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ヴェルディア城に戻り気になっていたジョシュさんの話を聞きます。
北国だからかまだ7時半なのに外は薄暗くなってきた。馬車の窓から見えるヴェルディア城はライトアップされとても綺麗だ。
王城に着きお土産はヴェルディアの文官さんが預かってくれ、ほかの荷物と一緒に管理してくれる。
部屋に戻るとジョシュさんが帰っていた。
「ジョシュさん!何その締まりのない顔は!」
美丈夫のジョシュさんがとろとろに緩んでいる。これはお見合いがいい感じだったな。
「今日は外出に同行できず申し訳なかった。今から任務に戻ります」
「戻る前に顔合わせがどうだったか聞かせてもらおう!」
ソファーに座りジョシュさんとメリージェーンさんと3人でお茶を頂きながら、ジョシュさんの話を聞く。どうやらハンナ王女と気が合い話が盛り上ったようだ。好きな本や音楽が一緒だったらしくその話で会話が途切れる事が無かったそうだ。
「春香ちゃんみたい小柄では無いが華奢で護ってあげたいと感じる女性だった。それにいずれ女王になるお方だから気位が高いのかと思ったら全くそんなところは無く、控えめで身分の低い俺を気遣ってくれて…」
この後、またメリージェーンさんが婚約者の所に帰りたくなるほど惚気話を聞かされる事になる。私も胸ドキしたけどちょっぴりミハイルさんに会いたくなった。出発前にひと悶着あってまともに話をしないままレイシャルを後にしたからなぁ…アリッサさんの誤解は解けたのかなぁ…。
「ジョシュ。もう惚気話はお腹いっぱいだわ。婚約者に会いたくなるじゃない!」
「少し位いいだろぅ!今まで俺は散々他人の幸せに当てられてきたんだから!」
メリージェーンさんは基本礼儀正しい。しかしジョシュさんは従弟で歳が近いからか当たりが強い気がする。2人のやり取りにほっこりしていたら夕食の時間になった。
ローランド殿下とアレックスさんはまた他国の代表と会食で今晩も帰りは遅い。朝食時と就寝前に会う位だ。明後日早朝に帰国するからそれまでぎりぎりに交渉があるらしい。レイシャルの為に頑張ってね殿下!
夕食もジョシュさんとメリージェーンさんといただく。帰る直前にアイスワインを急遽1本買い部屋に持って来ていた。アビー母様の息子であるジョシュさんと姪っ子のメリージェーンさんは酒豪だ。完全に遺伝だね。
ジョシュさんのお見合い成功を祝って乾杯する為にアイスワインを夕食時に出した。お酒が好きな2人は喜んで食事をそっちのけでワインを堪能している。”私も味見したいと”と言ったら
「殿下とアレックスから春香ちゃんに“絶対酒は飲ますな”と言われているからダメ!」
と一口さえもらえなかった。どんな味か知りたいだけなのに…代わりに甘いイチゴに似た果実水を注がれる。ちっちゃい子扱いに不満を言いながらも楽しく食事をした。
夕食後は外出で疲れたので早めに湯浴みをして就寝準備をする。ジョシュさんとメリージェーンさんにも早めに休んでもらう事にした。
寝室でリリアン様に貰ったガウンを眺めて、どうしたものかと悩んでいた。すると侍女さんが殿下がお見えで少し顔が見たいと声をかけられる。
「待ってもらって下さい。上着を羽織るので」
「お早くお時間が無いそうです」
急いでガウンを羽織り寝室の扉を開けてガウンの腰ひもを結びながら殿下の前に早足で向かう。すると殿下は破顔し駆け寄り抱きしめて頬に口付けを落とす。
「春香。新しいガウンだね、良く似合うよ。私の色だ!嬉しいよ!」
「ん?」
いつも着ているガウンはクリーム色で厚手のガウンだ。このガウン少し肌寒い気が…思わず下を見た。そこには・・・・
「きゃーーーーーぁ!」
「どうした春香!」
思わず殿下を突き飛ばし寝室に逃げ扉を施錠し、ガウンを脱ぎ捨ててベッドにダイブ。頭から布団を被り今起きている状況が把握できずに困惑している。
「春香!どうした!ここを開けてくれ!」
「無理です!ごめんなさい!」
「春香!!」
絶対無理!今は顔を合わせられない!取りあえず気持ちの整理をさせて欲しい。しかし殿下は諦める気配がなく扉を叩きずっと話しかけてくる。正直ほっておいて欲しい。
「夜更けに何事ですか⁉」
どうやら騒動に気付いたメリージェーンさんが部屋に来たようだ。殿下がメリージェーンさんに説明をしている。
「分かりました。私がお話しをしますから殿下は公務にお戻り下さい。全て終わられたら又こちらにお寄り下さい。春香様は私にお任せを…私の勘があっていれば殿下にとって吉報となりましょう」
「春香!公務を終えたら直ぐ来るから」
そう言って殿下は部屋を後にした。取り敢えず殿下と顔を合わさなくてよくなり安心していたら
「春香さん。そちらにいっていいですか?お力添えしたいのです」
優しく声をかけてくれるメリージェーンさん。色変わりのガウンの事を知っているから…
寝室の鍵を開けて直ぐにベッドにもぐりこんだ。
ゆっくり部屋に入って来たメリージェーンさん。
