87
長かったヴェルディア滞在も終わり、レイシャルに帰ります。
「春香さん!今日は帰国する日です。準備がありますから、お早くご起床下さい!」
「ふぁぃ⁉︎」
目を開けるといつ見ても美人のメリージェーンさんがいる。まだ起動しない頭を持ち上げる起き上がると、メリージェーンさんの後ろで忙しそうに侍女さんが走り回っている。そっか!今日は早朝の出発だった慌ててベッドから降りると直ぐに身支度をする。時計を見たら3時だ。
部屋に移ると荷造りも終わり私待ち?ジョシュさんもメリージェーンさんも正式な騎士服を着ていて出発待ちの状態だ。本当はお腹が空いていたが、朝食なんて言える状況ではない。とりあえずお茶だけいただき、殿下とアレックスさんを待つ。
お茶を飲み終わる頃に殿下とアレックスさんが部屋に来た。
「春香。レイシャルに帰るよ」
「はい!あっでもジャン陛下にご挨拶しなくていいんですか⁈」
「私達はして来たよ。春香は眠る姫だったからね」
「すみません。今から行って大丈夫ですか⁈」
「気にする事ない。陛下は馬車で待ってくれているよ」
VIP対応に恐縮しながら殿下のエスコートで部屋を出た。早朝のだから侍女さんや従僕さんしかいない廊下を進み馬車の待機場に向かう?
『んっ?』あれ?順路あってますか?疑問符を頭に付けながら歩いていたら、ローランド殿下がコートのフードを被せてくれた。もう直ぐ外みたいだ。
大きな扉が開くと雪の世界。目の前には早朝なのに沢山の人が待ち構えている。
「なんで!ジャン陛下とリリアン様がいるの?」
そう目の前には陛下とリリアン様が早朝から深夜臭を漂わせている。あそこだけ花畑に見えるのは気のせいだろうか⁈
みんな驚く事もなくローランド殿下がジャン陛下の前までエスコートしてくれ陛下の前に来た。
「春香殿。色々ありがとう。貴女の恩は代々語り継ごう。私とリリアンの婚姻が決まれば連絡する。是非参加してくれ。勿論春香殿の時は呼んでくれ。必ずリリアンと参加するぞ」
陛下の横で頬を染めるリリアン様。陛下も心なしか元気だ。あ…何となく察した。
「色々お世話になりました。ヴェルディアの発展と安寧をお祈り致します。陛下、リリアン様末永くお幸せに!」
お辞儀をするとリリアン様に抱きつかれ側には聞こえない声で…
「春香様。ありがとう。昨晩正式では無いけど求婚を受け愛をいただきましたわ!それにプレゼントした色変わりのガウンが役立った様で、私今最高に幸せですのよ!」
“色変わりガウン”の話をされ一気に顔が熱くなり挙動不審になってしまう。私の手を握ったリリアン様は
「春香様を友と呼んでよろしいかしら?」
「はい。光栄です」
社会人になると中々新しい友達って出来にくいからとても嬉しい…
「春香。そろそろ出発しないと」
「はい。ヴェルディアの皆様ありがとうございました」
殿下に促され馬車に乗り込むと直ぐに出発した。馬車の中が暖かく窓が曇り外は見えない。長かった旅も後は帰路だけだ。コートと手袋を外したら気が抜けてお腹が鳴った。笑いながら殿下がバスケットを渡してくれる。
「よく我慢したね。眠り姫の春香は朝食を食べる時間が無かったから軽食を用事させた。船まで1時間はかかるからゆっくり食べればいい」
「嬉しい。もう朝食は諦めてたんです」
バスケットを開けるとサンドイッチとカットフルーツが入っていた。ゆっくり食べ幸せを感じる。
食後は昨晩のアルフルガンとの交渉の話を聞いた。詳しくは教えてくれなかったが、相当レイシャルに有利な取引が出来たようだ。ヴェルディアとも同じくいい結果となったらしい。
「春香は私にとってもレイシャルにとっても幸運を齎す女神だよ」
「そん事いったら女神レイラから嫉妬受けちゃうじゃーないですか!」
「春香はレイラの理から外れているから、大丈夫さ」
「本当に?」
「恐らくだ」
「恐らくなの!心配になるからやめて下さい」
すると笑いながら抱きしめて口付け「可愛い」を連発されタジダジになる。
食後は殿下が色々話をしてくれ退屈する事なく港に着いた。また厚手のコートを着てアレックスさんの手を借り馬車を降りるとある光景が目に入る。
それは凄い人数の船員さんが船にこれまた凄い荷物を運び込んでいる。殿下はいつあんな量の買い物をしたのだろう⁈
すると宰相のエドワイズさんか来てご挨拶いただく。今日もライトグレーのコートで白熊さんだ。
「春香様。ヴェルディア滞在は楽しんでいただけましたか⁈また是非お越し下さい。国を挙げて歓迎致します」
