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グリフ達に会えるのは嬉しいが、何故か胸騒ぎがする春香だった。
先日来たグリフ達が集まる広場に出た。先日は30頭ほどのグリフが居たが今日は1頭もいない。
「やはり知らない者がいて警戒しているようだ。エリック近辺を見てきてくれ」
侯爵様の指示でエリックさんが辺りを確認に馬を走らせた。
「1頭も見れないのか⁈」ジャン王太子が落胆している。
一応、コールマン侯爵家以外の方は侯爵様とアレックスさん、エリックさんが1日身に着けたタイを身に着けているので襲われる事はないはず。
ちなみにリリアン様と侍女さんには公爵夫人のハンカチが渡されている。
「春香。広場の中心に行ってくれるか?春香一人ならランかカイが出てきそうだ」
頷きジャン王太子に馬から下してもらい広場の中心に歩いて行く。皆は遠巻きに見ているが、やっぱり私では役不足かグリフは現れない。少しすると森の奥から小さな影が寄ってきているのが分かる。目を凝らすと…
先日会った子供のグリフだ。2匹が周りをきょろきょろしながら私の元に走ってくる。『う…ん!可愛い!』私の足元まで来たので屈み手を差し出すと指先をペロペロ舐めた。もう1匹は私の膝の上に登ろうと必死に前脚を私の膝にかけている。
『可愛すぎる!キュン死しそう!』遠巻きに見ていた皆から驚愕の声があがる。
何故か1人のヴェルディアの騎士が私に近づいた。“バサァ!”大きな羽音と共にランとカイが飛んできて私の前に立ちヴェルディアの騎士を威嚇する。
「ラン!カイ!今日来た人は敵ではないのよ!攻撃しちゃダメ」私が言っても聞いていない様子。
少し嫌な予感がした時、森の奥から1匹のグリフが走って来てヴェルディアの側近の男性に飛びかかった。側近の男性は落馬し馬は逃げてしまった。
「ダメ!」私はグリフが側近の男性に向かった時点で思わず側近の男性の方へ走り出しだ。側近の男性を助けに馬を降りたヴェルディアの騎士が抜刀しグリフに切りかかる!
何とかグリフの前に出る事が出来た。怖いけど両手を広げてグリフを庇う。すると目の前に大きな影が…それはミハイルさんでヴェルディアの騎士の剣を受け止めた。グリフは唸って側近の男性に食らいつきそうで、慌ててグリフの首に抱き付き必死に止める。
「これはどうゆう事だ!」
ジャン王太子が大きな声で侯爵様に詰め寄る。
唖然とする侯爵様に怒りを露わにするヴェルディア勢。
“とてとて”と子供のグリフがやって来て腰を抜かした側近の袖口を噛んで引っ張った。すると側近男性の袖が破れて腕が露になり、その腕には包帯が巻かれていた。
「これは?」
解けかけた包帯をまた子供のグリフが包帯を引っ張る。包帯が解けた腕には引き裂かれた様な3本の傷が!傷をみたグリフはまた側近に噛みつこうとする。アレックスさんが馬から降りてグリフを抑えるのを手伝ってくれる。
「この傷はどうしたのですか?」
「・・・」
「その傷は先日我が領地に入った密偵か!」
エリックさんが問い詰める。傷口とグリフの爪が一致している。
「ライナーどうゆう事だ!説明しろ…お前…確か陛下の指示で俺らより早くレイシャルに入国したな…まさか!」
愕然とした王太子殿下は顔色を失くす。騒然とする中この状況をミハイルさんが治めた。
ジョシュさんが側近の男性を保護し先に侯爵家騎士団と屋敷に戻る事になった。
側近が去るとグリフは落ち着き私に擦り寄ってきた。首に抱き付き背中を撫でてやると目を細め気持ちよさそうだ。ランが近付くとグリフは森へ帰って行った。ランがじっと私を見つめてくる。
まるで大丈夫だと言っているみたい。
