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やっと帰って来たのにまた大移動。ミハイルに早く想いを伝えたいのに…
「アレク…(ゴラスと)国家間問題になったりしない⁈」
「現女王は歴代女王の中でも賢王と呼ばれ素晴らしいお方だ。陛下とも良好で心配する事はない」
「分かった…ありがとう」
じっと私を見つめるアレックスさん。まだ何か話があるのかなぁ⁈首を傾げてアレックスさんを見ていたら
「何が起ってるか聞かないのか?」
「めっちゃ聞きたいよ。でも今じゃ無いだよね!皆んなを信頼してる。時期が来たらちゃんと教えてくれるんだよね」
「あぁ…」
手を握るアレックスさんの手は温かく言葉がなくても安心できる。それから会話はなく静かに馬車進み公爵領の森に入った。森を進んでいると…
”ばぅ!”「へ?今外から…ワンダ?」
今確かにワンダの鳴き声がした。慌てて窓のカーテンを開けると“暴走の黒い弾丸”ことワンダが走ってきた。またまひと回り大きくなっている。
あの子は何処まで大きくなるんだろう⁈行先は象レベル?
「あの犬はあの時の犬か?」
「はい。ワンダです。お迎えに来てくれたんですよ」
実は公爵家の屋敷に寄ることになった。コールマン家の町屋敷には私の着替えがないからだ。数日分の着替えを取りにすぐに出発するらしい。
ワンダはずっと馬車に並走しついてくる。気のせいかなぁ?ワンダは笑ってるように見えて和んだ。
少しすると屋敷に着いた。暴走ワンダのイメージしかないアレックスさんは馬車から降りると私を背に庇いワンダの前に立つ。
無邪気なワンダはお座りして私になでもふ待ちをしている。
「アレク。ワンダあの時から訓練し賢い子になっているから大丈夫ですよ」
「いや、俺の悋気だ」
「は?」
ワンダにヤキモチって…アレックスさんが可愛くて笑ってしまった。
「時間が無いからワンダと挨拶させてください」
と言いワンダの前に屈むと前にみたいに飛びつく事なく私のなでもふを気持ちよさそうにして高速で尻尾を振っている。そして犬語?でめっちゃ喋っている。感情豊かに喋るからその内普通に会話出来るかもしれないと思うほどだ。
ワンダと戯れている間にも私の荷物がどんどん積み込まれて行く。その荷物を見ていて『あれが数日?』引越しレベルの荷物を馬車に積み込んでいる。唖然としているとクロードさんが馬を休憩させるので、応接室でお茶を用意してくれているらしく、アレックスさんと屋敷に入る。応接室でゆったりと座っているとロックさんがお茶とケーキを持って来てくれた。
「ありがとうございます。ロックさんお元気そうで何よりです」
「お気遣いありがとうございます。すぐの出発と聞いております。また屋敷にも遊びに来て下さいね」
「はい。落ち着いたら遊びにきますね」
給仕が終わってロックさんは退室していった。アレックスさんとメリージェーンさんとゆったりとお茶を頂く。時間にして30分ほどしか居れなかったけど、屋敷の皆さんと挨拶が出来てよかった。準備が終わりここから急ピッチで王都のコールマン家町屋敷に向かいます。ここから公爵家騎士団のテリーさんとリースさんと後2名の騎士が護衛に就いてくれます。馬車に乗り込もうとしたらクロードさんが
「春香様。何があってもミハイル様を信じて下さい。あの方は絶対貴女を裏切らない」
「はい。信じています」
「春香。急ぐぞ…」
アレックスさんに乗車を促され馬車に乗り込んだ。シュナイダー公爵家の町屋敷は王都の中心にあるが、コールマン家の町屋敷は王都の端にあり、シュナイダー公爵領の真逆で王都を縦断する事になる。つまりシュナイダー公爵家の町屋敷を通過する事になってしまうので、王都手前から迂回する事になり通常の倍時間がかかる。今はお昼前5時半頃だが到着予定は9時過ぎになるらしい。
