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第135話 疑惑のトップスター


「処刑隊がちょっかいを出してきているのはわかった。実際問題、アイリへの対処はどうしたらいいと思う?」


「正体はほぼつかめている。だが、下手に事を荒立てれば大騒ぎになる。できれば、混乱を最小限に留めて、穏便に処理したい、というのが聖女の考えだ。」


「おおっぴらに堂々と浄化大作戦でも実施するのかと思いきや、聖女さんは案外冷静な人なんだな。」



 聖女様は美に徹底的なこだわりを見せる御仁だ。イメージ的に悪即斬で汚物は徹底消毒、なんて涼しい顔でやりそうなもんなんだがなあ。魔神が潜んでるなんて発覚したら即発狂してしあみそうな感じを想像していた。だが流石にそんな人ではなかったようだ。よかった。



「自分の部署で発覚した一大事だ。対処を間違えれば、法王庁からの責任追及は免れないだろうからな。慎重に事を運びたいんだろうよ。」


「それぐらいギスギスしてるのね、法王庁は。利権争いのために足の引っ張り合いとか、重箱の隅の突き合いが日常茶飯事になってそう。」



 権力の集中する場所には付き物といったところだろう。オレの故郷の都でも政治家や将軍、宦官とかが絶えず勢力争いをしてたりしてたもんな。ちょっとした失敗が失脚する原因に仕立て上げられたりするもんだからな。ここも色々大変なんだろう。



「それだけじゃないぜ。ある意味、魔神に人質を取られているようなもんだ。下手に動けば、殺戮を重ねるのは間違いないだろうからな。」


「人質……確かにそういう見方も出来るな。アイリの周りには常にユニットメンバーとかスタッフがいるもんな。人気者で大所帯となりゃ、それがまとめて人質に取られているようなもんか。」



 俺ら、プリメーラのユニットはかなり少ない人数で構成されているが、向こうは売れっ子、聖歌隊のトップ。聖歌隊の主力とも言えるユニットだ。それが崩れるともなれば、被害もかなり大きくなってしまうだろう。多くの人材を失うわけにもいかないから、慎重に事を進める必要がある。



「じゃあ、いつ手を出すんだ? このままほっといてもヤツの計画通りに事がすすんでしまうかもしれないぞ? 何を企んでるのかは知らんけど?」


「少なくとも、例の3本勝負に決着を付けるまでは事を起こさないんじゃないか? ヤツはお前やプリメーラとの勝負にこだわっているフシがある。」


「なんで? 魔神のクセに正々堂々と決着を付けるのを望んでいるのか?」


「そういえば言い忘れていたが、お前が倒れたときに不本意な決着は望んでいないと公言していた。勇者を仕留める最大のチャンスをヤツは不意にした。」


「確かにおかしいな? 動けないときにためらわず何かしとけば俺を始末できたのにな?」


「俺も奴らが何を考えているのかはわからん。奴らも処刑隊には思うところがあるんだろうよ。流儀に反するとか言っていたのは間違いないぜ。」



 プライドとか流儀か。魔族にもいろんな奴がいるのは奴らと戦う機会が増えてきたから、わかるようになってきた。一般的な外道の極みみたいな虎とか羊みたいな魔王もいれば、猿や犬のように仲間の絆とかを大事にするようなのもいる。アイリの正体は恐らく鶏の魔王の眷属。しかも恐怖の魔王とか言われてるヤツの部下だ。正々堂々を装っているのか、元々プライドが高いだけなのか? それは本人の素の姿を見てみないとわかることではない。わからない間は聖歌隊のトップスターと見るべきか、恐怖の魔神と見るべきなのか判断に困るところだ。



「でもさ? アイツはいつから聖歌隊に潜伏していたんだろう? プリメーラと同時期に入隊したとは言っていたが、どうなんだろう?」


「さあ、わからん。調査しても入隊前の経歴が殆どわからなかった。多少は歌姫としての実績を故郷の村で残していたに留まる程度だ。あとは入隊してしばらくしてから改名したということぐらいだろう。」


「アレは芸名だったのか。最初から人に化けて入ってきたわけじゃないのかな?」


「わからん。改名以降徐々に実績を伸ばして、プリメーラとの差を開けていったようだな。そこで入れ替わったのかもしれんし、トップに上り詰めてから入れ替わったとも考えられる。俺は後者の説を押すがな。」


「入れ替わってから改名の方が自然に思えるけどなあ?」


「前者はハッキリ言って魔神側のメリットがあるとは思えない。どの道、本人に尋問してみないとわからんことだがな。」



 元がどんな子だったのかがわからん時点で、俺らには推測でわかることには限界がある。プリメーラや儚き蜉蝣メンバーとかスタッフに聞いてみないとわからないだろう。……とはいえ魔神であることがほぼ判明した今、その真実を知る必要があるんだろうかとも思えてくる。



「ねえ、嘘でしょ? アイリが人間じゃないなんて有り得ないでしょ? 私の親友にヘンな疑いかけないでよ!」



 背後から声がしてハッとなった! ドアを開けたところでプリメーラが立ち尽くし、俺らに対して抗議してきていた。一番聞かれたくない相手に話を聞かれてしまった! デリケートな問題だから、黙っておかないといけなかったのに!

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