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第116話 食べた後、肉、どないなった?


「おうおう! なんかオモロイことになっとるやないか!」


「悪かったな! 面白くて!」



 チャリ・フェス当日、サンディーのオッサンが出没しているという噂を聞き様子を見に来た。アイリ陣営のスポンサーをしているという情報は知っていたが、前回のパン対決では姿を見せなかったワケだ。しかし、今回は逆にグルメ対決でもないのにいるではないか。



「あんちゃん、アンタ、女になっても見た目一発でわかったわ!」


「そりゃ、今は額冠付けてるからわかるだろうよ! トレードマークだからな!」


「ちゃうちゃう! アンタ、不細工な芸人気質が体からにじみ出とるさかいに、ようわかんねん。」


「し、失礼な!」



 にじみ出ているとは何だ! 勇者オーラならともかく、芸人お笑いオーラが出ているとでも言うのか? 見た目は元よりは美形になってるのに……。それでもファルとこのオッサンだけは今の俺をブス不細工扱いする! 悔しい!



「前は他の仕事とかぶっとったさかい、行かれへんかったけど、パン対決で負けたらしいな? そんときの吠え面みたかったわ。」


「くそう! この一週間、戦車の練習で負けを忘れようとしてたのに、蒸し返しやがって!」



 俺の過去の傷口に容赦なく塩を擦り付けるが如くの行為! 今回は冷やかしに来たのに逆に冷やかされてしまった。悔しい!



「おかげでええ商売させてもろてるわ。」



 このオッサンがいるからには何かしらの商売は付きものである。こないだのバーガーを屋台で販売しているのだ。しかも“儚きバーガー”と銘打っての販売だ。一体何が儚いというのか! こんなラフなフードのどこが儚いというのだ! 商品名サギだろう!



「ナニコレ! 儚いってアイツらのユニット名を付けただけで売れると思うなよ!」


「ほ~ん、そんなこと言うねや? アンタ、こないだ、コレ食わしてもうたんやろ? そん時、思い出してみい?」


「何?」


「食べた後、肉、どないなった?」



 アレか……。アイリに差し出され、渋々頬張りはしたものの、夢中になって食べてしまうくらいにはおいしかった。その時の肉は……とろける様にジューシーだった!



「く、悔しいがとろけるようにウマかった!」


「せやろ? とろけるように飲めるような味やったやろ? せやから、儚いねん。」


「くっ!? そういうことか! 一本取られた!」



 食べた瞬間にとろけるような飲めるハンバーグ……。だから、“儚い”のか! うまいことユニット名と絡めやがって! どこまでもあざとい真似をしてくれる!



「ああ、でも、パン対決で圧勝できへんかったのは誤算やったわ。アンタが胡散臭い東洋人とつるむと思わへんかったさかいにな。いや、アンタが出てきたんも、計算外や。」


「珍のことか?」



 ミスター珍が聖歌隊ユニットのスポンサーになるとは思っていなかったのか? しかも、俺が女体化し聖歌隊入りしたことも? 以外と情報が入ってなかったんだな。アイリから伝えられてなかったというのも、何か不自然だな? まあ、アイリがそれだけ自信満々だっただけののかもしれないが……。



「見てみい。アイツら、見事にワシの商売に競りおうてきとる。こないだのは完敗やなかったさかい、評判も良かったらしいやないか? ほいで、味占めて張り合いに来とる、っちゅうことやな。」



 この前の対決で負けはしたが、珍自身は「足がかりとしては十分アルね」とは言っていた。その後、リロイの町中でも屋台を出すようになっていたし、今回のイベントにも出店してきている。商売的には失敗というわけではなかったようだ。一応、聖歌隊の内外で話題にはなっていたので、宣伝効果は十分だったと判断したのだろう。珍の辣腕ぶりには頭が下がる思いだ。



「ワシらの王道には敵わへんかもしれんけど、けったいな食べモンのジャンルとしては生き残るやろな。ウマいことやりおるわ。」



 負けはしたが好評ではあった。今までなかったタイプの味だったと一部の人達には大ウケだったようなので、口コミで広がっていたらしい。ここでも出店して更にシェア拡大を狙っているのだろう。



「あのオッサン、気ぃ付けた方がええかもしれへんで。」


「アンタみたいなのに言われても説得力がないんだけど?」


「別にウケ狙いとちゃうで。ホンマの話や。こないだの学院で起きたゴーレムの話あるやろ? そこであるグループがバックで手ぇ引ぃとったんや。」


「なにそれ? アレは学長が黒幕だったじゃないか?」


「それとは別に、や。技術提供しとったグループがおるんや。ソイツらと珍がつるんどるていう噂があるんやで。」


「何だって?」



 ゴーレムの反乱。タルカスは十分な装備を揃えて学長や俺に戦いを挑んできた。確かに不自然な点はあった。あの装備、技術は何が由来だったのだろうか?



「アンタと戦った“銀色仮面”、どこへ行ったかわかっとるんやろな? まだまだ、アイツらなんか企んどるさかい、気ぃ付けや。 ワシから言えるんわ、これくらいや。」



 ゴーレムと銀仮面。両者は学院の魔法の技術とは異なる異質な技術を使って俺を苦しめた。明らかに異常発達したトンデモ兵器を多数投入していた。アレはどこで開発されていたのだろう? まだ俺の知らない勢力が暗躍しているようだな……。

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