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第118話 それは私達にとって屈辱なんだ!


「これより、エキシビション・マッチを開催します!」



 そろそろ出番か、と思い準備運動を始めたところで、急に事前告知のなかった催しの開始宣言がなされた。スケジュール通りに試合が進められると聞いていたのに、寝耳に水を差された様な気分になった。



「ちょっと、ちょっと! 何アレ!? アイリのヤツ、私達以外とも試合をするつもり?」


「出てきたって事はそういう事なんだろうな。いったいどういうつもりだ?」


(ドドドドドドドドッ!!!!!)



 開始宣言と共にアイリが戦車を走らせ入場してきた。完全に試合に臨むスタイルで出てきた。銀色の鎧兜コスチュームに身を包んで、ユニットのメンバー二人も同様の姿で登場している。観客に向かって手を振り、場の歓声を更に煽って盛り上げている。



「儚き蜻蛉チームは最終試合に出場する予定ですが、皆様の声援に答えたいということで特別に試合を実施する事になりました!」


(ドドドドドドドドッ!!!!!)



 催しの経緯が説明され、相手チームと思しき戦車が入場してきた。トップのアイリ達と比較しても負けないぐらいの豪奢さで着飾ったチームがやってきた。こちらはアイリの銀色に対して金色の派手な鎧兜、戦車で登場した。さぞかし、有力なユニットに違いない。



「ああっ!? アイツらは“金色の聖者(ゴールド・セインツ)”! カサンドラのヤツ、やっぱり諦めてなかったのね!」


「な、何者だ?」


「アイツらは聖歌隊№3ユニットで、チャリオット・フェスタにおけるアイリ達のライバルよ!」


「ライバル? まさか、本来はアイツらが戦うはずだったのか?」


「そうよ。毎回、最終試合で競り合う相手だったけど、アイリが相手を私達に変えたからどうするのかと思っていたら……こう来たワケね。」


「恒例だから、あっちの要望にも応えたってワケか。」



 ライバルを名乗っているのに試合を蹴られたんじゃあ、たまったモンじゃない。毎年、撃破の目標を掲げて練習してきているだろうから、その努力を俺達の出現によって妨げられたんだからな。下手すりゃ、俺らは憎まれてた可能性もある。そういういざこざを避けるために特別試合ということで相手の溜飲を下げようとしているのかもしれない。



「それよりもアイリのヤツ、余裕かましてくれちゃって!」


「そうだよな。俺らとの試合を控えてるってのに、一試合挟んでも俺らに勝てると踏んでいる……。」



 わざわざ消耗の激しい試合を一試合に留めているというのに、2連戦をしようとしているのだ。しかも負けたり、戦車、馬等の装備を損傷したりしたら、試合を継続不可能となる。もちろんやるからにはそういう消耗なしで勝利できると思っているのだろう。理由は良くわからんが、大した自信だ!



「アイリ・リュオーネ! 今回はよくも私達との試合をすっぽかそうとしてくれたな! そんな舐めた態度を取ったことをこの試合で後悔させてやるからな!」


「フフ、どうしても宿命のライバルとの決戦を優先させたかったからね。でもいいじゃない? こうして、ちゃんと恒例の機会を用意してあげたんだから。」


「私達をエキシビション扱いしている癖に何を言う! それは私達にとって屈辱なんだ!」



 試合前の啖呵が激しさを増している。相手リーダーの言うとおり、やはり試合をふいにされそうになったことがトラブルの原因になっているようだ。そりゃ、怒り心頭にもなるわな。



「さあ、いつもより両者のやりとりがヒートアップしている様ですので、早速、試合開始に進めたいと思います!」



 司会の言うように、ゴールド・セインツ側の怒りが最高潮になっているので、その場で乱闘になりそうな勢い! だからこそ試合をさっさと始めないと大変なことになる。盛り上げるための催しとはいえ、進行する側にとっては気苦労が多くなってそうだ。



「レディ……ゴー!!!!」


『ワアァァァァァッ!!!!!!!』


(ドドドドドドドドッ!!!!!!!)



 試合開始の宣言と共に、歓声と戦車の走る轟音が会場に木霊した。このイベントで最大の盛り上がりに達したのではないだろうか? そう思えるくらいの大音響だった。


「おおっ!? スゲえな! 相手チーム、さすがにライバルを名乗ってるだけあって、アイリ達よりもリードしているぞ!」


「大丈夫か、カサンドラ。ちょっと最初から飛ばしすぎになってる。」



 アイリへの怒りを勢いに変え、少し前をリードしながら金色の戦車は爆進している。勢いは凄いが、これはただのレースではなく、争い、妨害し合いながら周回を続ける戦車道だ。相手より早く走ったからといって、必ずしも勝利に繋がるとは限らない。最後まで生き残り完走できないと、相手に勝つことは出来ないのだ。



「おっ? アイツらは(いしゆみ)を使うのか?」



 金色の戦車はアイリ達の戦車の前に立ちはだかったと同時に、御者のカサンドラ以外の二人は(いしゆみ)を構えていた。もちろん、通常の石球が装填されているのではなく、当たっても致命傷にならない、弾力のある樹脂の弾が使用されている。狙い撃ちされて走行を妨害されようといているのに、アイリは不敵な笑いを浮かべていた。いったい、アレをどう凌ぐつもりなのだろうか?

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