66
やっと王都に戻りミハイルさんに会えます。
いつもより早く起きて身支度を急ぐ。行きと違い今日中に王都まで移動するので朝は早い。3時半には出発する。
朝食は途中休憩地で頂く為、料理長がサンドイッチを用意してくれるそうだ。遠足みたいでわくわくする。1日中馬車なのでマタニティードレスの様なゆったりしたワンピースに着替えエントランスに向かう。
「へっ⁈」
エントランスにビッシリ使用人さんが並んでいて思わず後ずさりする。アレックスさんが笑顔できて腰に手を当て皆さんの前に出る。最前列にはケイン様とマニュラ様で一歩下がってエリックさんがいる。皆さんの視線が集中して恥ずかしくて嫌な汗が出てくる。
「春香。道中気を付けて。ここは春香の家だからいつでも帰っておいで。私も王都に行くときは会いに行こう」
「私の可愛い娘。母はここで待っているわ」
「ハルカ。ランの子供が生まれたら連絡するよ。会いに来いよ!」
「ありがとうございます。皆さんお世話になりました。また近い内に遊びに来ます。お元気で!」
頭を下げてお辞儀する。
出発を急ぐのでアレックスさんに乗車を急かされ乗り込んだ。窓から手を振り早々に出発した。今回は 男爵領までは侯爵家騎士団が護衛してくれ、そこからは王都から来た王宮騎士団が護衛してくれる。
馬車ではずっとアレックスさんがくっついている。恥ずかしくて少し離れるとまた距離を詰められの繰り返しで、根負けしてアレックスさんに抱っこされている。半時間程走り小川沿いの草原で休息&朝食を頂く。騎士さん達がてきっぱきとタープとシートを用意してくれシートにクッションを置いてくれゆったりと座る。騎士さん達と朝食を食べ馬達を休憩させる。何もない草原だけど風が気持ちよくてリラックスする。隣で遠くを見つめるアレックスさん。変な感覚に少しドキドキしていたら出発の時間になりまた馬車に乗り王都をめざす。 いつもよりスピードが出ているので揺れる。思ったより体にダメージが…
アレックスさんがクッションを体の周りに置いてくれる。どの位走っただろう。やっと男爵領とバーミリオン侯爵領の境の街に着いた。宿で昼食を食べ部屋で少し休む。ここで侯爵家の騎士団の皆さんとはお別れだ。お礼を言いお別れした。
王宮騎士団に護衛してもらい王都を目指す。
バーミリオン侯爵領は広く綺麗な草原を馬車は進む。日が落ち始め辺りが暗くなって来た。もう直ぐ侯爵領を抜け王都に入るらしい。するとアレックスさんが
「春香!見てごらん!」
窓から外を見たら遠くに王城が見えて来た。
「帰って来たんだ…」と感動する。
「町屋敷に向かう。今日は疲れているから町屋敷で休み。明日登城する。公爵もミハイル殿も屋敷に来ている筈だ。嬉しいか?」
「うん!」
目を細め優しく微笑むアレックスさんに照れてしまう。まだ激甘のアレックスさんに慣れない。慣れる日は来るのだろうか…
町屋敷の大門が見えて来た。1か月ぶりで緊張する。
「開門!」騎士さんの大声が響く。大きな音と共に大門が開き馬車は屋敷内に入って行く。
窓から見ていたら屋敷入口に沢山の人がいる。
馬が嘶き馬車が止まり扉が開くと先にアレックスさんが降りて手を差し伸べてくれる。
屋敷前にレイモンド父様、アビー母様とミハイルさん、クリスさんと屋敷の皆さんが出迎えてくれた。どうしよ!ちっちゃい子じゃないのに恥ずかしくて思わずアレックスさんの後ろに隠れてしまった!いい歳した大人なのに自分が情けない…
「春香」アレックスさんが優しく声をかけてくれ挨拶するように促す。
多分真っ赤な顔をして皆さんの前に進み頭を下げて挨拶する。
「ただいま帰りました」
柔らかい花の匂いがしてアビー母様に抱きしめられる。
「やっと帰って来たわ。私の可愛い娘ちゃん。皆待っていたわよ。あらあら!少し合わない間に幼くなったの?恥ずかしがって…父様にもご挨拶して!」
アビー母様を見上げると横にレイモンド父様が居てアビー母様と私を抱きしめ
「お帰り。体は辛くないか?声の事も聞いている。無理はしない様に…愛らしい春香の声を聞かせてくれ」
「父様ご心配かけました」
気のせいか少し涙目の父様。迎えてくれる人が居るのがこんなに幸せな事なんだと実感する。
「さぁ…アレックス殿もお疲れでしょう。食事を用意していますからお入り下さい。ミハイル。春香ちゃんをお願いね」
皆さん気を使い屋敷に入って行った。ミハイルさんと残され緊張する。
ミハイルさんは私の少し前で止まり見つめている。ミハイルさんの戸惑いを感じこの距離がもどかしい…
「くしゅん!」
日が暮れて肌寒くなって来てくしゃみが出た!『恥ずかしい!!』なんでこのタイミングで出るの!
