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軟禁状態の春香。密かに街に行ってまたプルスルを食べたいと考えていた。こんな調子で叶うのか?
はぁ…ローランド殿下の手紙も同じ様な内容だった。強いて言えば殿下の方が表現が極甘くだった位だ。手紙を封筒に直してお茶を飲む。
はぁ…軟禁状態だ。暇だから何かしたいなぁ…
とりあえず侍女さんに案内をお願いし部屋に戻る。
ベランダの掃き出し窓から外を見ていたらある事に気付いた。ランやカイよりひと回り小さいグリフが沢山飛んでいる。ランとカイ以外のグリフを初めて見た。もっと近くで見たくて窓を開けようとした時、部屋の扉を誰かが叩く。
返事する前にアレックスさんが入って来た。
「許可も無くすまない!急を要する故許してほしい」
「びっくりしけど大丈夫です。急な要件とは⁈」
走って来たのか息が上がっている。騎士をしているアレックスさんが息切れするなんて猛ダッシュしたのだろうか⁈
「今、屋敷周辺で不審者が目撃され今グリフが興奮状態だ。ランやカイは知能が高くこんな緊急時にも人の判別が出来て襲う事は無い。しかし他のグリフは興奮状態だと新参者、つまり最近来てまだ匂いを覚えていない者は容赦なく襲う。お前はいくらランやカイが懐いていても他のグリフがそうとは限らない。だから部屋から出ないでくれ」
そう言ってアレックスさんは足早に部屋に入り全ての窓のカーテンを全て閉めた。知らない姿を見れば容赦なく窓を割って入って来るそうだ。出来るだけ窓から離れて迎えが来るまで部屋で待機して欲しいと言われた。
「部屋の扉は施錠しないでくれ。緊急時に蹴破る事になる」
どんどん物騒になる話に不安が増す。顔色が悪い私に気付いたアレックスさんが戸惑い気味にハグをして背中をさすってくれる。
「大丈夫だ。お前を危険な目に合わせないから」
「ありがとうございます。じっとしています」
アレックスさんは私の頭をポンポンと叩き珍しく微笑み部屋を出て行った。
アレックスさんは帯剣していた。昨日屋敷に着いてからは帯剣していなかった。という事は屋敷にも侵入の恐れがあるのだろう…
“どん!!”ベランダからすごい音がした。カーテンに移るシルエットはグリフ?でもランやカイに比べて大きい。アレックスに窓に近づくなと言われたけど、あのシルエットは人では無いから大丈夫かなぁ⁈怖いもの見たさにゆっくり窓に近づきカーテンの隙間から外を見た。
『何!あのグリフ!ランでもカイでも無い。ひと廻り大きいし羽が銀色だ』
凄くキレイいで不思議と恐怖は感じ無い。見とれていたらそのグリフは鳴き片羽を広げた。まる方向を指しているかの様だ。
ひと廻り小さいグリフが一斉に左の方に飛んでいく。圧巻だ。カーテンを全開してベランダから見てみたい!