「春香。迂回路は深い森を通る為、休憩している時間が無い。王都に隣接したマルセン子爵領で少しの休憩をとるだけだ。疲れたら寝てていいぞ」
「大丈夫、眠くなったら勝手に寝ます」
私が乗り物に乗ったら眠くなるのを知っているアレックスさんは笑っている。枕が変わると眠れないくせに、乗り物は何でも寝れる自信がある。
案の定、少ししたらうたた寝をしアレックスさんに膝枕をしてもらって暫く眠った。
「春香。起きれるか?もうすぐ休憩地点のマルセン子爵領だ」
「ふぁい…起きます」
体を起こすとまだ寝ぼけているのにアレックスさんにちゅーをされる。
外を見ると一面草原が広がるのどかな風景が広がる。こんな草原のどこに休憩できるところがあるんだとう⁈疑問に思いながら外を見ていてら建物が見えて来た。
「アレク?あの町で休憩?」
「あぁ…小さな町だが宿泊施設がある。馬も休ませれるし食事もとれるぞ」
町の宿泊施設に着き馬を休ませて私達は食事をとる。元の世界で言うところのファミレスみたいな感じの食堂に行き皆んなで食事をする。やはりここでも一人前は多く残すとアレックスさんが食べてくれた。食後に少し時間があり町ぶらする。アレックスさんと歩いていると、テリーさんが追い駆けてきて何か話を始めた。ちょっと待っていたが長くなりそうなので、アレックスさんの視界に入る範囲でどんなお店があるのか見て回っていた。
『うっわぁ!可愛い!』ショーウィンドウに紅色のショートブーツが飾ってあった。ヒールは高くなく踵部から足首にかけてリボンが編んであり甘めのデザインに一目惚れして立ち止まり眺めていた。ふと視線を感じ店内を見ると中の男性店員が見ている。
『ごめんなさい。見てるだけで買いません』と立ち去ろうとしたら、男性店員はウィンクし店の外に出てきた。
「このブーツがお気に召しましたか?これは私が作ったんですよ」
「そうなんですか⁉︎凄く可愛いです」
「貴女のような愛らしい女性をイメージしてデザインしたのです。良ければ試着しませんか?」
「ありがとうございます。でも連れを待たせているし直ぐに町を出るで」
「すぐ終わりますよ!さぁ!店内に!」
店員さんは私を手を取り店に引き入れようとした瞬間
「ひっ!」店員さんはひきった顔をして手を離して
「すみません!」
店に入り鍵をかけてしまった。意味が分からず首を傾げていたら背後から寒気を感じ恐る恐る振り向くと…『ひっ!』レベルMAXのアレックスさんが立っていて一人で辺りの気温を下げている。
「春香…」
「何もしてないよ!ただ靴を見てたら、店員さんが来て試着を勧められただけだよ!それにちゃんと断ったよ!やましい事なし!」
アレックスさんは無言で私を抱き抱えて馬車まで移動し、私を馬車に乗せてどこかに行ってしまった。
怒ってるのかなぁ?危機感ちゃんて有ったよね⁈それにナンパじゃ無くて商品の売込みだったし、ちゃんと断ったし…
『また説教部屋行き⁉︎』身震いすると馬車の扉がひらきアレックスさんが戻ってきた。レベルは1まで下がっているのを見て少し安心していたら、何故が私の前に跪き綺麗な箱を私に渡した。
「何これ?」
「開けてみろ」
「?」
箱の中はさっき一目惚れしたショートブーツだった。実物はめっちゃ可愛い!
「これが気に入ったんだろ」
「うん。でも何で⁈」
「食い入るように眺めていたからな。買ってやろうと思ったら…まぁ…今回はちゃんと警戒していたから許そう。しかし押しに弱い春香は付添が必要だ。今後の対応は考えておく」
“ほっ!”とりあえず説教部屋は免れたみたい。相変わらず私の事よく見てるなぁ…それより今は目の前のブーツに心持って行かれている!
「アレクありがとう!嬉しい。履いてみていいですか⁈」
「あぁ…」
箱からブーツを出していたらアレックスさんが私の足を持ち今履いているブーツを脱がしだした!足首にアレックスさんの手の温もりを感じ恥ずかしさMAX!
