。」



 見られていた? 今までずっと? あの人はピエール君のところの従業員じゃなかったのか? ということは、犬の魔王との一部始終や、今までの聖歌隊としての活動は全て把握されていたということになる!



「そして、あのカボチャ野郎はジャック・ザ・パンプキン。俺と負けず劣らずのパワーファイターだ。」


絞首台(ギャロウズ)車輪轢きブレイキング・ホイール、か!」



 ファルが説明するように言った。恐らく、あの二人の異名なのだろう。処刑隊というだけあって、そのメンバーには処刑器具の異名が必ず付いているということなんだろうな。



「これがメンバー全員ではないが、ここで宣言させてもらうぜ。」


『俺達はお前たち勇者一行に挑戦状を叩きつける!』


「な、なんだとぉ〜!?」



 4人一斉に宣言をしてきた。予想外の展開だった! 魔神を倒して意見落着かと思われたが、新たなる脅威が目の前に立ちはだかる結果となった!



「ただ倒すだけじゃない、俺はお前の必殺剣とやらを破ってみせるぜ! 次会うときは覚悟しな!」



 必殺剣……おそらく勇者の一撃の方じゃない。八刃の方を指しているんだ。あの技を破るだって? 一体、どうやって? 方法はわからないが、警戒したほうがいい。アイツは半端なく強いのは実際に戦ってみて感じた事だ。

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