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何とかしようと無い頭をフル回転中!
時計もないし外も見れないから時間が分からない…町屋敷は大変な事になってるんじゃないかと心配だ。
何よりアンリ王女の考えの無さに呆れた。だって私は町屋敷に軟禁状態だし誰も邪魔してない状況なんだよ。なぜ国家間問題になる様な事するんだろう。王族としての自覚は無いの⁈それに側近たちは何をしてるんだろう!また怒りが再発して来た!
確か…アンリ王女は容姿重視で側近を決めているから、頭が足りてない者を側においているって言っていたのを聞いた覚えがある。だから私を拉致る計画を誰も止めなかったのね。ローランド殿下とミハイルさんの本気を思い出して恐怖あげーん…身震いしアレックスさんの(眉間の皺の)レベルMAXを思い出し青ざめる。
「もっ!平和主義なんだから揉め事は勘弁してほしいよ」
1人ぶつぶつ文句を言っていて、ふと棚の本が目に入る。手のひらサイズのハードカバーで厚みは10㎝程あり重そうだ。
「ん!」
本を手に取るとそれは女神レイラの教えが書かれた教典だ。確かレイモンド父様が教会に行く時に持って行っていた。本は重くかなり硬い。
「武器めっけ!でも…」
これで防戦するとしても私は腕が短く相手に当たる前に頭を押さえられ相手に届かない。どうする?
特殊能力でもあり腕が伸びればいいのに…
”あっ!紐!!”
そう本を紐で結び付けて振り回せば相手との間合いも取れるし攻撃も出来る、所謂鉄球ってやつだ!バトルもののゲームに鉄球を武器にしたキャラっているよね!
よし!早速リボンや紐を探す。リボンは洋服に付いていたが細くて直ぐに切れそうだ。他にないか探していたらナイトガウンがあった。腰紐が厚みも無く1.5mほどあり丁度いい。ガウンは2枚あり教典も2冊ある。ガウンから腰ひもを抜いて経典がとれない様に縛り付けこれを2つ作る。
「私中々やるじゃん!」自己満足しながらベッドに隠す。
後は脱出経路を捜すが…窓の板は隙間もなく窓からは無理そう…床に抜け穴とかないか見たが石造りで絶対無理。浴室に向かい排気口とかないか探すと天井に近い部分に小さい排気口があるが人が通れる大きさではない。部屋に戻り天井を眺める。天井は石ではなく木だ。どこか開きそうな所が無いか目を凝らし隅々まで見ていると…部屋の端にほんの少し木の色合いが違う部分を見つけた。修理でもしたのかなぁ…望みをかけ調べる事にした。ベッド横の整理棚に登れば手が届くかも…音が出ない様に引き出しを一旦全部出し、軽くなった棚を音を立てない様に運ぶ。そっと置いて椅子を足場にして棚に登り天井に手をかけた。押してみると板が浮いた。四方1か所しか釘止めされていない。あの釘が取れたら天井に上がれこの部屋の外に行けるかもしれない。
『確か前に読んだラノベで主人公が監禁され脱出を試みた時に取った行動と同じだ』ラノベの知識が意外に役にたった事に少し笑えた。
突破口を見つけたら後は行動あるのみ!釘を引き抜くのに堅いものを探す。クローゼットの宝石箱に入っていた髪留めの金具部分が釘抜きとして使えそうだ。
飾りを手で取り再度棚に登り釘に引っ掛け引っこ抜いた。
『やり!』以外に簡単に釘は抜けて4本とも簡単に抜け板を外したら…
屋根裏から手が伸びて来て口を塞がれた。
『いや!!新たな悪者!!』
『春香様。落ち着いて…私です。』
悪者は口元を覆っていた布を外すと見覚えのある顔が…
『クロードさん!!』
『一旦離します。ゆっくり降りて下さい。私も下に降りますから』
音を立てない様に下に降りると屋根裏から黒ずくめのクロードさんが降りて来た。嬉しくて思わず抱き付く。優しく抱きしめてくれ頭を撫でてもらい落ち着いて来た。クロードさんは腕を解き私の両手をみて顔を顰める。
『こんなに手を痛めて…ずっとあそこから見守っていましたが、やはり貴女は面白い。普通の令嬢は何も出来ずに泣くだけですが、貴方は自分の手で何とかしようとする。こんなに面白い女性には金輪際で会えないでしょうね』
『そんな事より助けに来てくれたんですよね!早く脱出しましょう!!』