「ハル。抱きしめていいか?」
「うん…」
ミハイルさんは赤ちゃんを抱くように優しく抱きしめる。久しぶりのミハイルさんの高めの体温と香りに心が満たされて行く。
『大丈夫!震えないし怖く無い』
ミハイルさんの胸元に顔を埋めてすりすりする。心地よくてずっとこうして居たい。
「ハル。俺が怖く無いのか?」
「ミハイルさんは私を守ってくれる人だって分かったからもう怖く無い。でもね…まだ急に触れられると体が強張る事があるから、そこは配慮して欲しいです」
「よかった…一生ハルに触れられないかと思ったよ。俺はハルを傷つけないし全てのものから守るよ。だから俺を受け入れてくれ」
後方で足音がして振り返ろうとすると私の頭を抱え込むミハイルさん。
「ミハイル殿。春香は疲れている積もる話あるだろうが、とりあえず休ませてくれ」
「アレックスさん大丈夫だよ」
「明日は陛下との謁見もある早く休んだ方がいい。クリス、春香をレイモンド様の所へ」
気が付くとクリスさんが来ていた。
「畏まりました。春香様どうぞこちらへ」
ミハイルさんは腕を解きクリスさんがエスコートしてくれる。
「二人は?」
「ハル、すぐ行くから先に行ってくれ」
不穏な空気にこの場に残ろうとしたらクリスさんが小声で
「心配は要りません。揉める事は無いでしょう。さぁ風邪をひきますよ」
半ば強引にクリスさんに連行される。確かに喧嘩しそうな雰囲気ではないけど少し心配だ。
サロンで温かいお茶を頂きレイモンド父様とアビー母様と話をしてたらミハイルさんとアレックスさんが帰って来た。険悪な雰囲気は無くて一先ず安心する。何を話していたのか心配で思わずまじまじと2人を見ているとアレックスさんが
「春香。心配するな。喧嘩などしていないよ」
アレックスさんの言葉に安心してミハイルさんを見ると微笑んでくれる。
「さぁ!料理長が春香ちゃんの好きなものを沢山作ってくれたわ!皆で食事にしましょう」
母様の呼びかけで皆で食事に向かい楽しく食事をとる。アビー母様のお酒のピッチがいつも以上に早くて心配して見ていたら、その様子を微笑ましく見ているレイモンド父様。本当に父様は母様が好きなのが分かる。私もあんな仲睦まじい夫婦になれればいいなぁ…
『んっ?夫?』ミハイルさんとアレックスさんが目に入り赤面する。ここに残るなら夫はミハイルさん?アレックスさん?陛下が言ったみたいに“一妻多夫”で夫は二人?
『あっ!忘れていた!ローランド殿下もだ。だから3人⁈』
想像をして一気に頬に熱を持つ。するとミハイルさんとアレックスさんが同時に席を立ち私も元に駆け寄り心配そうに
「ハル!」「春香!」どうやら顔が赤くなった私が熱を出したのかと心配し駆け付けた様だ。
大丈夫と何度言っても二人は引き下がらず、結局二人に付き添われ自室に戻る事になった。
扉前でお礼を言うと2人は抱きしめてミハイルさんは頬に、アレックスさんは額に口付けて部屋に戻って行った。また照れて汗をかいて1か月ぶりの自室に入る。部屋は綺麗に整えられエリスさんが掃除してくれていたようだ。浴槽にお湯を張りゆっくり湯浴みをして座りっぱなしで凝り固まった体を解す。湯上がり肌触りのいい夜着に着替え戸締りをして寝室に入った。
「あ~小さいベッド最高!このこじんまりしたサイズ感安心するわ」
ベッドの潜り込んだら帰って来たと実感し今晩はいい夢が見れそうだ!
「おやすみなさい!」
あれ…あれは誰?
あのシルエットは…ミハイルさん?その横は誰?綺麗な桜色の髪の背の高い女性。後ろ姿で顔は分からない。
『ミハイルさん?』
『…』
ミハイルさんは聞こえているはずなのに返事もしてくれない。隣女性がミハイルさんの手を引っ張りどんどん離れて行く。慌てて走ろうとしたら地面から薔薇の蔓が出て来て足に絡み付く。
『ミハイルさん!待って』
『…』
振り返ってこっちを見たのに無反応。何で!悲しくて涙が出て来る。手を伸ばしたらまた蔓が伸びて腕に絡む。
謎の女性は振り返り
『○#$☆…のくせに』
『何?待って!』
2人はどんどん離れていく!
「春香ちゃん‼︎」
「へ?アビー母様?」
目の前に私の手を握ったアビー母様がいる。あれ?
「春香ちゃん。夢見が悪かったのね…可哀想にこんなに泣いて!夢であってもうちの娘を泣かすなんて許せないわ!」
「何で母様がここに?」
ベッドサイドの時計を見たら5時を過ぎている。寝過ぎだ!
「起きて来ないから心配して見に来たのよ。疲れているのね…起きれる?」
「すみません。大丈夫です。早く用意しないと今日は王城に行くんですよね⁉︎」
「時間は決まってないから慌てなくていいわよ。まずは湯浴みしてさっぱりしなさい」
自分を見たらすごい寝汗!慌てて起きて浴室に行く。
「春香ちゃん。慌てなくていいから、身支度出来たら食堂に来てね」
「はぁ〜い!」
久しぶりに夢を見た。凄い嫌な夢だった。おかしい…明晰夢を見れるから悪夢はコントロール出来るはずなのに…
凄く嫌な予感がしてきた。明け方に見る夢は予知夢だと聞いたことがある。あの夢に出て来た女性と関わる事になるのだろうか…
胸騒ぎがしたがとりあえず早く身支度して朝食を食べないと…
この時はあまり深く考えて無かったが、やっぱりこの夢は予知夢になった。
お読みいただきありがとうございます。
続きが気になりましたら、ブックマーク登録&評価をよろしくお願いします。
『女神の箱庭は私が救う』
『(仮)選べなかった1度目の人生、2度目は好きにしていいですか?』
もよろしくお願いします。




