特別ボーナス
「国って……貰えるんですね」
「いや、普通は貰えんだろ。魔女ってスケールが違うんすね」
「どうかしらねぇ?できる前の国はけっこう貰った記憶あるけど、さすがにできた後は初めてよ」
そう言えば、全員がぎょっとする。
「多分あんたたちも3000年ぐらい前ならそんな話もゴロゴロと……」
口に出してハタと気づく。
あー!!しまった!!乙女の秘密が!!
「3000年……?お前…3000年以上生きてるのか……?」
ゼインが信じられないといった顔で私を見る。
「さ、さあ?どうだったかしら……?そういう話も聞いた事があるってだけで……」
あわわわわ…!黒歴史封印!封印よ!!
「…銀月の君………「ストーーップ!!」
「何だ、話せないような事なのか」
「だ、だまらっしゃい!私は25歳可愛い後輩なの!」
ゼインとショーンとギリアムが微妙な顔をする。
「はいはい、オッケー!じゃ、オスロニアの件続きね。これは社長からお願い」
ニ、ニール……!あんたデキる子だわ…!今度こっそり永遠にフサフサの薬アレクシアからくすねとくから!
「……まあいい。とりあえずオスロニアの経営は私に一任するという言質は取った。…これはかなり大きい」
「本当ですね。信じられないですよ。あのオスロニアですよ?」
「魔女が1人で運営してたっていうのも驚きっすけど、まさか手に入るなんて驚き通り越して若干怖いっす」
……あの機械だらけの国にそんな価値あるんだ。
はっ!そうか、大地…大地に価値が……!
と気づいた所で私の手に余るのは確かだ。
「今後の事はこれから詰めるが、ディアナはどうしたい?」
「んあ?…私?」
「まだ寝るな。お前の意見が最優先だが、一応世界が置かれている状況は話しておく」
「…簡単な言葉でお願い」
こくりと頷くと、ゼインが言葉を選びながら話し出す。
「知っての通り、人間はすごく数が増えている」
「…そうね。羨ましいわ」
「ああ。だがその反対に大地はどんどん枯れている」
「それも知ってるわ。ネオ・アーデンは珍しいのよね」
…この国には水がある。しかもお風呂にバシャバシャ入れるだけの。
「水の確保のためにありとあらゆる施策を取っている。だがこの国には水はあるが、土地が無い」
「…そうね」
「というわけで、世界には食糧が足りない。もう100年以上」
「ああ…そういうこと。だからみんな工場で……」
「そうだ」
うーん……あの食べ物しか知らないなんて現代っ子は不憫ねぇ……。
いや待てよ。あの食べ物でもあるだけマシなのか……?
うんうん唸る私を、4人がじっと見ていたことには気づかなかった。
「あんたに任すわ」
「は?」
「私頭は超いいんだけど、考えるの苦手だし」
「いや、そこはきちんと…」
「いいのいいの。あんたなら上手いことやってくれるでしょ?いつかサラスワの子どもたちも大地で育った食べ物が食べられるようにやってちょうだい」
「!」
…あの給食は無いわ、と思ってたのよ。ついさっきまで。
一つ賢くなったわよ。
「…魔女って……みんな姉さんみたいに懐深いんすか?」
「は?」
「ディアナさんて…もしかして女神なんじゃ……」
「はぁっ!?やめてやめて!私は魔女!大魔女!悪いことする子は蛙にするの!!」
「ふふ、そうですね。ディアナさんは魔女です。そうじゃなかったら困っちゃいますよね?皆さん」
ショーンの言葉に全員が頷く。
…よ、よかった……。黒歴史がバレたのかと思ったわ。
「よーし、じゃあここまでの話は大方まとまったね!じゃあここからは魔法使いの時間。みんなお楽しみ特別ボーナスだーー!!」
ニールが魔法で花を散らす。
「やったー!僕欲しいものあるんです!」
「俺もっす!」
ボーナス……?
「ディアナちゃんは?何か欲しいもの無い?」
「え、え?何で?お祝い?」
「まぁそんなとこ。仕事の報酬は会社で利益が出たら、の話だけど、魔法使いとして頑張った分には我らがゼイン司令官から報酬が出るのだー!!」
再び宙に花が舞う。
「へー!面白いわねぇ。ショーンとギリアムは何が欲しいの?」
ショーンがニコニコしながら答える。
「僕運転免許が欲しいんです!だからゼインさんに身分証新しく作ってもらいます!」
「わかった」
ゼインがコクコク頷く。
「俺は船を新しくしたいっす!魔法陣描けるようになったんで、それを動力にできるのが欲しいっす!」
「なるほど。改良しよう」
またゼインがコクコク頷く。
はあ〜!ほんっとに面倒見がいいというか、マメというか、珍しいタイプの魔法使いだわ。
「ディアナは?まぁ私に用意できるような物をお前が欲しがるとは思えんが、一応、そういうルールだ。何でもいい。言ってみろ」
「…私頑張った?」
「ああ。間違いなく」
「そうだよ、ディアナちゃん!サラスワもオスロニアも、魔女としてディアナちゃんが成果を出したんだよ!」
「そうなの…?私、ご褒美とか貰ったことないんだけど」
本当に、そんな経験ない。
「それはそうだろう。お前は人に授ける側だろうからな。大して悩む必要は無い。会社の社長として部下に報いるだけの事だ」
マジか。部下って……いい!!
最高じゃない!!
「ゼイン!私時計が欲しい!」
「時計?みんなが着けてるものか?必要無くないか?」
ゼインが首を傾げる。
「いるいる!あのね、今回の件私なりに反省したのよ。それで思い付いたの。時計にあんたの魔力を保存しとけばいいって!」
ゼインがやや椅子を引いて私から距離を取る。
「……すごく………嫌な予感がする」
「何がよ。時計に魔力溜めれるんでしょ?あんたの魔力さえあればアレクシアの服なんてチョチョイのチョイじゃない。緊急時対応よ!そうねぇ、ゼインが居ない時専用だから…とりあえずあと2歳分年取るぐらいでいいわ!」
「……………断る」
「はぁっ!?何でもいいって言ったじゃない!あんたたちも聞いたわよね!?」
「「「バッチリ聞きましたー!」」」
「ほら!さ、早く……な…ぜ…逃げるっっ!!」
その後しばらくゼインを追いかけ回したが、とうとう捕まえる事が出来なかった。
その間60階にはなぜかトリオの大爆笑が響いていたが、何が楽しいのかさっぱりだった。