「なっ!自分で出来ます!」
「いいからかせ!」
私からブーツを取り上げ履かせてくれた。ブーツは私の足にシンデレラフィットしオーダーメイドみたいだ。アレックスさんは前の席に座りブーツを見て口元を緩ませて
「よく似合う。あの靴職人は腕がいいようだ。春香を見てまた新しいデザインを思い付いたそうだ。出来次第ウチの町屋敷に届ける様に手配した。楽しみにしているといい」
「へ⁈」
いつの間にか店員さんと仲良くなった上に靴をオーダーしてるし!それにしてもあまりにもぴったりで疑問が…
「サイズがぴったりでびっくりです。流石靴職人ですね!あの短い間に私の(靴の)サイズが分かるなんて」
「いや、サイズは俺が指示した」
「はっ?なんで知っているんですか⁉︎」
「当然だろう」
新たなカルチャーショック!この世界の男性は婚約者や妻の全てのサイズを把握しているそうだ。理由を聞いたらプレゼントやお土産等の贈り物をよくするから知っておく必要があるらしい。
「まさか下着のサイズも⁈」
「いや!今は足と帽子のサイズだけだ!他のサイズは春香が求婚を受けてくれてから」
「いや!婚約しても婚姻してもサイズは教えないよ!」
「何故だ!俺に贈り物をさせないつもりか!」
「違うよ!体のサイズを知られるなんて嫌だよ。太ったりするのに!」
「どんな春香も愛するのだ、サイズは関係無いだろう!」
「そうゆう問題じゃ無くて!」
言い合いをしていたら扉を誰かがノックした。またレベル2になったアレックスさんが返事をし扉を開けた。馬車前にメリージェーンさんとリースさんがいた。
「春香。その件は後で話し合おう」
「はい!」
体のサイズを知られるなんて絶対阻止せないと!
アレックスさんに手を引かれ馬車を降りるとメリージェーンさんとリースさんが挨拶に来た。
そう実は今いるマルセン子爵領の隣がメリージェーンさんの婚約者の伯爵領なのだ。本来ならレイシャルに戻った時点で任務終了だったのに、”押しかけ女房さん”のお陰で任務続行する話になった。
しかし公爵領からは騎士団の皆さんが就いてくれたし、一旦婚約者の元に帰ってもらう事を提案した。
メリージェーンさんはそのままコールマン家の町屋敷に来ると言い、アレックスさんもそのつもりだった。でも…
「春香さん。やはり私はこのまま…」
「町屋敷まであと半分だしテリーさん達も居るから大丈夫。長い旅でお疲れだろうし婚約者さんに会って英気を養って来て!もし婚約者さんがOKしてくれたら、来てくれると嬉しいなぁ…」
「春香さん。ありがとう…でも領地まで1時間ほどだから一人で大丈夫ですよ」
「駄目!いくらメリージェーンさんが強くても、不測の事態が起こるかもしれないから、リースさんに付き添ってもらって!本当はもう1人就いて欲しいけど…」
これ以上護衛を減らせないとアレックスさんとテリーさんに反対された。でもやっぱり心配だ!