侯爵様が屋敷に戻る事を決め皆んな騎乗し順次戻る。来た時と同じくジャン王太子殿下の馬に乗せてもらい帰る。アレックスさん馬に乗っているリリアン様は心配そうに王太子を見詰めている。王太子はショックが大きい様でリリアン様が目に入っていない。
「殿下大丈夫ですか?」
「すまない。侯爵家屋敷に戻り側近を尋問し調べるが、恐らくエリック殿が言っていた密偵だろう。情報収集の密偵ならいいが多分違う…貴女を怖がらしたくないが貴女の拉致が目的だと思う」
「へ?怖い事言わないで下さい」
殿下の話では今回のレイシャルを訪問するにあたり、元王の息のかかった家臣は外したそうだ。
それなのに出発直前に元王から事前調査に側近のライナーと数名派遣しているから、レイシャルで落ち合う様に言われた。ライナーは陛下の命で汚い仕事を請け負っていると噂を聞いてから、王太子は嫌な予感はずっとしていたそうだ。
「もし拉致いやもっと酷い事を目論んでいた可能性もある。そうなると完全にレイシャルとの外交問題に発展する。何故ならまだ正式に婚約していなくても、貴女はレイシャル唯一の世継ぎの婚約者候補なのだから…」
「…」
何か大変な事になって来た。このまま行くと国家間の問題になり多くの人を巻き込む。何とか避けたい!無い頭をフル回転して考える。
『国王が命じたから外交問題に…ん?ライナーさんに指示したのが元王だという証拠があったら?…まだレイシャル王にはこの事は知らされていない…
元王が責任を認め自ら王位を譲ったら…!』
ぼんやりとだが解決策が思いついたかも!私偉い!
でもそれを成功させるには元王が命じた確たる証拠と、ヴェルディアの法律が鍵になる。
「王太子殿下!ヴェルディアには法律!つまり国が決めた決まり事はありますか?」
私のいきなりの質問に戸惑う王太子殿下。真面目な殿下は答えてくれる。
「法はある。神テクルスの教えに背くものは罰が課せられる」
「それは身分関係なく?それとも平民だけとか貴族だけとか?」
「いや!テクルスの教え故平民から王族全ての者に義務付けられている」
やったー!思わず王太子に抱きつく!ふと我にかえり王太子を見たら顔が真っ赤だ。鋭い視線を感じ振り向くとリリアン様とアレックスさんが睨んでいる。慌てて離れると
「やはり其方は俺の事…」
「な・い・で・す!」食い気味に否定した。
またリリアン様に睨まれちゃうけど、王太子に身を寄せ小声で…
「成功の鍵はライナーさんに陛下が命じた証拠です。口頭では陛下が言ってない知らないと言えばライナーさんが忖度してやった事で終わります」
「バルカン!」
王太子は騎士を1名呼び何かを指示し、騎士は数名の騎士を連れてすごいスピードで駆けていった。
「バルカンにライナーと前乗りした家臣達を見張る様に指示した。他に協力者が居るやもしれん。ライナーの様な者は足切りされ易い故、用心深くきっと陛下からの指示された手紙など持っているはず。安心しろバルカンは俺の次に強い」
見上げたジャン王太子殿下は表情はいつもの様に自信に溢れ勇ましい表情になった。屋敷までの道すがら解決策を殿下に話しておく。殿下は目を見開き驚く。
「そんな策を思いつくとは…俺にまだ想う人が居なければきっと春香嬢に惚れていたぞ!」
「この方法は私の世界で使われる方法です。証拠が見つかったらもっと詳しく話しますね!」
さぁ!屋敷に戻りサクッと解決しましょう!意気揚々と屋敷戻ったけど…この時は息巻いていたが、この後精神的にやられる事実が判明するなんて思いもしなかった。
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『女神の箱庭は私が救う』
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