「はい。良くしていただき楽しかったです。ちなみに病気時に水分補給に最適な『経口補水液』の作り方と作る時に計る容器を私の部屋付きの女官さんに預けてきました。寒いヴェルディアでは恐らく風邪からくる胃腸炎や発熱時の水分補給に最適なので医師と相談して作ってみて下さい。勿論ローランド殿下とからお許しを得ているのでご心配なく」
「本当に色々気遣いいただき感謝しかありません!貴女が困った時はヴェルディアが助けとなりましょう!」
ちょっと大袈裟だよ。大した事では無いのに…
実は経口補水液が完成した時にインフルにかかり高熱を出した時に飲んでいた事を思い出して、寒いヴェルディアにも必要だと思い、ローランド殿下の許可を得ていた。私の考えだけど病気に関する事は利権無く皆んなが利用できた方がいいと思う。
その考えも殿下に伝えて理解してもらっている。
「やはり、平和な世界で育った春香は優しく純粋だ」と苦笑いされた。
エドワイズさんは殿下に深々頭を下げて感謝を述べられて、後何か許可を得てる⁈
するとエドワイズさんがお別れにハグを求めて来た。一瞬血の気が引き殿下を見るとエドワイズさんが
「ローランド殿下の許可は得ましたよ」と小声で教えてくれた。殿下がOKって言ったらアレックスさんも怒らないだろう。
軽く手を広げたらハグをするエドワイズさん。すると凄く小さい声で
「妻に会う前に貴女に出逢いたかった」
「へ?」
「独り言です。忘れて下さい」
「あっはい」
エドワイズさんと離れると疑いの眼差しを2人に向けられ寒いはずなのに汗が出てくる。経口補水液飲んだ方がいい?
凄い視線のアレックスさんの後方ではまだ荷を積む作業が急ピッチで行われている。
「ローランド殿下は沢山買い物したんですね。そんな時間あったんですか?」
「そんな時間無かったよ。春香。あれはヴェルディアからのお土産だ」
「!お土産レベルの量じゃないよ!」
するとエドワイズさんが
「陛下から指示された量は積載量を超えるという事で減らしました。また次の機会に…」
「いや!(何をくれたのか知らないけど)いただき過ぎです。殿下もういいんじゃないですか!」
「春香。ジャン陛下のお気持ちだからね!」
あ…察しました。お口チャックします。積込が終わり次第出航らしく先に乗船し船で出港を待ちます。
行きと同じ部屋が用意されていて楽な服に着替えてのんびりしていたら、出航を知らせる汽笛が聞こえ慌ててコートを羽織りジョシュさんに付き添ってもらい甲板へ急ぐ。甲板に出ると動き出したばかりで港で皆さんが手振ってくれている。私も手を振り
「ありがとう!さよなら!」と叫んだ。気付いたエドワイズさんが手を振ってくれた。
離れて行くヴェルディアを暫く見つめていたらメリージェーンさんがショールを持って走ってくる。
「そんな薄着で風邪をひきますよ!」
「ジョシュさん、メリージェーンさん。今回の旅は私にとって得るのが多くいい旅になったの。支えてくれた2人に感謝してます」
「私も春香さんに感謝を。貴女と共に数日過ごし自分を知りまた春香さんから色々学びましたわ。任務を終えたらお友達になっていただきたい」
「喜んで!」
メリージェーンさんとハグするとジョシュさんはメリージェーンさんと私をハグし
「いい旅だったよ。幸せな2人は次は俺の応援してくれよな!」
「「勿論」」
港を離れたので部屋に戻った。この後レイシャル到着までのんびり船の旅を堪能する。行きは熱を出してほぼベッドの中だったからね。
航海2日目に入り後数時間でレイシャルに着くと殿下が教えてくれた。いい風と海流に乗れたらしく、予定より半日早くシュナイダー領の港に着くそうだ。しかし早くつき過ぎ深夜に港に着く。そのまま朝まで船内で宿泊し、早朝王都に向けて出発する事になった。
「春香ちゃん。きっと兄上が迎えにきているよ。気持ちに応えるんだろう⁈」
「うん」
「春香さん”ガウン”は必要ですか?」
「要らないかなぁ⁈」
「じゃー春香ちゃんは”姉上”になるね!」
「ジョシュさん!気が早い!」
こんな雑談をしながら夜はふけてきい、明日の早朝の移動に備えて早目に床にはいる。
…っがミハイルさんに告ると思うと中々眠れず、ベッドの中で色々考え余計眠れない。古典的な睡眠導入方法の羊を数えてみたら、100匹超えた辺りから何故か山羊に変わっていて一人で笑っていたらそのまま寝る事が出来た。
『…ん?外の音が騒がしくなぃ?』
目を開け起き上がるとやはり外が騒がしい。時計を見ると2時半を過ぎたところだ。ガウンを着て部屋に行くと侍女さんがもうお仕事している。
「春香様おはようございます。お早いですね!お掛けください。お茶をご用意いたしますわ」
「ありがとうございます」
少しすると隣の部屋から騎士服に着替えたメリージェーンさんも来て一緒にお茶をいただく。
