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第149話 両天秤の呪法


「うう、あああ! 回避したはずの攻撃を、まさか食らっていたなんて!」


「フェイントだけで逃げおおせると思うなよ。」



 幻術を使って逃れたり、隠れたりすることはこの前アイリと戦った時に学んだことだ。眷属となったこの二人も同様の方法を用いてくるだろうと読んでいたのだ。魔法を使用者もろとも斬ってしまわないと倒すのは難しいと判断した。



「う、ああ? ふう、このまま二度目の死を迎えると思ったよ。」


「……!?」



 アンネはそのまま体を崩壊させ消滅するものと思っていたが、元に戻っていく。一度は弱まりかけた邪悪なオーラがたちまち息を吹き返し元に戻っていく。一体何が起こったんだ?



「残念だったな。倒しとでも思っていたのだろう? 残念ながらそういうわけにはいかないのさ。」


「馬鹿な!? 八刃が効かないはずは……?」


「間違いなく効いたよ。痛くて痛くてどうしようもないくらいだったさ。だが、私達はこんな事では死なないのさ。」



 意味がわからない。アンデッドを始めとしてゴーレムなども含んだ魔法生物は基本的に核となる魔法エネルギーを霽月八刃以上の奥義でで斬ってしまえば、体は崩壊する。もちろん学院で見たローレッタやタルカスのような新型の機械式ゴーレムなら話は別だが、アンデッドにそんなタイプは存在しないはず?



「ぐあああああっ!!!」



 俺が目の前の事態に混乱していると、少し離れた所で炎邪が断末魔の叫びを上げている。まばゆい閃光に包まれ、体を消滅させようとしていた。恐らくファルが勇者の一撃を見舞ったのだろう。得意の風魔法ではアンデッドを消滅させられないからだ。当然の判断と言えたが、今回はそうでもないらしい。相手が消滅するどころか元に戻っていく。



「あああ……ふくく、死んだと思っただろう? だが、そうはならないのだよ!」



 全く同じ展開だった。眼の前のアンネと同様の事態が発生し、見事に復活した。八刃と同様に効果てきめんのはずが全く通じていない! いや、効いてはいるけど元通りに戻ってしまう。まるで時間を遡らせたと錯覚する様な事態が発生している。



「ふふふ、どうだ、おかしいいだろう? 倒したはずが倒せていない。この事実は何を意味しているのだと、考えているな?」


「むうっ!?」


「お前たちがどれほど強かろうと、私達は決して倒せない。私達は不死身の肉体を手に入れたのだよ。」



 二人共一度は死んでいる。魔神の力によって復活し、魔神の眷属となった。その魔神達も強固な肉体を持っているが、決して不死身ではない。勇者の奥義を始めとした光のエネルギーをぶつければ消滅する。八刃も同様だ。魔王であってもエネルギー源のコアを斬ってしまえば、体を維持できなくなるはずだ。当然、それ以下の魔族たちは遥かに弱いはずなのだが……?



「”両天秤の呪法”……?」


「て、天秤? 今、天秤って言った?」



 ファルが俺に近づきつつ、ボソッと呟いた。これまた聞いたことのない用語が飛び出してきた。倒せない謎を解き明かすヒントなのだろうか? 天秤の後に”呪法”と言ったことも気になるところだ。”呪法”なんて物は関わるとロクなことがない。あの”血の呪法”もそうだった……。



「なるほど、そういうわけか。次から次へと小細工ばかり仕掛けてきやがるな!」


「おいおい、一人で納得してないで、俺にも説明してくれよ!」


「簡単に言えば、ほぼ同時に別々の人間がそれぞれの対象を破壊しないと、何度でも蘇る呪いだ。それはまるで天秤みたいに両方が釣り合った状態でなきゃ、変化を適用できない。片方を取り除くと天秤が傾いてしまうだけだからな。」


「ナニソレ!? それって知らなきゃ永久ループってことか? そんなの反則じゃん!」


「奴らが仮初の生命だからこそ実現できる禁呪法なのさ。壊れないようにするための、ある種の罠。実際、古い年代のダンジョンの防衛システムに使用されていたのが確認されている。」



 別々の人間と協力してほぼ同時にって……そんなん出来るか! よっぽど生きが合ってないと出来ない芸当だし、倒す対象も黙ってやられてくれるとは限らない。一人で同時に二体とも倒すなら八刃でなんとかなるが、誰かと一緒にやらないといけない? 俺らは互いに息の合ったコンビだと自負しているが、そんな神業が実現できるんだろうか?



「もちろん、デメリットもある。あくまで二体で一体という括りになるからな。常に同じ空間にいなければならない。常に付かず離れずを要求されるのさ。」


「なんだ、よくご存知じゃないか。説明する手間が省けたよ。」


「説明? テメエらが自ら種明かししてどうするんだ?」


「知った所で対処できないよ。アイローネ様の作戦は盤石だ。デーモン・コアすら破壊する危険な”勇者の技”を回避するには反則行為(チート)が必要だったんだよ。」



 流石に魔王軍サイドも対策してきたか。不死身だったはずの魔王を倒したという事実はアチラさんでは問題視されていたんだろう。魔王達もこの呪いを適用できるのかはわからないが、少なくとも配下には施すことが出来る、ってことで適応させたんだろう。



「おい、相棒、一つ忘れちゃいないか?」


「何を?」


「奴らを同時に俺らがタイミング合わせて倒せる技があっただろう?」


「それって……!?」



 対抗策、奴らの呪法に打ち勝つ技とは……シャイニング・バリエーション・パートⅣ! あれしかない! 俺達のとっておきのツープラトン技、シャイニング・グレイシャーだ! 

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