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第153話 惚れてまうやろぉ!!


「バカな! 俺の火が消えていく……。」


「許さん、許さんぞ! 私がこのようなことで負けるはずは……。」



 太陽の閃光に飲まれ、二人の悪魔は消えていこうとしていた。抵抗を試みているが、正に焼け石に水。ほんの少しの影を作ったところで、遥かに眩しい光に照らされ消えてしまう。そんな状況だった。真の奥義の力は絶大だった。



「何故だ? 何も間違っていなかったはず! 何故、貴様に勝てないんだ!」


「もういいだろう? 俺らが争うことに何の価値があるんだ? 俺はアンタに勝ちたかったんじゃない。俺はアンタを止めないといけなかっただけだ。」


「貴様のような魔術を解せぬ者に勝たなないといけないのだ! 魔術の優位性を証明するために! 勇者などという理不尽な存在はこの世にあってはいけないのだ!」



 隔たりを感じる。俺は倒されないよう、殺されないように避けていただけなのに、この人は負けたと認識して、俺を倒す事に執着していた。俺のような奴を理不尽と称して否定する。確かに俺は勇者になって力を行使している。何もなければ無能なはずなのに、成り行きとはいえ、力を得てしまったのだ。その事実はこの人の言うように理不尽と言えるかもしれない。



「アンタのことはよく知らないが、何か勘違いしていないか? コイツが理不尽なものか。むしろ、世の中の理不尽に虐げられてきたのが、俺の相棒、この男なんだ。」


「そんなわけがあるか! その男が理不尽、その物なのだ!」



 俺とアンネの問答に割って入ってきたのはファルだった。ものすごいイライラした感じでアンネに意見してきた。言葉足らずな俺では絶対、アンネを説得できない。願ってもみなかった助け舟だった。



「持たざる者の気持ちを考えた事はあるのかよ? そんな人間が自分より優位に立つのはおかしい? ふざけたことを言ってんじゃないぜ。そんな思考こそ理不尽、そのものじゃないか。」


「貴様に何がわかる! 貴様こそ何もかも最初から持っているくせに!」


「人より持っていることは自覚してるさ。だが、それをひけらかして傲慢に振る舞うなんてマネは俺には出来ないな。能力とか生まれなんてタダの記号さ。俺の人格とは一切関係ない。俺は俺として生きているつもりだ。」


「おの…れ、こんな……ところ……で……、」



 アンネは完全に燃え尽き、跡形も残さずに消え去った。片割れの炎の魔術師もやり取りをしている間にいつの間にか消え去っていた。俺達は身に降り掛かった脅威を退けたのだ。二人の力で。


「チッ、燃えカスになったくせにペチャクチャ負け惜しみを続けやがって。お前もメンドクセー奴に粘着されたな。ああ言う奴はさっさと〆るに限るぜ。」


「いや、なんか、ありがとうな。俺じゃ、大して何も言い返せなかったから。」


「礼なんかいらん。ただムカつく奴が目障りだっただけだ。」



 そう言う相棒の顔はいつもより頼もしく思えた。今現在は女体化しているので可憐なエルフ美少女の姿になってしまってはいるが、錯覚で普段の姿に見えてくるから驚きだ。こんなの……、


「さすが俺の嫁! 分かってるじゃないか!」


「は? お前、何言ってんだ?」


「相棒だからある意味、嫁! 相棒のことに真剣になれるなんてマネは嫁にしかできないわ!」


「そういうのはキモいからやめろ!」


「嫁だから、愛情の確認のキスを……。ムチューーう!」


「ええい、寄るなブサイク! 張り倒すぞ!」


(ドッッッッッッッ!!!!!!!)



 一変してコメディ的な展開になり、観客の間に再び笑いが戻ってきた。人前だから大げさにしてはいるが、ある意味本心で行動した結果だ。だって……惚れてまうやろ! あんな風に擁護されたら、誰だって惚れる。コイツがモテモテなのが実感してみてよく分かった。女になってみて分かったことだ。なんか長いこと女として生活していたため、心まで乙女になりつつあるのかもしれない!



「お二人ともお楽しみのようで悪いけれど、そこまでにしてもらうわ!」



 二人でいちゃいちゃしていると、それを嗜める声が聞こえてきた。この声はアイリだ。その声と共に黒と紫で彩られた、いかにも邪教の神官服を纏った姿で現れた。しかもアイリらしさは消しておらず、ところどころ肌が露出していてすごくエロい。まさか本人まで参戦してくるとは。前の二人がやられたことが想定外だったのだろうか?



「私は邪神官バ・ゴーン。未来の世界から貴様、勇者モョモトを始末しに来た。」



 台本の流れでは捜査官ヤスとのやり取りの後は三者会談のシーンに移るはずなのだが……? どうしてエピソードⅡのラスボスが登場するんだ? またしても、謎のサプライズ展開へと進展する流れへと変貌していた。



「未来の世界から? そんな事が許されると思っているのか?」


「許されるも許されないも関係ない。私の未来は、貴様に理不尽な手段で惨殺される運命になっている。それを阻止するために現れたのだ!」


「待て! そんな暴挙は私が許さない!!」



 そこで別の誰かの声が聞こえてきた! この声は……プリメーラ! 当初から身に纏う予定だった勇者コスチュームに身を包んだ姿で舞台に登場した! 本当に戻ってきた。この事実に俺の心だけではなく、観客も大いに沸き立った!

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