ある星での出会い
とても久しぶりの連載小説です。
前の作品が完結していませんが、友人の夢を元に皆で話し合ってできた空想を一つの小説に仕上げようと今回書き始めました。
そんな趣味の手慰みですがお付き合いいただけたら嬉しいです。
そこは煉瓦街だった。赤煉瓦造りの家々が立ち並ぶ街。
建物から生えている煙突からは煙が立っている。
昼ということもあり、行きかう人々でガヤガヤと賑わっている。
そんな街のある一角で少年、アインスは少女と出会った。
「お兄さん、これあげる。本当は売り物なんだけれども、どうぞ」
道にあるベンチに腰掛け、ぼーっと青い空を眺めていた少年の前に赤い風船が現れた。
少年が風船の紐をたどると十歳にも満たないであろう少女が立っていた。赤いシャツにデニムのつなぎを着ている。
少女は笑顔で少年に風船を持つよう促している。
「……。どうして、僕に?」
「暗い顔をしていたから。なにか悲しいことでもあったの?」
「いや、今回は燃料を使いすぎてしまって、回復に時間がかかっているだけだ」
「?」
少年の言っていることが分からず少女は不思議そうな顔で首を傾げる。
「気にしなくていい。時期に治るから」
そう言い、少年はまた空を眺め始める。青空の中、雲が右から左に流れている。
そんな少年にお構いなく、少女はまた少年に話しかけた。
「ねぇねぇ、お兄さん。名前教えてよ!私はローリエ。この街で幸せを詰めた風船を売り歩いてるの。お兄さんは何してるの?」
無視するかと思われたが、少女、ローリエの問いに少年は無視をすることはなく返答をした。
「……。僕はアインスだ。探し物の途中でこの星に寄ったんだ」
「アインスさん。アインスさん。うん!覚えた!」
ローリエは口の中で少年、アインスの名前を反復した。
そんな、ローリエの様子を認識しつつもアインスの目線は空に向けられたままである。会話を続ける気はあるのだろうか。
一方、ローリエは会話を続けようと試みる。
「アインスさん、探し物って何?それを見つければ元気になるの?」
「どうして、僕に構う?」
「最初にも言ったけど、暗い顔をしてたから。ここは喜びの国、ジェシェミだよ?この街の名前にそんな顔は絶対似合わない!だから、元気にならないかなぁって思って」
「そうか」
「だから、私が元気を分けてあげるよ。どうすればアインスさんの顔は晴れるのかな?」
「さっきも、言ったけども、時期に治るからほっといてくれないか」
「そうは、言ってもほっとけないよ。何か力になれないかな?うーん」
ローリエは腕を組んで考え込む。
刻がだいぶ経ち日も傾いた頃。
ローリエは妙案を思い付いた様に手を打った。
「そうだ。うちにおいでよ。ごはん食べよ!おいしいもの食べれば元気になるよ!ね!」
ローリエは座っているアインスの手を引っ張り立つよう促す。
手を取られたアインスは意外にも促されるままに立ち上がった。
「お!来てくれるの?」
アインスは諦めたようにため息をついた。
「はぁ。君には負けたよ。それに大分回復してきたし、この街の情報を知りたい。案内してくれ」
「やった!ついてきて!」
破顔したローリエはアインスの手を引き自宅へと向かった。
ちょうど、夕刻の鐘が鳴る頃だった。