『申し訳ありません。暫くこちらで監禁されていてください。』
「はぁ⁈」
『お静かに!』
直ぐ助けてくれないクロードさんを睨み不満をもらすと苦笑しながら理由を話してくれた。
どうやらエリスさんは初めから監視対象でアンリ王女の手の者だと分かっていたそうだ。今朝動きがあったエリスさんはずっと尾行されていて私の拉致も把握済みで、この部屋に監禁されてからずっと屋根裏でクロードさんが見守ってくれていたそうだ。
『じゃあ!私の独り言も…』
『くくく…失礼ながら全て…』
『・・・』絶句する私。
明日の夜まで監禁されていて欲しいと言うクロードさん。理由を聞いたら町屋敷では必死のアンリ王女に対し激辛塩対応のミハイルさんで、アンリ王女側はかなり焦っている。ここに私の存在を気にかけ出したアンリ王女に忖度しエリスさんをはじめとする家臣の一部が動いた訳だ。だかしかし私が逃げ監禁が分かり揉めたら、付き合わせは中断して無効になってしまう。これで終わりにしたいレイシャルはこのまま続けたいのだ。
『何かあれば私がお救いしますからご安心してこの部屋で休んでください。あの本の飛び道具の出番はない…ぷぷっ…失礼…』
『馬鹿にしてるでしょう!』
『本当に貴女は面白く愛おしい女性です』
クロードさんが緊急時に突入しやすくするために天板は嵌めるだけにし、クロードさんは屋根裏に戻って行った。クロードさんが居てくれると思うと安心し、どっと疲れが出て来てベッドの上に寝転がるとそのまま寝てしまった。
『早く帰って!貴女がいるからミハイルは私を見てくれない!』
苦しい!アンリ王女に首を絞められている。必死で抗うが私より柄の大きいアンリ王女に敵う訳なく意識が遠のいていく…
「うわぁ!」目を開けると天井からクロードさんが心配そうに見ている。どうやら夢を見ていたようだ。アンリ王女の鬼の形相を思い出し身震いする。
『大丈夫ですか⁈』
クロードさんは降りて来て水差しからコップに水を注ぎ渡してくれた。それを一気に飲む。
ホッと一息つくと誰かが部屋に来た様だ。
『っつ!』
クロードさんが慌てて天井裏に戻った。次の瞬間扉の鍵を開ける音がする。ガウンを羽織り部屋の隅に移動する。入って来たのはエリスさん。食事を持ってきたようだ。
「春香様。問題はありませんか?」
「あるよ。監禁されているんだから」
「食事をお持ちしました。しっかり召し上がって下さい…春香様にお願いがあります」
急に何を言われるのか警戒すると…
「ミハイル様に手紙を書いていただきたいのです」
「・・・」
「ミハイル様の求婚を断ると書いていただきたい」
「何で思っても無い事を書かないといけないの!」
「今は付き合わせ最終日の朝です。アンリ王女はミハイル様の気を引くため頑張っておられますが、中々ミハイル様のお心が動かず焦られておられ…」
「監禁されて何もできない私には関係ないよね!約束通り付き合わせが終わるまでここにいるだけでもあなた達に譲歩していると思うけど」
「・・・少し時間を取りますので考えてみてください」
そう言いエリスさんは退室していった。何て勝手なんだ!私の人権無視だし思ってない事を手紙に書けなんて!一人ぷんすか腹をたてていたら…
”く~”お腹が小さくなる。どんな状況でもお腹は空くのだと感心し、とりあえず朝食を頂く事にした。
食べながら苦戦しているアンリ王女の事を考える。どんな人なんだろう…エリさんの話ではとんでもない人みたいだけど…。
それより早くここを出てミハイルさんに会いたい。会って“好き”て言いたい。“ぎゅう”して欲しい…
そんな事を考えていたら涙が出て来た。くそ!泣いたら負けの気がして頑張っていたのに…
『へ?』体に温かさを感じ顔を上げたらクロードさんが抱きしめている。びっくりしていたら
『涙が止まるまでこうしています。安心して下さい』
やっぱり人の温もりは安心をくれる。本音を言えばミハイルさんに抱きしめて欲しいけど…するとクロードさんが笑いながら
『ミハイル様で無く申し訳ございません』
『クロードさんは心も読めちゃう人なんですか⁈』
『ぷっ!本当に愛らしいお方だ』
更に強く抱きしめられたのはいいが、微かに震えているクロードさん。明らかに笑ってるよね!
