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第127話 第三勢力の介入か……?


「つまりは額冠を着けていなかったのが、容態を悪化させる要因になったと?」


「そうなんです……。普段の勇者さんなら、毒も大して効果を発揮せずにすぐに復帰出来たと思います。」



 チャリオット対決は激戦の後に誰も予期していなかった結末で幕を閉じた。試合の真っ最中に何者かが選手を狙撃をする事件が発生したのだ。しかも、勇者がその矢をまともに受けてしまい、現在、意識不明の重体となっている。とはいえメイを含めた治療士達の働きにより一命を取り留めることは出来た。



「ごめんなさい! 私がもっとうまく動けていたら……、」


「何を言ってるんだ。お前は悪くないだろ! むしろ良くやったさ。お前の治療が早かったから、アイツは命を落とさずに済んだんだ。」


「でも、でも……、」


「アイツの処置をしてくれたことには感謝してるが、少しは自分も心配しろ! お前だって傷だらけじゃないか。後は騎士団の治療士に任せて、ゆっくり休むんだ。」



 メイが駆けつけたときにはアイリ・リュオーネに覆いかぶさるような状態で倒れていたという。アイリの話ではロアが彼女を庇うような動きをした上で矢を受ける形になってしまったのだという。これは実際に一部始終を見ていた観客達の証言とも一致する。俺はアイリ側の仕組んだ罠だと勘ぐっていたが、どうやら違うらしい。狙われていたのはアイリ・リュオーネの方だったのだ。



「こんな事になるだなんて……。」



 処置室の前ではプリメーラやタニシの他に相手側のアイリまでもがロアの容態を心配して佇んでいた。皆、一様にして項垂れ、表情も曇っていた。相手チーム側とはいえアイリにも何か思うところがあるようだ。



「私を庇わなければこんな事にならなかったのに……。どうしてロアンヌさんは……。」


「アイツはそういう奴なのさ。敵だろうと関係ない。不本意でない、まともじゃないやり方で誰かが傷つくのを黙って見てられないタチなのさ。」


「大変なお人好しなんですわね、勇者さんは。庇われずとも、私は死ぬような体ではありませんのに……。」


「そいつはどういう意味だ?」



 自分は死なないだと? おいおい、自分の正体を晒す真似をするなんて、どういう風の吹き回しだ? 毒が効かない……それはある意味、人外の化け物だということを意味している。俺の相棒が受けた毒は即効性の高い猛毒だ。魔獣はともかく並の猛獣ですら一撃で死に至らしめるほどの最悪な一品だ。アイツは額冠を外していたとはいえ、勇者の加護があったから即死は免れただけだ。加えて、メイの早期の治療があったからこそ助かったのだ。普通は助からない。



「その言葉の意味は貴方も薄々勘付いておられるのでは? ファル・A・シオンさん……私が貴方の動向にきづいていないとでもお思いですか?」



 そこまで言って大丈夫か? 俺はほぼお前の正体を特定している。ただ、確定的な証拠がないから暴く真似が出来ないのだ。それにタイミングを見計らっている。下手に正体を暴けば大勢の人間を巻き込むような事になる。そういう意味ではこの女は全て計算の上でこの環境を利用している。だが、今はどうだ?



「ケッ! 気付いてやがったか。」


「その件についてはとやかく文句を言うつもりはございません。勇者に借りが出来てしまったのですからね。貸しは作っても借りは作らない主義なので。」



 アイリは神妙な面持ちでこの場を去っていった。俺に牽制をした上で、ヤツ自身も今は停戦状態であることを宣言してきた。正体からすると信じられない行動だ。まあ、俺が得た情報では、奴らは外道だとしても高いプライドを持っているのだと聞いた。あくまで自分たちが手球を取る立場でなければ気がすまないのだという。



「ねえ、ファル様? 一体、誰が犯人なんですか?」


「犯人……さあな。少なくとも外道以上の外道の仕業だと思っている。」



 犯人は目星がついている。だが、名言は避けておく。下手に公表すれば教団を揺るがす一大事になりかねない。連中の目的は恐らく俺と同じ。随分と過激な手段を用いてくれたものだ。教団一の悪名高さで評判を持っているだけのことはある。これは恐らく俺らへの牽制でもあるののだろう。



「もしかして……例のストーカーかな……? 私に執着しているみたいだから、ライバルのアイリを狙ったんじゃ……?」


「断定は出来ないが、可能性はあるというだけさ。捜査は俺や薔薇騎士団がする。早いうちにとっ捕まえてやるさ。」



 例のストーカー……前回のイベント会場で侵入した挙句、怪文書を残していった正体不明の人物。今回もチャリオット試合直前、怪しい人物からプリメーラに謎の予告があったという。「君たちを助けてあげるよ」、そんなメッセージを残して姿を消したという。言われた本人は恐怖に囚われ、他言できなかったようだが。全く、大胆な真似をしてくれたものだ。俺や薔薇騎士団の目を掻い潜るとは相当な手練なのは間違いない。



「ここはお前らに任せていいか?」


「兄さんはどうするんでヤンスか?」


「俺は今後のための準備をしに行って来る。一足先にリロイに戻るぜ。」



 俺はある決心を固めた。このまま裏で探るという手もあるが、今回のようなトラブルが今後起きないとは思えない。そうなってしまってはプリメーラだけじゃなく、相棒やメイたちにも危険が及ぶ可能性がある。それを防ぐには……自らも最前線に立たなければならない。

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