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舞踏会の始まり始まり…
会場に移動すると既に沢山の人がお酒片手に歓談していた。どうやら私達が最後の様だ。殿下がいいタイミングだと言ったので何故かと聞いたら、この始まるまでの時間は政治的な交渉の場になっているそうだ。そんな中に私は早く行くと各国の代表に囲まれるのは必至だからだ。
入場し少ししたら陛下の入場が知らされ会場は静まり返る。程なくしてジャン陛下が生オケと拍手の中入場される。
陛下の挨拶があり次に乾杯だ。乾杯が終わると直ぐに殿下が私のグラスを果実水に変えた。
でもさっきと一緒で一口でほろ酔い気分でふわふわしている。ふとジョシュさんとメリージェーンさんと目が合うと2人共に苦笑していて、アレックスさんに至ってはレベル3だ。皆の反応に疑問を持ちつつ殿下を見ると頭を抱えている。
「でんか?私粗相をしましたか?」
「ほろ酔いの春香はフェロモンを振り撒く女王蜂の様だ。よく周りを見てごらん。男どもの視線を集めているよ」
「あはは!そんな訳ないでしょ」
そんなやり取りをしていたら音楽が代わり台座から陛下が降りて来た。
「嫌な予感がする…ジョシュ、メリージェーン嬢!春香を一旦控室…」
と何故か殿下が慌てだす。すると急に辺り暗くなったと思って上を向くと大きい熊さんが立っている。背後のレイシャル勢から大きな溜息が聞こえる
「春香嬢。私とファーストダンスを踊ってくれるか⁈。生憎私には妃も婚約者も居ないのでファーストダンスの相手がおらんのだ」
「リリアン様は?」
「まだ正式に発表していないので彼女の存在はまだ明かしたくない。横槍が入る可能性があるのでなぁ」
「えっと…私の一存では…でんか!」
腕組みをして難しい顔をしている殿下が溜息を吐き
「ジャン陛下。この貸しは大きいですぞ!」
「分かっている。レイシャルとの交渉の場で考慮させてもらおう」
こうして殿下の許可を得て陛下のファーストダンスの相手を務める事になった。
陛下にエスコートされフロア中心に行くと会場にどよめきが起こる。
「陛下…リリアン様には話はしてありますか?」
「勿論だ。彼女の納得していて其方に申し訳ないと言っておった」
「ならいいです。陛下の浮気相手とみられるのは嫌ですから」
「俺が相手では嫌か⁈」
「はい。リリアン様にも悪いし」
「そういう所が周りを魅了するのだろうな…」
「私の世界では至って普通の考えですよ」
演奏が始まり陛下エスコートでダンスが始まる。やはり少し強引なエスコートだけど私がバランスを崩しても軽々立て直してくれる優しい熊さんだ。
すると陛下が笑いながら
「もう1曲踊るか?」
「何かヤバそうなので遠慮しておきます」
「春香嬢はやはり賢いな。連続2曲踊ると求婚している事を意味し、3曲踊ると求婚を承諾した事になる」
「も!ローランド殿下に言いますよ!」
「ははは!本当に貴女との会話が楽しい。リリアンに会う前なら確実に惚れているよ」
「遠慮します」
「一国の王である俺がフラれたか!ははは…実に面白い」
ダンス中に豪快に笑う陛下に皆驚き、レイシャル勢は殺気立っている。ダンス後の殿下とアレックスさんが怖いから化粧室に逃げようかな…
ダンスが終わり陛下と向き合い挨拶をすると
「春香」
振り向くとローランド殿下が立っていて手を差し伸べている。いつもの様に何も考えずに殿下の手を取るとジャン陛下が苦笑しながら
「完璧王子のローランド殿下が春香嬢の事となると余裕が無いようだ。あまり囲うと居心地が悪くなり小鳥は逃げますぞ」
「心配無用です」
「春香嬢。後日の食事会を楽しみにしてますぞ」
「こちらこそよろしくお願いします」
