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第123話 梁山泊の奴には矢を撃つな!


『当たり前と言われれば当然なのですが、ブレイブ・シスターズチーム、明らかに儚き蜉蝣チームに差をつけられる一方です! この差をどのような手段で埋めるつもりなのでしょう?』



 スタート直前から会場はどよめきっぱなしだ。声援がないというわけではないが半々という感じだ。声援を送っているのはおそらくアイリのファンたちだろう。何が起ころうと彼女の勝利は揺るぎないと信じているからこそ出来るのだろう。一方、プリメーラファンは動揺していると見たほうがいいだろう。明らかに不利な条件で戦っているのだから、不審に思ってしまうだろう。ファンには申し訳ないが、少しの間辛抱していてもらおう。



「来たよ! あいつら早くも私らに追いつこうとしてるよ!」


「来たか!」



 こちらがようやく1周目を過ぎた所だというのに、相手チームは余裕で、周回遅れの俺達に追いついてこようとしてるようだ。想定していたよりも早い。メッツ・サーラの協力の上で何度も作戦のシミュレートをしていたが、早々に追いつかれたことはなかった。推測するに、相手は相当スピードを上げて爆走しているのだろう。早めに俺らとの交戦を望んでいるのか? それとも意表をつい俺らの作戦を潰そうとしているのか? その真実はヤツの胸中にしかない。



「ああっ!? こちらに向けてボウガンを構えているようですよ!」


「奴らめ! これが狙いか!」



 メイちゃんが俺に相手の動向を知らせてきた。相手を背後から狙撃する。直前の試合の逆の構図だ。俺らの狙いは追いつかれ、接触するかしないかのタイミングである。それをある程度予測し、事前に目論見を阻止しようとしているのかもしれない。確かに正しい判断だと思う。



「ちょっ!? どうすんのよ! こんなんじゃうちらの作戦が使えないじゃない!」


「気にするな! 矢の一つや二つ、俺が迎撃してみせるさ!」



 器具を外し、迎撃に移れるよう準備する。馬役を中断し、背後の戦車に飛び乗った。当然の事ながら戦車は減速を始めていた。俺が抜けたからではなく、俺の減速効果が出始めたのだ。下手に攻撃食らって続行不能リタイヤになるよりはマシだ。



(ギュオッ!!)



 俺が戦車に飛び乗ったところを見計らって、弾丸が放たれる気配がした。瞬時に義手から剣を展開してあの技の体勢を作る。そう、飛び道具には飛び道具。飛び道具返しといえばあの技だ!



「一0八計が一つ、落鳳波!!」


(ビュオッ……バキャアッ!!}


『な、何ということでしょう!? ロアンヌが剣を取り出して、クロスボウの弾丸どころか、本体さえも同時に破壊してしまいました!!』



 この一瞬の出来事で会場は大いに沸いた! 俺達梁山泊の人間ならできて当然、当たり前の事ではあるんだが、流派を知らない人間からしたら、神業じみた大道芸みたいなものだ。それは観客だけではなく、この事実にアイリも動揺しているようだった。今まで見たことのないようなあっけにとられたような顔をしてやがる。



「ちょ!? アンタ!? 今の何? あんなのどうやったら出来んの?」


「厳しい修行の末とだけ言っておく。」


「今度、絶対やり方教えなさいよ! そんなかっこいい技マスターしないといけないじゃない!」


「はいはい、また今度ね。」



 プリメーラが鼻息を荒くして、俺に技の教授を求めてきた。やらないと絶対ごねるだろうから、形だけでも初歩の部分だけでも教えといてやるか……。そんな短期間でサクッと習得されてたまるもんか。俺なんて一年以上もかかったってのに……。そういえば他にもあっさり習得した人が身近にいたことを思い出した。……エルのことね。



「このまま乗ってても減速するだけだから、本来の作戦行動に移るぞ!」


「行ってこい! アイリなんてサクッとやっちまいな!」



 弩の攻撃が失敗に終わったとはいえ、アイリたちの接近は止まることなく続いていた。まもなく俺らの戦車の真横に到達しつつある。これで作戦の土台が整ったというわけだ。プリメーラに言葉を送られつつ、俺は相手の戦車へ向かって跳躍した。



「とりゃっ!!」


「やはり来たわね、ロアンヌさん!」



 言葉からすると、やはりアイリは想定していたようだ。戦車上で飛び乗れないように仲間の二人に位置取りをさせているが、俺は攻撃ついでに手前側にいた子を蹴落とした。すまんな。あんまり手荒な真似はしたくなかったが、ガチな勝負なんだからそうも言ってられない。



「アイリ様に手出しなんてさせてたまるもんですか!」


「悪いけど、手を出したいから黙っててもらうよ!」


「……キャッ!?」



 もう片方の側仕えを軽く峰打ちして戦車から落下させた。これでアイリとタイマンの構図になった。アイリはすでにレイピアを抜き放ち、切っ先を俺に向けている。戦車を制御しつつ交戦するつもりのようだ。



「見事なお手前でしたね。さすがは勇者というべきかしら? 噂通りの武勇を私にも見せてご覧なさいな!」



 恐ろしく殺気のこもった鋭い突きが繰り出された! とっさに避けることは出来たものの、少し頬をかすめた。恐ろしい精度の剣捌きといえる。ロレンソにも劣らないくらいだ。だが気のせいか……? 殺気の気質に禍々しいものを感じたような気がする……。

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