メリージェーンさんに聞いたら着港から荷下ろしをしているらしく、日の出が近付き急ピッチで作業しているそうだ。
お茶を頂いていたら殿下とアレックスさんが部屋に来た。2人は交互にハグとちゅーをしてくれるが…
『あれ?やっと帰って来たのに表情が硬い何で⁈』
「春香。すまない。問題があり私はジョシュと先に王都へ向かう。大丈夫だ。大した事ではない。アレクとメリージェーン嬢そしてシュナイダー公爵家騎士団から騎士が就くので安心しなさい」
「あっはい」
「いい子だ」
殿下はぎゅっと抱きしめて口付け足早に部屋を後にした。不安になりアレックスさんを見るとレベル4でメリージェーンさんと話をしている。
益々不安になって来た私に気付いたアレックスさんが微笑み抱きしめてくれる。
アレックスさんは出発の準備で先に外にいるらしい。私はメリージェーンさんと朝食をいただき、準備が出来次第出発になるそうだ。
前に座るメリージェーンさんはいつも通りだ。普通に食事を終えると侍女さんが軽く化粧を施してくれ、下船し王都にむかう。
「へ?」
てっきりミハイルさんが来てくれていると思ったら何故かクロードさんが居た。いつも通りの執事スマイルだ。
「お帰りなさいませ。長旅でお疲れでした。お迎えが私で申し訳ございません」
「いえ、朝早くありがとうございます。あの…」
「はい。ミハイル様ですね。所用で昨晩から登城しております。王都に行けばお会いになれますよ」
「そうですか…」
クロードさんは意味ありげな微笑みしをして
「今の春香様のお顔をミハイル様にお見せしたかったですね」
「そんな変な顔してましたか?」
「いえ。あまりにもがっかりしたお顔されていましたので」
そう言われて恥ずかしくて顔が赤くなる。顔を上げたらクロードさんの背後からミックさんが手を振りながら走ってくる。何故が悲壮な表情に見えて嫌な予感がしてきた。
「はるちゃん!まずはお帰り!若は大丈夫か?」
「あっただいま帰りました。ミックさんミハイルさんに何かあったんですか?」
「ちっ!」
背後にいるアレックスさんが露骨に舌打ちした。心なしか目の前のクロードさんの表情が冷たく感じる。得体の知れない不安にミックさんに事情を聞いた。
「若は昨日の夕刻に港に来てはるちゃんを迎えるために前乗りするんだと嬉しそうだったのに、屋敷から公爵家の者が来たら青い顔をして何処かに行ってしまった。執事さんあんたが呼びに来たから事情を知ってんだろ!ちゃんと説明してやらねぇと反対にはるちゃん不安になるだろう!」
「お前!要らぬ事を言うな!」
アレックスさんが怒鳴り身体が強張る。メリージェーンさんが抱きしめてくれアレックスさんを一睨みし
「アレックス殿!春香さんが怖がります!怒鳴らないでいただきたい」
「あの…詳しくは聞けないのは分かっていますが、何も知らないのはもっと不安です」
「・・・」
言い及んでいるアレックスさんを後目にクロードさんが重い口を開いた。話してくれるが冷静に最後まで聞く事と、アレックスさんの指示に従う事を約束させられた。頷くと…
「昨晩、町屋敷のクリスから緊急の知らせが来ました。町屋敷にゴラスのアンリ王女が来られ、アンリ王女は勝手に滞在してご自身の荷物を搬入し始めたそうです。同じタイミングで陛下からレイモンド様とアビー様に登城命令が入りました」
「殿下が先に王城に向かったのは…」
「恐らくその件だと…」
すっかりアンリ王女の事忘れていたわ!荷物搬入って押しかけ女房じゃん!
「私はこれからどうなるんですか⁈」
「あれから王城からも町屋敷からも連絡が無く、状況がわかりません。町屋敷や王城に行けばアンリ王女と遭遇する可能性が高いので、春香様にはコールマン家の町屋敷でお待ちいただく事になります」
するとアレックスさんが背後から抱きしめて、顳顬にキスをし
「大丈夫だ。俺が守るから」
アレックスさんの腕をぎゅっと握り精一杯顔をつくり
「頼りにしてます!」
「っつ!無理に笑わなくていい…」
「ごめんなさい…」
「アレックス殿。出発を急ぎましょう」
メリージェーンさんに促されて馬車に移動する。
「はるちゃん!俺状況わからんが、港の者ははるちゃんの味方だからな!」
「ミックさんありがとう!」
こうして状況が分からない中、王城に向かい出発した。
お読みいただきありがとうございます。
続きが気になりましたら、ブックマーク登録&評価をよろしくお願いします。
休載中ですが『女神の箱庭は私が救う』もよろしくお願いします。
この『迷い人』も後少しです。次は『(仮)選べなかった人生』の方を集中して書いていく予定です。