殿下にエスコートされ控の席に戻るとレベル3のアレックスさんがいて思わず愛想笑いをしてしまう。そこへメリージェーンさんが果実水を持って来てくれ一息つく。すると殿下が
「この次が私達の番だからね。足は大丈夫かぃ⁈」
「足というより首が疲れました」
「何故首のなのだ⁈」
「だって陛下は大きいから見上げるので首が疲れます。陛下だけでなく基本皆さん大きいから小さい私は疲れるんですよ」
すると難しい顔をしたメリージェーンさん近寄り小声で
「春香さん。男性に“大きい”は淑女としては言ってはいけない言葉です。あまりこの様な公共の場で仰らない様に」
そう言われて目の前の男性陣を見ると顔が赤い。何この世界でも放送禁止用語的なモノがあるの?これは知っておかないと大変かも…メリージェーンさんに小声で
「あとで禁止用語を教えて下さい。知らないので私やらかしそうです」
「では後ほど…」
気不味そうに咳払いをした殿下が私の手を取りフロアに進む。音楽が変わり3組が踊りだす。その1組はゴラスのハンナ王女とプレイボーイのレイトン殿下だ。ハンナ王女は座っていたらから分からなかったがメリージェーンさん位背が高くスレンダー美女だ。羨ましい!スタイル抜群だ。
「春香。私が目の前にいるのに他の者を見るとは私の気を引きたいのか?」
「あ…ごめんなさい。この様な場に慣れてないから色々気になって」
「今は…いやずっと私だけ見ていなさい」
「ずっとは無理ですよ」
「それにしてもレイトンは気に食わない!ダンス中もずっと春香を見ている」
そう言われてレイトン殿下を見るとバッチリ目が合いまたウィンクされた。何かあの人怖い。
昔1回だけ行った合コンに居たイケイケのチャラ男を思い出した。馴れ馴れしくてやたらにボディタッチしてくる男。連絡先聞かれて速攻で逃げ帰った事がある。絶対お近づきになりたくないタイプだ。
「殿下…レイトン殿下苦手です。護って下さいね」
「勿論だ。私の傍を離れては駄目だよ」
「はい。お願いします」
そう言っていたら音楽が終わりダンスを終えた瞬間四方からダンスを申し込まれた。殿下が断ってくれ背後からジョシュさんが誘導してくれ控の席の戻れた。怖すぎる…陛下とファーストダンスを踊ったせいで余計に注目を浴びて接触しようとする人が後を絶たない。もう帰りたくなって来た。
しかし挨拶回りがまだ終わっていない。これをしないと帰れないのだ。
溜息を吐いているとアレックスさんが申し訳なさそうに
「春香。疲れていないか?」
「うん…体は大丈夫だけど精神的に疲れました」
「殿下からお許しが出たよ。1曲お願い出来るか?」
「はい。喜んで!」
アレックスさんに手を引かれフロアへ。向かい合い礼をし改めてアレックスさんを見る。騎士服姿はよく見るけど今日のアレックスさんはいつもと違う人みたいで照れ臭い。思わず視線を外すとアレックスさんは手を取り引き寄せた。
「何故目を逸らす!傷付く…」
「アレクがカッコよくて何か別人みたいで恥ずかしくて…」
アレックスさんは引き寄せ腰に手を回したら音楽が鳴り踊り始める。
アレックスさんのリードで踊りだすけど異常に体が密着しているのは気のせいだろうか⁈
すると少し頭を下げたアレックスさんが囁くように
「ダンスなんてやめて春香をここから連れ去りたい。ここは春香を狙う奴らが多くて俺の神経を逆なでする。今だけは俺だけを見てくれ」
「だから…アレクが素敵すぎて見れないんですって」
「俺はいつもと変わらない。春香の方が輝き眩しいほどだ」
いつアレックスさんに溺愛スイッチが入ったのだろう?激甘な言葉にほんのり汗をかいて来た。こんな状況でもアレックスさんのリードは完璧で足を踏むことも無くダンスは終えれそうだ。そろそろ終わるタイミングでずっと微笑んでいたアレックスさんの表情が曇る。
「アレク?」
