表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/9

9.リュカス

お父様は非常に『あれ』が好きだ。

書斎にある専用の陳列棚に沢山並んでいる『あれ』は、すべてお母様が作ったものだ。


お父様はそれを『緑の繭』と呼んでいる。


お母様は防御魔法があまり得意ではなくて、防御はできるけれど、自分の作った防御用の殻、繭から自分では出られなくなってしまう。


でも、お父様はそんな時が最もお母様を愛しげに見つめている。


それでもお母様の防御魔法を向上させる訓練はさせていて、殻や繭のようにはせずに、壁とか盾のような形状にするような練習もさせてはいるのだけれど、あまり成功はしていない。


この前は初めてお母様の作った繭の中に偶然お母様と二人で入ってしまったらしい。


「このままずっと外に出たくはなかった」


そんなちょっと引いてしまう発言をしたお父様は、その後も何回かお母様と一緒に緑の繭の中へ入っていた。


改良したい気持ちと、このままがいいという狭間でお父様はいつも揺れている。


この国の筆頭魔導騎士は今日も葛藤し悩んでいる。


でもどこか楽しそう、いや、とても幸せそうなんだ。


僕もいつか三人でお母様の作る『あれ』の中に入れてもらえる日が来るのだろうか?


でもまだ、二人の世界を邪魔したくないから、きっともっと先のことになるだろう。


僕の魔力では緑の繭は作れない。


お母様の魔力が独特過ぎて誰も真似ができない。

自分の作ったものに閉じ込められて出られなくなることはあまり無いし、もし失敗したら次からは改良して行くものだからね。


お母様だけが作ることができるあの緑の繭に、お父様はこれからも心を奪われ続けて行くのだろう。




(了)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