「春香様。俺は多分本当に付き添いであまり役立つ事ない位メリージェーン嬢は強く大丈夫ですから、安心して町屋敷に向かって下さい。俺は送ったあと直ぐに追いかけますから」
「リースさんよろしくお願いします」
こうしてメリージェーンさんは一旦帰る事になり、私達も町屋敷に向かい出発する事にした。護衛が減ったので、アレックスさんが騎乗し馬車に並走する。車内は私1人だ。町屋敷まで後2時間ある。
ずっと移動で疲れてきた…早くベッドに寝転がりたいなぁ…
「春香…起きれるか?」
「はぃ…」
目を開けると目の前にアレックスさんがいる。やっぱり寝ていたようだ。アレックスさんの手を借り馬車から降りると外は暗くなり目の前に屋敷がある。執事さんらしきイケオジさんとグラマラスな侍女さんが迎えてくれる。
「春香様。お待ちしておりました。コールマン家町屋敷の執事を勤めますセバスにございます。なにぶん急な滞在でご不安でしょうが、ごゆっくりなさって下さい。ますばお部屋にご案内いたします。侍女のエリを仕えさせるので何なりと申し付け下さいませ。エリ早速春香様をお部屋に…」
「春香様の身の回りのお世話をさせていただくエリにございます。よろしくお願いいたします」
「春香です。急な滞在でご迷惑をおかけします。よろしくお願いします」
「春香。気を使う必要はないぞ。母上が選んだ者達故、明るく気さくな者ばかりだ。俺はまだやる事があるから先に部屋で休んでいなさい。夕食の用意が出来たら迎えに行くよ」
「はい」
護衛騎士さん達にお礼を言ってエリさんに部屋に案内してもらう。部屋はマニュラ様の趣味かシンプルながら可愛らしい部屋でほっとする。まずは湯浴みを勧められその後マッサージを施してもらい、長旅の疲れが取れてやっとリラックスする事が出来た。
“くぅ…”お腹が控えめになり時計を見たらもぅ10時だ。そりゃお腹空くよね…暇すぎて窓から外を見たらアレックスさんが誰かと話している。相手は知らない人だけど王宮騎士団の隊服を着ている。
騎士さんは手紙らしきものをアレックスさんに渡し礼をして帰って行った。
見つかったら怒られそうなので直ぐにカーテンを閉めソファーに寝転がる。
少しするとアレックスさんが部屋に迎えに来てくれた。アレックスさんは来るなり抱きしめちゅーをし、部屋の隅に控えるエリさんが顔を真っ赤にし驚愕の表情をしている。もしかしたら町屋敷の人々はまだアレックスさんは女性嫌いの認識なのかもしれない。アレックスさんは蕩けるような微笑みをしているが薄ら目の下に隈が出ている。下船してから休みなしだからなぁ…アレックスさんの頬に手を当て
「お疲れ様です。忙しいでしょうが今日は早く寝て下さいね」
「春香が口付けくれたら元気になるんだがなぁ…ダメか?」
「ダメじゃないけど…」
部屋の隅にいる顔を真っ赤にしたエリさんに視線を送ると、アレックスさんはエリさんに退室を言い、更に赤くなったエリさん退室して行った。
アレックスさんは艶っぽく微笑み
「これでいいか⁈」
疲れたアレックスさんのために頑張れ私!背伸びして軽いちゅーをしたら…
軽いちゅーは呼水となりアレックスさんから深い口付けをいただく事になりへろへろに…
満足したアレックスさんに拒否しても抱き抱えられ食堂まで連れて行かれた。廊下ですれ違う従僕さんや侍女さんは皆んな驚きを隠せないようだ。
この後やっと食事にありつけ、後は寝るだけになる。すると部屋まで送ってくれたアレックスさんは1通の手紙を渡してくれた。差出人はローランド殿下だ。これってさっきの騎士さんが届けてくれたやつだ。
「明日状況を説明する。今日はとりあえず休め」
「うん。ありがとう」
「眠れないなら添い寝しようか⁈」
「大丈夫です!アレクも早く休んでね」
「あぁ…」
お休みのちゅーをしてアレックスさんは戻って行った。アレックスさんがあんな事言うなんて思って無かったから焦った。ドキドキが治らない!
まだ落ち着かない私にエリさんが夜着に着替えるように促しながら
「恐れながら若様が求婚なさっている女性の存在を聞いていましたが、それが春香様なのですね!てっきり政略的な婚姻だと思っておりました。あの女性嫌いの噂があった若様が…」
驚きを隠せないエリさんは興奮気味にマシンガントークを繰り広げ、一頻り言いたい事を言ったエリさんは私の手を握り
「若様は無愛想ですがお優しい方です。何卒若様をよろしくお願いいたします」
「あっはい」
この後気さくなエリさんと雑談し床についた。ベッドはコールマン家屋敷のベッドと同じ香りがして安心して眠る事が出来た。恐らくマニュラ様ブレンドのポプリだろう。今度会ったら作り方を教わろう…
ちなみに殿下の手紙は明日にします。寝る前にドキドキしたら寝れないからね!
お読みいただきありがとうございます。
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休載中ですが『女神の箱庭は私が救う』もよろしくお願いします。
『(仮)選べなかった1度目の人生、2度目は好きにしていいですか?』
も下書き中!もう直ぐアップします。




