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第133話 ボスの腸も煮えくり返ってるってわけよ!


「俺達の予定ではあの女に矢が命中したときに正体が確定していたはずなんだ。その時点で潜んでいた俺達が処刑すれば、めでたく任務完了って流れだったんだがなぁ。」


「あの矢には強力な毒が仕込んであったんだろう? どのみち、それで即死だったはず! 俺だったから死ななかったってだけで。」


「そうさ。アンタじゃなくてもあの女でも即死にはならなかっただろう。それが狙い、それが選定の基準になっていたのさ。」


「死なないことが前提になっていたのか?」



 話が見えてこない。アイリに命中しても死なないことがわかっていた? 選定? しかも、今、俺達って言ったよな? 他に仲間がいることをこの男は示唆した。何らかの組織の人間なのだろう。



「毒が効かないって事はどういうことかわかるよな? もちろん勇者は抜きにしてだ。その対極に位置する者共も同じってことだ。」


「ま、魔族……!?」


その通り(ビンゴ)。」



 魔族? 一体何を言ってるんだ? 毒が効かない種族は魔族ってのはわかるが、ここがどこだかわかって言ってるのか? 聖女様の本拠地でその所属の聖歌隊だぞ? 魔族の天敵でしかも浄化処理でさんざん対策している様な場所に存在できるはずがない! 瞬時に焼き清められ消滅しかねない場所に潜伏できるのだろうか?



「毒が効かないって事を理由に魔族であることを断定して始末するつもりだったのさ。それが悪魔の選定さ。俺達の常套手段だ。魔族ってのはひっそりと人間社会に紛れ込んでいるものさ。」


「そんな魔族いるわけ……、」


「おっと、知らないとは言わせないぜ。アンタは見たことはなくとも、その存在は聞いたことがあるはずだぜ? つい最近まで滞在していた場所に出没したって話を聞いたことがないかい?」



 コイツはどこまで俺のことを知っているんだろう? 俺が砂金までいた場所は牧場もしくは学院に絞られる。今の聖都と同じくらいに対策されている場所となれば学院が該当する。しかも、俺がいなくなった後、魔族が絡む事件が発生している。迷宮立てこもり事件には魔族が関与していたという話はエルに手紙をもらって知ったことだ。しかも幻術に長ける魔神が出没したのだから……。



「俺達が現在マークしているのは鶏の魔王の眷属だ。しかも悪名高い、五色羽。その首を取り逃したんだからな。ボスの腸も煮えくり返ってるってわけよ。」


「何言ってんだよ! 俺は死にかけたんだぜ! よくもひでえことしてくれたな!」


「アンタ、どんだけおめでたい奴なんだ? 自分のしでかした事をよく考えてみな! 知らなかったこととはいえ、勇者が魔族を助ける様な真似をしでかしたんだ。場合によっちゃ、法王猊下から破門されてもおかしくない事をやらかしたんだぜ?」


「うう……。」



 まさかアイリの正体が……。全くわからなかった。今までなんとなく感じた邪悪な気配は魔族としての片鱗だったのか。気のせいだと思っていた。今まで見てきた悪意を持っている人間にも似たような物を感じたことはあったから、それとおんなじだと思っていたのだ。エルが相対した魔神は気配すら偽装する能力を持っているという。自分もそれに騙されるとは思わなかったな。すぐに俺の目の前に姿を表すなんて思わなかったよ。



「だが、そうなっちまったもんはしょうがない。俺らのボスも前向きに考えることにしたそうだぜ。」


「はは……。そりゃ助かるわ。俺も濡れ衣着せられちゃたまったもんじゃないし。」


「前向きに考えるってどういうことかわかってるか? 俺らのボスは血の気が多くて戦いに飢えてる狂人でもあるんだ。要するにアンタと戦う口実が出来たってことよ。」



 俺と戦うだと? 俺は謎の組織のボスから命を狙われているのか? コイツが所属する組織とは一体? 待てよ……? 魔族を狩ろうとしているってことは……?



「アンタら、もしかして噂の処刑隊?」


「今頃気付いたのかよ? 勇者のクセに勘が悪いな。そんなんだから、魔族に騙されて、それを庇うような事になっちまうんだよ!」


「んなこと言われても……。」



 正体が悪魔、魔族狩りを専門とする、あの組織だったとは……。ある意味、エルの天敵でもあり、あの娘の悪夢のような過去を作った元凶ともいえる連中だ。法王庁所属の組織だからあまり敵対したくはなかったが、向こうからイチャモンを付けられてしまったんだから、相手をしないわけにはいかなくなった。



「任務の第二段階は失敗に終わった。だが、黙って手を引くほど俺らはお人好しではないんだぜ。お前らとあの魔族にはキッチリ借りを買えさせてもらうつもりだからな。」


「まだ、なんか邪魔をしようってのか? もうちょっと人目のつかないところでやってくれ。」


「お前が悪いんだぜ? ボスの機嫌を損ねたんだ。タダじゃ済むとは思うなよ! 近々、ボスがお前の前に現れるだろうよ。その時を楽しみにしておくんだな。一応、コレがボスからの伝言だ。」



 伝言を言った途端に背後から気配が消え去った。振り向くと誰もいない。本当に姿を消したようだ。転移魔法でも使ったのかもしれない。 それはそうととんでもないことが発覚してしまったな。早くファルやロレンソに話をしておかねば……。

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