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第150話 閃光の果てに……。


「やるぞ、あの技を! 今の俺達に出来ることはそれしかない!」


「ああ、そうだな!」



 ファルの意見に同調した。最善策はそれくらいしか思い浮かばない。今はそれに賭けて全力を尽くすしかない。でも、何だろう? 感覚的にこれは通じない、倒せないという漠然とした不安感が残る。俺の勘が、その方法では不完全だ、と告げている。でもやってみないとわからない。ただの思い過ごしかも知れないし……。



「フハハ、どうした? 対策が思いつかず、逃げる算段でも講じ始めたか?」


「みっともないことだ。大勢が見ている前で勇者とあろうものが逃げ出そうとは!」



 俺達がとっておきの打開策を行使しようとしているのに、相手の二人組は罵り、煽り立てようとする。下手をすれば後少しで消滅させられるかもしれないというのに、お盛んな事だ。だが見ようによっては何が来ても自分たちは倒されることはないという自信の現れかもしれない。



「行くぞ!」


「おう!!」



 俺達は技のセットアップとして左右対称になるようにシィニング・イレイザーの構えを取った。そして、言葉に出していないにもかかわらず、二人の動きは同時に始動した。互いに同じ技を繰り出して、真ん中で交差させる。それは二倍、三倍、いや十倍の威力となって、相手へと向かう。バツの字にクロスした破魔の閃光が魔の眷属たちを飲み込む!



「シャイニング・バリエーション・パートⅣ!!」


「シャイニング・グレイシャー!!!」



 会場全てを包み込む浄化の光が弾けて爆ぜた! あまりの激しさに観客からも多くの悲鳴が上がる。その声にかき消されたのか、断末魔の叫びが聞こえてこなかった。もしかして効いていない? いや、そんなはずはない。さっきもファルが炎邪に放った物は倒せはしなかったものの、ダメージだけは与えていた。効かないはずは……、



「何だアレは?」


「え、何が?」


「よく見ろ! アイツらがいるところを!」



 ファルに促され、閃光の瞬きの中心部を目を凝らして、よく見てみた。何やらやけに光が明滅していると思ったら、影というにはあまりにも暗すぎる黒いものが交互に見えるような気がした。なにか、光と闇が互いを飲み込もうとせめぎ合っているように見えた。



「フフフ、やはり、四天王様のお力は絶大なり!」


「光の力には無力だと感じていたが、強力な対抗策を持っておいでだったのだ!」



 見ているうちに光の勢いが弱まっていった。せめぎ合っていた暗黒に飲み込まれていっている様に見えた。ヤツらは何らかの対抗手段で俺達の技を無効化してしまったのだろう。なんだこれは? 見たことがない技だ。



「貴様らは知っているか? 真なる闇とは光をも食いつぶす、貪欲なる”魔”そのものなのだ!」


「これが”魔空瘴壁(ダーク・マター)”だ! 魔王様が編み出した勇者の奥義への対抗手段! 闇によって光を飲み込み無効化する!」


「シャイニング・グレイシャー敗れたり! これで貴様らの勝ち筋はなくなった!!」



 そんなバカな! 勇者の一撃を無力化されてしまうなんて! 今まで光の力が魔族への絶対的な対抗手段だと思っていたが、対抗手段を持ち合わせていたとは。目の前の二人はあくまで眷属。魔王ほどの力は持ち合わせていない。そんな二人でも勇者の技を防ぎきれる技なのだ。これは脅威としか言いようがない。



「万事休すか? どうにかあの技をお前の奥義で無効化できないか?」


「多分、絶空八刃、陽烈八刃斬なら打ち破れると思う。」


「じゃあ、それをやるぞ。」


「だめなんだ。そのあとはどうするつもりなんだ? あの技は消耗が激しいんだ。俺だって使った後は息が上がってしまう。まるで全力疾走した後みたいにな。そんな状態でお前と技を合わせるなんて無理なんだよ……。」


「クッ……そ! 本当に打つ手なしじゃないか!」



 八刃は完全無欠な奥義だ。その効果は絶大だが、当然、その代償も大きい。複数の、八つの技を一片に出すような技なので、その分の体力が必要だ。いや、それ以上の労力がいると言っても過言ではない。この世の理を乗り越える様な技なので、おいそれと連発は出来ないのだ。



「幕だ。打つ手の無くなった貴様らに待っているのは死しかない。」


「観念して討たれるんだな。そうすれば、俺達は功績を認められ、更なる力を与えられた暁には上級魔族へと進化できるのだ!」


「いったい、どうすれば……、」



 絶望的な状況に思考も行き詰まる。万全な対策を施してきた眼前の敵に屈するしかないのか? そんなわけにはいかない。ここで負ければ、見てくれている観客たちの命の保証はない。いや、それどころか、世界が窮地に立たされてしまいかねない。勇者の敗北は世界の命運を左右する一大事なのだ……。



《あきらめるな、弟よ!》


「……!?」



 焦る俺の頭に響き渡る謎の声。誰かは知らないが、俺を弟と呼んだ。俺に兄弟はいない。いるはずがない。俺は孤児なんだ。いたとしてもとうの昔に死んでいるはず? でも、何か懐かしさを感じる声でもあった。はるか昔に同じ人に助けられたような気がする……。



《対抗手段はある。真の奥義を持ってすれば、魔族など恐るるに足りん。お前たちに真の奥義を授けよう!》

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