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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

偽のクラウンと罠にハマったカローラ

 う……う……う……。

 ポリスメーンがブチギレながら幅寄せしてくる。ぼくはブチギレながら幅を広げた。ぼくはカローラに乗り、パトカーはクラウンだった。一般道で一時不停止の嫌疑をかけられたぼくが、安全に停止しようとしたときである。

 クラウンから二人の男が降車した。ぼくは運転席を微動だにしない。ウインドウを下すように要求される。ぼくは指が入るわずかな隙間のぶんだけ従った。ダサすぎるサングラスをかけて再度警察官が命令を下した。ぼくは拒否し、ウインドウの手前で免許証をちらつかせた。指が伸びる。ぼくは引き戻し、

「警察手帳を提示しろ」

 と叫びながらよだれを垂らした。が、警察官は拒否するのだった。ぼくは驚愕した。憔悴しながらぼくはこう続けた。

「そんなことは不可能なはずだ。キミが警察官であるなら……ね」

 ポリスワーカーは口元に薄く笑みを作りながら、手の甲でウインドウを小突いた。ぼくは貝のような心地でぴったり閉じた。すると彼らは血相を変えて怒鳴り始めた。

「不可能だ。きっと不可能なはずなのだ……」

 ぼくはつぶやいた。そして、もう一度しっかりと言った。

「警察手帳を提示しない警察官が存在するわけがない。でなければ――」

 ニヤリと微笑して、

「――でなければ、違法捜査ということになる。そんなことはあるはずがない。ならば……」

 窓が掌で打ち鳴らされた。三度もである。警察官に仮装した男たちはいくつかの暴力行為を示唆する高圧的な発言をした。ぼくはうろたえた。頭を抱え、しばらく耳を塞いだ。車が揺れる。車内が暴力の予感で鳴り響いた。

 もう一度頭をあげたとき、ぼくの瞳は前方を視認した――パトカーに偽装したただのクラウンが見えた。ぼくは驚いた。かれらは巧みな変装でぼくを誘拐するつもりに違いなかった。そして、窓を貫くような大声で一つの偉大な宣言をするのだった。

「残念だったな。貴様らが本物の警察官なら、ダッシュボードでくすぶり続けるマリファナがぼくを犯罪者にしただろう。だが貴様らはただの仮装者だ。そして、誘拐犯だ。犯罪者が告発などおこなわない。そして、騙されなかったぼくは何者の侵入も許していない。ぼくの逃走は誘拐を不可能にする。ぼくはすべてに勝利するのだ」

 車が揺れた。ボンネットが折り曲がった山になる。クラウンの後部がへこんでいる。さらにぼくは急速なバックでミラーを破損させた。誘拐犯が転がった。ぼくはあと一人だな、と思った。そして、身を守らなければならない、と決意した。そのためには是非とも精神の安息が必要だった。

 ぼくはダッシュボードを開き、消えかけのマリファナを唇に挟んだ。それは甘かった。

 アクセルはどこまでも深く押し込むことができた。からだが無限に前進する。ハンドルをきる。腰が浮き、車の流れは日光のためにギラギラした。車が軽を弾き飛ばした。それは挟み撃ちを図った敵の一味かもしれなかった。が、ぼくは気にかけず前進した。獣の泣くような声をあげて、ぼくのカローラはいつまでも走った。

 ……やがて僕は逮捕された。逮捕されたが、それはあまりにも不自然だった。あの警察官は間違いなく偽物だ。何度も確認し、正常に思考した結果、判断に誤りはない。狡猾だ、とぼくは思った。あの警察官は偽物のふりをして、ぼくをハメたのだ。おわり

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