表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
115/408

第115話 俺とお馬さん


 最初は戦車に慣れるために一人ずつ乗って走る練習をした。プリメーラは経験者なため楽勝で四頭引きの戦車でも余裕で乗りこなすほどだった。メイちゃんも初心者ながら難なく走行を熟していた。問題は……俺である。



「まずは馬恐怖症の克服から入るわよ!」


「いや、俺が恐怖症じゃなくて、馬が俺恐怖症だと思うんだが……?」



 何故か恐怖症の一言で説明されている俺の体質。恐怖症という言葉の意味をわかっているんだろうか? その使い方だと、高所恐怖症の場合、高所が人から逃げていく事も含まれると思うんだが……。色々とおかしい。



「面倒くさいから、そういう事にしてるの!」


「そんな理由で一緒くたにするなよ……。」



 こういうヤツって大概、言い間違いとか覚え間違いの言葉をそのまま押し通そうとするんだよな。コミュニケーションをコミニュケーションとか言ったりしてそう。



「ああ! そんなのはいいからさっさと乗れ!」


「ハイハイ。」



 強引に押し通されたので、そのまま戦車に乗った。そして、馬に鞭を打ち、発進させようとしても、馬は動かなかった。やっぱり無視される。



「動いてくれないんだが……。」


「ああ、もう! 何やってんのよ! もっと気持ちを込めて鞭を打ちなさい!」


「お馬さん、オナシャス!!」


(ペシッ!)



 し~~ん。馬は何も反応しない。知らんぷりを続けている。全く俺に関心がない、といった雰囲気だ。誰も人が乗ってないということにされている?



「ダメっす。お馬さんがやる気出してくれません!」


「なーに馬のせいにしてんだぁ! 気合いだ気合い! 気合い入れて根性見せて見せろ! アンタの戦車道魂を見せてみろ!」


「初心者にそんなん求められても困るんだが……。」


「うるさい! ゴチャゴチャ言ってないで気合いで走らせろ!」



 出た! 根性論が出てきましたよ。武闘派のお約束、「気合いで何でも解決」の論法が。この手の人物は何でも気合いで解決出来ると思っているから、論理が通じない。出来なきゃ、延々と気合いが足りないとか言われる。気合いが通じない世界もあるんですよ?



「きあーい! 馬、走れ、根性だ!」


(ペシッ!!)


「ブヒヒン!!!」


(ドカッ!!!)


「うわぁ!?」



 ちょいと強めに鞭を打ってみたら、馬にキレられた! 戦車を後ろ足で蹴り上げ、俺の体勢を崩させたのだ! 俺はそのまますっ転んだ。「無理でした。」



「何が無理でした、よ! 馬にも呆れられてどうすんのよ!」


「そんなこと言われても……。馬との相性が悪いからどうしようもないんですが……。」


「んもぉ! このすっとこどっこいがぁ!!」



 今度はプリメーラが怒り爆発モードになった。教える側の人間にキレられる……これは俺の人生の中で何度も目にしてきた光景だ。あまりにも才能なさ過ぎた結果が引き起こす事象。避けては通れない道なのである。ただ唯一そうしなかったのは“師父”だけだった。



「あの? ちょっと思いついた事があるんですけど?」


「何、マルマル子ちゃん? コイツをとっちめる方法でも思いついた?」


「そうじゃなくて……。」



 メイちゃんが何かアイデアを閃いたようだ。それに対してのプリメーラの反応……。うまくいかないからって俺をしばいてどうするんだ。顔が更にパンパンになってしまうだろ!



「走っている戦車に途中から飛び乗るというのはどうでしょう?」


「飛び乗る? うん、まあ、走り出す前からが無理なら、走ってる時に飛び乗ればいい、って?」


「そうです。他の人が走らせた状態からなら問題ないかなと思って。」



 最初からが無理なら、途中乗車で解決してしまえということか。それなら、俺とお馬さんの相性が悪くてもなんとかなるか?



「じゃあ、早速試すわよ! 私が走らせるから途中で飛び乗ってきなさい!」


(ペシッ! ドドドドドドッ!!!)



 プリメーラは戦車に飛び乗り発進させた。思い立ったら即行動。それがコイツの真骨頂。猪突猛進で考え無しに行動するのが玉に瑕だけどな。



「途中乗車って、ルール的にありなんでヤンスかね?」


「さあ、どうなんだろ? 最初から乗ってないといけないというルールなんだろうか?」



 さっきプリメーラやメッツがやってた様に直接自分が爆走してたくらいなんだから、ありな感じもする。逆のパターンが通らないなら猛抗議してやるしかない。とか考えてたら、プリメーラが一周してやってきた。飛び乗る準備をせねば!



「来たわよ! さっさと飛び乗りなさい!」


「よっしゃ! 途中乗車ジャーンプ!!」



 近くに来たタイミングで一気にジャンプして飛び乗った! ヨシ! 成功だ! このまま走り抜けて何周かすれば……ってなんかおかしい。減速してきたぞ?



「ちょ!? なんで止まるの!?」


「ああ、もう! やっぱアンタの気合いが足りないんじゃあ!」


「コレじゃもう、アネキはブレーキの役目しか果たしてないでヤンス!」



 うまく行きかけたと思ったら……まさかの減速! 途中乗車も却下ですかぁ? 俺と馬の相性は神がかり的に悪い模様……。万事休す、だ!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