「すみません!鍵をかけてください」
「安心してください。誰も入れませんから…」
メリージェーンさんはベッドの縁に座った。
「殿下の話と床に落ちているガウンから状況を予測すると、意図せず色変わりのガウン着て殿下の前に行き、ガウンが殿下の…」
「わぁー!バカだよ私!急に殿下が来て夜着のままだとマズイと思って慌てたら間違えて…」
そう!部屋が薄暗く色変わりのガウンといつものガウンの見間違えた。侍女さんが急かすから!…違う…完全に八つ当たりだ。自分が悪いんだ。
「で、ガウンか殿下の色になり驚かれた訳ですね」
「うん」
「ご自分の気持ちが見えた感想は⁈」
「意地悪言わないで…戸惑ってるの!」
「うふふ…春香さん可愛らしいわ」
暫く何も言わずに側に居てくれるメリージェーンさん。少しドキドキが治まり布団から顔を出したら、メリージェーンさんがガウンをたたみ、ベッドの横の椅子に掛けてくれている。
「私はヴェルディア行きが決まってからの(春香さんとの)付き合いですが、春香さんがちゃんと求婚者に愛情を持って接しているのを感じていましたし、求婚者に向ける眼差しは熱を持っているわ。恐らくお認めになるのが怖いのだと感じました。それは複数人の愛を受け入れる罪悪感と私には知り得ない”迷い人”であるが故の悩み。違いますか?」
メリージェーンさんは鋭い。そう罪悪感とまだ帰るという選択肢を持っている事。決めれていないのに軽い気持ちで認めたくない。
「詳しくは言えないけど、私ね元の世界に帰る選択肢があるの。だから安易な気持ちで3人に応えることが出来ないの」
「もし愛しい人が去っても想いが届き愛を向けてもらえたら、去った後その愛は彼等のその後の人生の糧になる。愛を返してもらえず貴女が去れば彼等の愛は報われない」
「両思いの人が去る方が辛く無い?なら応えない方が相手の為に…」
「春香さんの世界はそうかもしれませんが、この世界の者は愛情深いのです。心変わりする事はほぼありませんわ」
メリージェーンさんは私の手を取り愛おしそうに手を撫でて
「貴女が帰ってしまうと求婚者だけでなく、私達も悲しいんですよ。お忘れなく…」
「ありがとう…メリージェーンさん」
確かに帰る選択肢があるから彼等の事を想い気持ちをセーブしていたのかもしれない。でも…
「分かった。自分の気持ちは認める!でも正直婚姻はまだ決めかねていて…それでもお応えしていいのかなぁ…」
「婚姻は2人だけでは無く家も関係してくるので、相手としっかりお話しされればいいのです。彼等はちゃんと向き合ってくれるし、春香さんが納得行くまで待ち考えてくれますわ。もし無理強いをしたら周りが黙っていませんからね!特にレイモンドおじ様とアビーおば様が!」
「!」
メリージェーンさんが騎士の顔をしている。皆さんの想いを感じ心が温かくなって来た。
「”好き”って言って大丈夫かなぁ…」
「勿論。恐らく2人とも今晩は眠れないでしょうね」
「寝不足はだめだよ!帰国の時に言った方が…」
「殿下にさっきの状況があったのに何と説明するのですか?殿下は鋭いのです。安易な嘘は直ぐバレますわ」
「うっ!やっぱり今⁈」
「はい!」
緊張してきた!なんて言えばいいの⁈またプチパニックになってきたら部屋の方が騒がしい。誰か寝室の扉をけたたましく叩き…
「春香!何があった⁈殿下から聞き護衛を代わってもらってきた!入っていいか⁉︎」
「げっ!アレックスさん!」
殿下への返事を考えていたのに、まさかアレックスさんが先に来るなんて…
挙動不審になっていたらメリージェーンさんが微笑み握る手に力を入れて
「素直な気持ちを…」
「頑張る?」
「春香!開けてくれないなら蹴破るぞ!」
やめて!修理代発生するじゃん!慌ててベッドから飛び出て寝室の扉を開けた。
そこには額に汗をかき悲壮な顔をしたアレックスさんがいた。するとふわっと肩に何かが触れる。背後を見るとメリージェーンが微笑み、色変わりのガウンを私の肩にかけている。
『うっわ!またガウン⁉︎』
掛けられたガウンはみるみる淡いレモン色に変わり、背後でメリージェーンさんが驚いている。
私もびっくり仰天!見事にアレックスさんの瞳の色だ。
「春香?」
「えっと…あの…」
するとメリージェーンさんがアレックスさんに注意喚起をし
「私は隣の部屋にいます。春香さんとしっかりお話なさいませ。但し無体な事をされませんように。春香さんが少しでも嫌がる様なら、扉を蹴破り剣を貴方に向けます!」
「分かった。紳士な態度で春香に接すると女神レイラに誓おう」
こうしてメリージェーンさんが退室し寝室に2人きりにされた。薄暗い部屋で助かった。きっと私の顔は真っ赤だ。
「春香?」
心配そうに私の顔を覗き込むアレックスさんの瞳は優しい…
『頑張れ!私!』心の中で自分を鼓舞する。
でも何て言えばいいの⁈
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休止中ですが『女神の箱庭は私が救う』もよろしくお願いします。




