表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
103/410

第103話 そっちはいいんですか?


「おお、やってるな。」



 食材探しが思わぬ方向に転び、食材獲得どころかスポンサーも獲得した。俺は帰ってから速攻で試作に乗り出した。その間、プリメーラはイベントの歌などの演出の練習があるということで別々に行動していた。ちょうど試作第一号が出来上がったので試食してもらおうと持ってきたのだ。



「~~♪」



 俺が勝手にやってきただけなので、中断することもなく続けている。というか初めてアイツが聖歌隊らしいことをしているところを見た。あまりにも集中しているためか、俺がやってきたことに気付いていない。その姿には圧倒される物があった。これが聖歌隊か……。



「~~?」



 歌っている歌詞の内容からすると、失恋した少年を慰めて勇気を与えるようなないようにないっているようだ。まるでその姿は聖女その者と言える。普段の大食い食いしん坊将軍の姿から、今の歌姫としての神々しい姿は全く想像できなかった。



(パチ、パチ、パチ、パチ。)



 曲が終わったのを見計らって拍手を送ってみる。するとようやくプリメーラは俺の姿に気付いて、赤面しながらあたふたし始め、こちらに近寄ってきた。



「ちょ!? なんでアンタがここにいるのよ!いるんだったら、ちゃんと言いなさいよ!」


「いや、途中で入ってきたから、邪魔するのはマズいって思ったからさぁ。」


「割とこういうのは身内とかに見られたくないモンなの! 次から見るときは始めからそう言う様に!」



 何を恥ずかしがっているんだろう? ユニットの仲間というか、今のところ二人組だからある意味相方だっていうのによ。というか、メイちゃんやタニシは最初からいたはずだが、それはセーフなのか?



「ウェフェフェ! やっぱ最前列で聞けるのはいいでヤンスなぁ! もう死んでも悔いはないでヤンしゅう!」


「ちょっと、タニちゃん! ファン目線でどうするの! Pなんだから、ちゃんとしてよ。」



 タニシは完全に虜にされてしまっている。なんか目がハートになっている様に見えるのは錯覚だろうか? おそるべき歌の力だ! ほとんど魔法、魅了の魔法か何かじゃないかと思うほどの不思議な力を持っているようだ。



「ところでアンタ、なんか持ってきたんじゃないの?」


「え? 何が? 別に? 見られるのが恥ずかしいって言うんなら、さっさと俺は戻りますよ、っと!」


「うわぁ!? ダメ! ダメだから! そんなおいしそうな匂いを嗅がせといて帰るなんて、許さないんだからね!」


「匂い? 気のせいじゃないですかね?」


「んもぉ! さっさと寄越しなさいよ! アンタの持ってる手ごと食べちゃうからね!」



 なんという食い意地の悪さ! 匂いだけで気付くとは、やはり恐るべし食いしん坊将軍! 最早強引に奪い取るどころか俺の腕にかじりついてこようとしたため、観念して包みを渡してやった。こういう姿の方がよっぽど恥ずかしいと思うんだが……。本人はわかっているんだろうか?



「はむ、はむ、むぐ!」


「全く困ったヤツだ。これじゃさっきまでの姿が台無しだ。」


「うっさい! 歌うと猛烈に腹が減るのよ! 絶えずエネルギーチャージしないと私は死んでしまうのよ!」


「どこかの筋肉ゴリラ(ゲイリー)みたいな事を言ってるでヤンス!」



 ああ、アイツね。アイツは何かしょっちゅう干し肉を食ってたな。「筋肉の維持にはこまめなエネルギー補給が肝心でマッスる!」とかなんとか言いながら。つまりはプリメーラもどこかゴリラ的な要素があるんだろうか? 喉とか肺とか?



「この前、御馳走になった物を作ったんですね?」


「ああ。あの中のパン的な要素を含む物を作ってみた。割とコッチの設備でもなんとか作れたから良かったぜ。」



 正直、食材は用意出来ても、調理器具で詰む可能性はあったのだが何とかなった。蒸し器とは鍋とかの組み合わせでなんとかなったし、窯はパンとかを焼くオーブンがあったのでそれを使った。



「で、どうなんだ? 味は?」


「むぐ? 味ぃ? う~ん? ちょっとなんか物足りないかも?」


「ちくしょー!」


「だって、ミスター珍のとこのほど、出来がいいわけじゃないもん。あれの劣化版!」


「言ってくれるな……。」


「まあまあ、練習すれば、追いつけるはずですから。」



 悔しいが、珍の所で食ったヤツと比べたら負けるのは仕方ないか。俺も初めて作った料理だからな。残りの時間でどこまであの味に追いつけるかどうかが勝負の決め手になってくるだろうな。



「あとさあ、こればっか作ってるのはいいけど、アンタ自身のパフォーマンスの練習はしないのの?」


「えぇ? 歌とか踊りとか? 出来るわけないだろ、俺に? お前ら正規の聖歌隊と違って無理矢理入隊させられたんだから、そんな技能はない!」


「えー!? ありえない!?」


「あり得ないとか言うな! 入隊っつーか、女体化したのもあり得ないのに、そんなん求める方がおかしいんじゃあ!」


「何か特技とか芸はないの?」


「えぇ? じゃあ、剣技とか……?」


「剣技!? じゃあそれをやんなさいよ! アンタの必殺なんとかとか見てみたいし!」



 むー? 歌や踊りがダメなら、演武をやれと? まあいいか。それしか出来ないんだし。下手に練習しても音痴とかが治るわけではないしな……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