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赤髪ピアスと赤茶ロングはライブの準備をするらしい。上

「単刀直入に言う。助けてほしい」


 家に帰ると、休暇を免罪符に昼間からリビングで大量のお酒を飲んでいる紫乃ねえに土下座する。


 紫乃ねえはアルコールを分解している血色をしながらも、真剣な表情でパソコンを手に取る。


「今用意するから、なるべく詳細に、いらないと思う情報も含めて詳しい状況を聞かせて」


 俺は麗花と出会ってからの全てを話す。


「て感じ。元々考えてはいたけど今日ちょっとあって。できるだけ早く、接点がなくなる前になんとかしたい」


 俺の話を聞き終わると、聞きながら打っていたキーボードを打つ手を止める。


「話は理解したよ。お願いの内容はお金関係の解決でいいんだよね」


「ああ。これが解決しないとどうしようもない」


「分かった」


 紫乃ねえの笑顔に、俺はありがとうの言葉を口に出そうとしたが、紫乃ねえがその前にいつものような笑顔ではなく、不敵な笑みで俺を見つめる。


「これは依頼? それともお願い? 依頼なら高いよ。私、かなり優秀だから」


 紫乃ねえはパソコン裏に貼ってあるシールのマークと名前を指差す。


 名前やマークを言われても分からないが、紫乃ねえが見せてくれた写真や、羽実ちゃんから聞いた話を合わせると、相当大きな会社なのは理解できる。


「依頼ならちょうど半導体の特許が相手待ちだから空いてるよ。家族のよしみで特別に時間は作ってあげるけど……」


「その分割り増しってことか」


「そういうこと。どうする?」


 俺は内心焦りと不安、それを上書きするほどの驚きを感じている。当然だ、優しくて理解があると思っていた人からいきなり突き放されたら、だれでもそう感じる。でも考えてみれば理解できる。相手はプロ。それもかなりの額で引き抜かれた人。羽実ちゃんがいうには、さっきの半導体だって相当な額らしい。正直断られるとそれなりにきついが、まあ方法は他にもあるし、仕方ない。


「ああ、そうだよな。分かった」


「うん、じゃあ報酬は虎夜の笑顔「自分で解決するべきだよな」」


 言葉が被り、紫乃ねえの言葉を聞き取れなかったが、すぐに「え」と返ってきたので、俺は話の優先権を譲られたと思って話を続ける。


「俺が解決するべきだから、俺でなんとかしてみる」


「え、いや、違く」


「俺が解決って言っても俺だけじゃ無理だろうから、やっぱり弁護士に相談してみる」


「やっぱり頼るよねー仕方ないよね。じゃあ報酬は」


「報酬額は三十パーセント。それくらい分かってる。子供の頃にもらった名刺の中から、なるべく安くしてもらえるとこに頼んでみるから」


「え! あ、まっ」


 俺は急いで部屋に戻ろうと立ち上がる。


「いいから待ちなさい!」


 紫乃ねえに思いっきり服の首元を掴まれる。


「うえ! 首!」


「なんで行っちゃうの!」


「普通に会話が終わったかなって思って」


「終わってない! 全然終わってない! なんでもっと粘って頼ってくれないの! 

ひ〜ど〜い〜」


「自分で高いって言っただろ。俺には正式に雇う金はない」


「だから言ったじゃん! 報酬は笑顔だって!」


「聞いてない!」


「言った。言いましたー本来の予定だったら」


 紫乃さんは下手な俺のモノマネをしながら。


「そうだよな。分かった」


 紫乃ねえは落語のように顔を移動させながら、一人で会話していく。


「じゃあ報酬は虎夜の笑顔。私、笑顔」


「え。虎夜、驚きと安堵」


「うんん。笑顔だけじゃ足りない……虎夜が幸せになってくれることかな。私、優しい笑み」


「し、紫乃ねえ。虎夜涙目」


「虎夜の為だもん、頑張るからね。私、優しい微笑みを向け、お互いに笑顔に包まれる。てな感じになる予定だったの!」


「だったの! て言われても。それに途中のなに?」


「表情と仕草! 演技派だから」


「なら演技しろよ。大体なんであんなめんどい態度?」


「だって最近帰って来てもすぐ部屋に行っちゃうし、せっかく帰って来たのに放置とか、もうお前は必要ないって言われてるみたいで寂しかったから、ちょっと意地悪したくて」


 あーそういうことか。最近は文化祭の練習に、麗花の問題も重なって、帰ってからも色々部屋でしていたから、紫乃ねえとあんまり会話していなかったな。


「大体虎夜だってすぐに納得しないでもっと反論してよ!」


「いや、中三の頃は自分のことは自分でしなさいって言われてたし。今回もそう言うことかと」


「それは私が海外に行っちゃうから、しっかりと自立させようと思って……もーとにかくもっと粘って! 頼って! 寂しがって!」


「あーはいはい。それで結局やってくれるの」


「えーでもー一回断ったしな〜」


「じゃあいい」


「待って! やる! やるから嫌いにならないで〜」


「ならないけど、結局やってくれるんだよな」


「うん!」


「………………ありがとう。正直めっちゃ嬉しい」


「だって虎夜の為だもん、頑張るからね」


「それはもういい」


「え^ひどい〜」


 紫乃ねえは俺に抱きつくと、紫乃ねえの体からは凄まじい酒の匂いが発せられ、正直気持ち悪い。


「酒やば!」


「本当に頑張るからね。数日で解決してあげる」


「お、おお、頼んだ。とりあえず離してくれ」


「虎夜〜頑張るからね〜」


「う、気持ち悪い」


 紫乃ねえに抱きつかれながらも、なんとかトイレまで吐き気を我慢した。

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