「春香は本当にずっとレイシャルにいるよな⁈ヴェルディアに行きたいとか言わないか?」
「?」
「同性から目からしてもバルカン殿はいい男だ。剣を交えた事は無いがかなりの実力なのが分かるし誠実そうだ」
「うん。だから?」
ターンをした時バルカンさんがフロアの端で立っているのが見えた。
「あれて…」
「この次にお前にダンスを申し込むつもりだ。ジャン陛下との約束だからから仕方ないがこの手を離したくない」
溺愛モードはバルカンさんを意識しての事だった。ヤキモチを妬いてくれた事が少し嬉しくて
「私がバルカンさん…いえ他の方といても見守って下さいね」
「春香…煽るな…今必死で己と戦っているんだから…」
「バルカンさんとの約束のダンスが終わったらすぐ戻りますから待っていてくれますか⁈」
「勿論だ。春香こそ俺の元に帰って来いよ」
ちょっとバカップルみたいな会話だったけどアレックスさんに愛されているのを感じ心が温かくなる。ここで音楽が終わりアレックスさんと向き合い礼をしたらすぐに背後から声をかけられる。
振返るとバルカンさんの少し前にレイトン殿下がいた。
「!!」
「挨拶が未だだがこんな素敵な女性とのダンスの機会を逃したくなくてね。私と1曲踊ってくれないか」
一国の王子に対してアレックスさんとバルカンさんは貴族。対抗できる訳もなく一瞬沈黙し、離れた控の席からローランド殿下が慌ててこちらに向かってくる。
絶対レイトン殿下と踊るのが嫌な私は殿下を待たずに発言してしまう
「お声をかけていただき光栄なのですが、そちらのバルカン様とお約束しておりますので今はご遠慮いただけませんか⁈」
「私が誰か知っておるのか⁈」
「王子である事は聞きおよんでおります。ですが先にお約束した方を優先するのは至極当たり前の事でだと思います」
会場中の人が注目している中私とレイトン殿下の声が響く。後方からローランド殿下が向かって来て、反対からエドワイズ宰相様が駆け寄ってくる。
「あっははは!女性にはっきり断られたのは初めてだ。腹が立つと思ったが案外新鮮でいいものだなぁ」
「見ての通り無作法者ですから、ダンスやご挨拶はローランド殿下にご判断いただいております。もしダンスを申し込み下さるなら、ローランド殿下にお願いします」
更に会場が静まり返りローランド殿下とエドワイズ宰相様の足音だけが響く。
「分かった。これほどはっきり断ると言う事は王子の権限は貴女には通じないようだ。ローランド殿下の許可をもらってから出直そう」
「ありがとうございます」
お辞儀をして後ろに唖然とし佇むバルカンさんの元に歩いて行く。周りの音が聞こえない位自分の心臓の音が煩く足元がおぼつかない。まるで産まれたての子鹿のようだ。
バルカンさんの手前でバランスを崩して前に倒れかけた。咄嗟に受け止めてくれるバルカンさん
「大丈夫ですか?」
「はい。今になって怖くなって来て…震えてきました。慣れない事するもんじゃないですね!」
「私はよかったのに…申し訳ございません」
「バルカンさんは悪くない。私がそうしたかったんです。権力を翳す人は好きでは無いので…」
「春香嬢…やはり貴女は素敵だ」
まだ子鹿の私を支えるバルカンさんはいきなり私を抱き上げローランド殿下の方へ歩いていく。
まだ震えが止まらなくてバルカンの腕の中で小さくなっていると殿下とアレックスさんが来た。
「「春香!」」
「殿下…アレク…ごめんなさい…やらかしました」
「大丈夫だ泣かなくていい。バルカン殿済まぬがウチの騎士と一緒に春香を控室に運んでもらえないか⁈」
「承知いたしました。ジョシュ殿案内をお願いします」
こうしてバルカンさんに運ばれて一旦控室に下がる事になった。
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