8話「彼らのその後です」
エーリアが周囲のサポートもあって勇気を出し、オルフォとの関係を進展させると決意していたちょうどその頃――ルカロイドでは、王子アッシュと婚約した女性ラズベリーと王女アンターニアの間で戦いが勃発していた。
アンターニアは兄の婚約者を虐めずにはいられない性質の持ち主で、それゆえ、軍事力のある近隣国の王女であるラズベリーに対しても毎日のように嫌がらせをしていた。
ラズベリーは最初のうちは嫌がらせをされても耐えていた。
彼女は強い心の持ち主で。
それゆえ少々の嫌がらせでは心折れたりはしない人だったのだ。
だがある時アンターニアが「ラズベリーはこれまで百人以上の男と深い仲になってきただらしない女」などという偽りの情報を言い広めて、明らかに貶めるようなその行為にラズベリーはついに激怒。
アンターニアは愚かだった。
怒れば誰よりも恐ろしい女性であるラズベリーを怒らせてしまったのだから。
「嘘を言いふらされ侮辱されて、黙っていることはできません」
ラズベリーはきっぱりとそう述べて、裁判を起こした。
――その結果、今回の嘘のみならず、これまでのアンターニアの悪行がすべて世に出ることとなってしまった。
それによって国民からのアンターニアへの批判傾向が強まる。
王家への影響を気にした国王は、彼女と縁切りし、城から追放することを決めた。
ただ王女であるというだけで威張り散らしてきたアンターニアが王女という位を剥された時、残るものは何もない。
アンターニアのその後は一般にはあまり知られていないが。
生活費を稼ぐために身を売って生活していたが、そんなある日王家反対派の中でも過激な者たちに捕らえられてしまい、内臓を売り飛ばされた後に山小屋で殺められた。
つまり、アンターニアは既に生を終えているのである。
また、その亡骸は、一週間ほど地方のとある街にて晒されていた。
そうして悪女アンターニアはこの世から消え去ったのだが――ルカロイド王家とラズベリーのいさかいはそれでは終わらず、その関係の悪化はやがて戦争へと繋がってしまうこととなる。
娘ラズベリーを大切にしてもらえなかった彼女の父親が激怒していたのだ。
ラズベリーの母国より攻め込まれたルカロイドは、開戦後一週間ほどでほぼ全土が焼け野原に近い状態となった。というのも、ラズベリーの母国の軍事力は凄まじいものがあるのだ。それゆえルカロイドの軍程度では抵抗などまともにできなかったのである。戦力差があまりにも大きすぎた。
そしてルカロイドはラズベリーの母国の手に落ちた。
驚くくらいあっという間のことだった。
その後ルカロイドの王族らは皆捕らえられる。
「我が娘を傷つけた愚か者らに罰を!」
国王の命により、王族らは痛い目に遭わされた後に処刑された。
女性王族らは玩具とされ。
男性王族らは拷問され。
散々辱められたうえ、その血を絶えさせられたルカロイド王族であった。