不貞腐れて涙は自然に止まった。
それからお昼ご飯を運んできた時と午後のお茶の時にまたエリスさんから手紙を書いて欲しいと依頼される。だが全て断る。ぜってーいやだ!
クロードさんが居てくれるから強気でいれる私。夕食時に食事を持ってきたエリスさんはあの黒い人と一緒に来て、さっきより威圧的に手紙を強要する。
だが!断る!すると…
「大した容姿もしていないのに偉そうな女ね!」
聞いた事ない声がし怖い顔をした美女が現れた!まさか…
「アンリ王女⁈」
「分かって要るなら相応の挨拶をなさい!礼儀も知らない女ね!」
うわぁ!きっつ!確かに皆が言う様に絶世の美女だ。こんな綺麗な人会った事無い。背も高くボンキュッボンでトレスがはじけそうだ。
「手紙は書いたの?」
「書くと思いますか⁈」
「書いていないの!身の程も知らない女ね!エリス!紙とペンを用意し早く書かせなさい」
「だから書きませんって!それに人に物事を頼む態度では無いですよね」
めっちゃ!睨まれた。私の頭の中でゴングが今鳴り響いた。今からアンリ王女とバトります!こんな傲慢な女に負けない!
「私。王女様がミハイルさんと付き合わせすると聞いて、邪魔をしない様にコールマン家の町屋敷にずっといてミハイルさんに接触してません。なのにこんなところに監禁されるし。ローランド殿下の婚約者候補の私を拉致っといてゴラスとレイシャルの問題になると思わなかったんですか⁉」
「私は“テクルスの花嫁”と言われるゴラスの第一王女よ。そんな事問題にもならないわ。ミハイルはきっと病気ね。こんな小難しい事ばかり言う女に気を取られて!早く目を覚まし私に夫になれば全て幸せになるのに!」
『あっ!こいつバカだ。容姿だけで中身が伴ってないな』
「貴女はローランド殿下や侯爵家嫡男にも求婚されているのでしょう!何て生意気な!どちららも美しくいい男じゃない!何レイシャルでは醜女が流行なの?そもそもローランド殿下が加護持ちじゃなければ妃になってあげたのに!床を共に出来ない何てあり得ないわ。だから同じくらい美しく身分のあるミハイルが私の夫にふさわしいの!貴女も鏡をみて身の程を知りなさい!」
「失礼承知で言いますね。確かに王女様はお美しく誰もが目を奪われでしょう。しかし…」
「しかし何よ!」
「性格がブス!最悪です。私の国の言葉に“美人は3日で飽きる”って言葉があります。要するに人生を共にするなら心が通じ合わないと…私が男なら性格ブスの王女は御遠慮します。それに私の事を悪く言ってもいいけど、求婚してくれた男性を悪く言うのはやめて下さい!」
ちょっと言い過ぎたか。でもローランド殿下やアレックスさん、ミハイルさんの事は悪く言うのだけは絶対許せない!
凄い勢いで目の前に来たアンリ王女。
“ばっちーん!!”
大きく薄い手で振り切ったビンタ1発を頂く。人生2回目のビンタです。ヤバい痛い…また口の中切れた⁈直ぐに天井裏からクロードさんが来て背に庇ってくれる。
「殿下!流石に春香様に手を上げられたら出てこられた方がいいかと…」
「「「「殿下?」」」」
「アンリ王女…春香に手を上げたという事は私に喧嘩を売ったとみていいね」
「ひっ!」
入口に殺気を放ち冷たい表情をし仁王立ちしているローランド殿下が。黒い人はアンリ王女の影みたいで、小刻みに震えながらアンリ王女を背に庇っている。アンリ王女は青ざめガタガタ震えてエリスさんに支えされて立つのもやっとだ。
「春香さん!」
駆け寄り抱きしめてくれるのはメリージェーンさんだ。知っている人の顔をみたら自然に涙が出た。メリージェーンさんは濡らしたハンカチを頬に当ててくれる。ひんやりし痛みがマシになる。
殿下の殺気で凍りつき部屋の温度が急激に下がる。
誰か!この場を治めて下さい!
お読みいただきありがとうございます。
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休載中ですが『女神の箱庭は私が救う』もよろしくお願いします。




