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ジャン王太子が来て2日目。グリフの森に行きます
朝食後に部屋に戻ろうとしたら、リリアン様が声をかけてきた。アレックスさんが慌てて駆けてくる。
リリアン様は女性同士で話がしたいそうだ。アレックスさんは断れオーラを醸し出しているが、リリアン様の様子が気になり眉間の皺レベル4のアレックスさんを説得する。リリアン様にはサロンでよければお付き合いすると答えた。
表情を明るくしリリアン様は私の手を取り侍女さんにサロンへ案内を頼んだ。侯爵様に話しかけられているミハイルさんが心配そうに見ていたので、『大丈夫』と微笑んだ。
いくら女性でもまだ気を許してないリリアン様と部屋で2人きりは怖い。サロンならコールマン家の使用人がいるから最悪の時は助けてもらえる。
リリアンさんはじっと私を見据え静かに話し出した。
「本来こちらへは姉のエミリアが来る予定でした。ですが父上を説得して急遽私が来たのです」
そういえば確かバーミリオン侯爵夫人が公爵家令嬢はエミリア様が来るって言っていたのを今思い出した。
「もうお気付きかと思いますが、私はジャン王太子を幼い頃からずっとお慕いしています。あのお方は見た目と違い繊細でお優しい。そしてヴェルディアの民を大切にしている。あの方のお役に立てるなら私はどんな事も受け入れるつもりです」
「あの…私に何を求めているんですか?」
「ミハイル様とアレックス様を諦めジャン王太子をお選び下さい」
「はぁ?」
唖然となりまじまじとリリアンさんの顔を見るが、真剣で嘘や戯言を言っている風に見えない。リリアン様の意図が分からず困惑しているとリリアン様が爆弾発言をする。
「ジャン王太子はアンリ王女か貴女を娶らないと次期王になれない。元王は家臣から見ても異常なまでに神テクルスを信仰し固執しているのです。今の安寧もテクルスのお陰だと思い込んでいます。
確かにテクルスのお陰で昔に比べて豊かになったと言われてますが…」
言葉に詰まるリリアン様。沈黙が続き困った私は時間を理由に話を終わらせようとしたら、意を決したように話を再開。
「アンリ王女がミハイル様をお慕いしているのはご存知ですか?」
「はい」
「不敬な発言をしますがあのお方は正直王妃になる器ではありません!」
「!」
どうやらヴェルディア王太子とゴラス王女の縁組が勧められて交流場を何度か設けて互いの国を行き来してきた様で、その時のアンリ王女の振る舞いは酷くゴラス女王から直々に謝罪がなされる程だったらしい。この事からジャン王太子の側近はアンリ王女との縁組に難色を示すようになった。
当のジャン王太子は国をもっと豊かにする為には次期王になる必要があり、その為にこの縁組を受け入れていた。しかし当のアンリ王女が拒みレイシャルの公爵子息を伴侶に望んでいた。
「ジャン殿下が理想とする国を作り上げる為に、仕方なくアンリ王女をお迎えになるご決断をなされましたが、私もずっと反対しておりました。何故ならあんなにお優しく愛情深い殿下を見た目が熊のようだと忌み嫌ったのです。そんな浅慮な女狐を殿下の奥方と認めたくありません!」
「・・・ソウデスネ…」
ごめんなさい!私も熊扱いそれもグリズリーでした。深く深く反省中。
「話が進まず数年経った時にテクルスが召喚した異世界の女性が現れたと聞き、陛下がアンリ王女と一向に縁談進まないジャン殿下に異世界の乙女を娶る様に命じたのです。まだ1日しか貴女を見ていませんが、礼儀正しく素朴で優しい女性と感じました。失礼ですが女狐に比べればマシです」
「リリアン様はそれでいいのですか?」
「私はジャン王太子が望んだ立派な王とる姿を側で見れれば幸せです。貴女が王妃となりお世継ぎをお産みになられたら、乳母となり一生お仕えするつもりです」
リリアン様の印象が変わった。派手好きでビッチだと思っていたけど、愛情深く忠誠心に溢れる人だったんだ。またまた反省して
「だからワザとこんな露質の高いドレスを着てアレックスさんとミハイルさんを誘惑して、私とジャン王太子の仲をもとうとしたんですね」
「いえアレックス様とミハイル様を貴女から遠ざける為に誘惑しましたが、この装いは私の趣味ですわ。失礼ですが女に生まれこの様に美しい容姿であるなら、殿方の目を楽しませるのも女の勤めですわ!」
「!」
話の流れ的にジャン王太子の為に頑張ってるんだと思ったら単なるリリアン様の趣味でした。私の感動を返してほしい。
「春香様も小さくても殿方を喜ばせるもの故、お胸、腰、臀部は強調なさいまし!」
背後から笑い声が聞こえて振り返ると兄様が口元に手をあて笑いを堪えながら歩いてくる。
「楽しい歓談中失礼。そろそろ午後の準備の時間ですのでリリアン様、春香嬢は失礼させていただきます」
「分かりました。春香様…お話しした件一度お考え下さいまし」
リリアン様は立ち綺麗なカーテシーをしご挨拶される。私も立ちリリアン様に向かい
「ジャン王太子殿下にも誠意を持ってお話しさせていただきますが、私がヴェルディアに嫁ぐ事はありません。私自身まだ元の世界に帰る事を諦めていないので…ジャン王太子殿下は貴女がお支えするのが一番だと思います」
驚いた表情のリリアン様にお辞儀をして、兄様の手を取りサロンを後にした。
ジョシュさんと部屋に戻る道すがら話していたら、急にジョシュさんが笑い出し
「春香ちゃんはリリアン様が言うほど小さく無いし、露出しなくても十分魅力的だから気にする事ないよ」
「聞こえてました⁈」
「うん。実は兄上から心配だから付くように言われてね」
「じゃあ話は…」
「聞いていたよ。見た目で為人を決め付けてはいけないね。派手だが素晴らしい女性だ。エリック殿も来ていたから恐らくアレックスにも話は行くだろう」
立ち聞きされていた事がショックで不機嫌になり黙り込むと、何を勘違いしたのか慌てたジョシュさんが…
「春香ちゃんは小柄だから小さいのは仕方ないよ!兄上も小さいのは気にしないよ!」
「はぁ?こっちでは小さいかもしれないけど、元の世界では普通サイズだからね!”小さい!小さい!”言わないで!」
謝るジョシュさんを無視して足早に部屋に戻った。
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