カーテンに手をかけ開けようとした時、銀色のグリフが後ろを見た。目が合う…翼と同じ銀色の瞳は一見冷たそうに見えて優しくも感じる。その瞳は年長者が若者を諭すように『そこに居なさい』と言われている様な気がしてカーテンから手を離した。
どのくらい経っただろう…グリフが飛び交う羽音も無くなり屋敷周辺は静かになって来た。カーテンに移る大きなグリフの背中に守られ気持ちは何時になく穏やかだった。銀色のグリフは羽を広げ大きく鳴き飛び去っていった。
昔の昼ドラの様に「待って下さい。せめて名前だけでも…」そんな気分だった。
少しするとアレックスさんが部屋に来て状況を説明するから侯爵様の執務室に案内すると手を差し出してくれた。
手を重ねてエスコートしてもらう。廊下に出ると屋敷内は平穏を取り戻している。アレックスを見上げ眉間の皺を確認する。『うん!皺は無い!』
アレックスさんの眉間の皺は一種のバロメーターになっていて機嫌が悪かったり忙しいと皺が出る。深いとMAXに機嫌が悪い。分かりやすくて助かる。
やっと侯爵様の執務室に着いた。入室すると公爵様、エリックさんあと知らない騎士服を着た男性がいる。
アレックスさんにエスコートされソファーに座ると従僕さんがお茶を入れてくれ退室していく。
騎士服を着た男性は侯爵様の横に立ち着席しない。まじまじと見ていたら侯爵様が
「あ…紹介していなかったね。知らない者がいたら不安になるだろう。この者は侯爵家騎士団の団長のブライスだ。貴女の護衛に就くこともあるだろう。ブライス。春香嬢にご挨拶を」
ブライスさんは右手を左胸に当て深々と頭を下げ丁寧にご挨拶して下さった。慌てて私も経ち頭を下げて挨拶する。
一通り挨拶が終わるとブライスさんから今回の騒動の説明が始まる。
第1発見者はエリックさん。若いグリフが騒いでいるのに気づきグリフが飛ぶ方へ馬を走らせると近くの森に新しい血痕が残っていて、興奮しているグリフを確認すると前脚に血痕が付いていた。恐らくその個体が侵入者と遭遇し応戦し侵入者に引っかき傷を負わしたようだ。まだ近くにいる可能性があり厳戒態勢となった。血痕を追うと領地の外にまで続き途中で途絶えた。ここからの足取りはつかめておらず隣の男爵領地に逃げたと推測される。
話を聞いていてやはりグリフは凄い!ふとあの銀色のグリフを思い出しエリックさんに聞いてみた
「エリックさん。あの大きい銀色は初めて見ました。ランやカイとまた違う犬種?なんですか?」
「「「銀色!」」」
一斉に全員にこっちを見たからびっくりした。皆さん驚愕の表情をしている何で?
話を聞くと銀色はどうやらグリフの長らしく、普段どこにいるか分からず実際目にした者は少なく激レアらしい。またランやカイの様に人間慣れしていなくて歴代の侯爵家当主も見た事が無い
「ハルカ!詳しい話を聞かせてくれ!」
「あっはぃ…」
興奮気味のエリックさんに引きながら銀色をみた時の話をした。皆さん興味津々でブライスさんなんてさっきまでは侯爵様の後ろに控えていたのに、今は私の真横で身を乗り出して聞いている。
どうやらかなりの銀色は凄い存在の様だ。元の世界で言うところのツチノコやイエティや人魚の様なモノかもしれない。
銀色さ左羽を広げて他のグリフが一斉に左に飛んで行った時の話をした。それまで興奮し無造作に飛んでいたグリフが急に統率のとれた陣形で西の方へ飛んでいき、エリックさんをはじめ騎士団員も呆気に取られたそうだ。
この統率が銀色の指示だと分かるとエリックさんは興奮は最高潮を迎えた。その興奮は私に向いてきて抱き付かれた!
「ハルカ!凄い発見だよ!基本群れず個々の意思で行動していると考えられていた。過去にも数回統率のとれた行動をとった事があったが、その理由が分からず偶然だと認識されて来た。しかし今回ハルカの目撃証言により長である銀色が率いていた事が判明した。ありがとう!生体解明に1歩すすんだよ!」
「どういたしまして?」
侯爵様もブライスさんも凄いテンションだ。その中で一人眉間の皺を深めて不機嫌なアレックスさん。
押し黙っているのが不気味で嫌な予感がして来た。
「春香。俺は危険だから窓から離れた大人しくしている様に言ってあったよな!」
「…はい」
「ではなぜ外の様子をそんなに詳しく知っているんだ⁈俺に分かる様に説明してもらおうか!」
あ…そう言われれば窓に近づくなと言われていた。思いっきり破っている。嫌な汗が背中を伝う。目の前のアレックスさんは魔王ばりに怖い。
小さい子が居たら確実に号泣のレベルだ。私も泣きた!抱きしめられているエリックさんの胸元を思わず掴んだ。異変に気付いたエリックさんが
「兄貴!そんな怖い顔したらハルカが怖がって何も言えないだろう!可哀そうに震えているよ。ハルカ大丈夫俺が守ってやるから」
エリックさんが更に強く抱きしめる。この行動に比例してアレックスさんの表情はもっと怖くなる。
誰か助けて!!
「2人共やめんか!」
侯爵様の鶴の一声で睨み合いは取りあえず終わったが険悪な雰囲気は続いている。エリックさんからしたら私の行動で新たな発見があった、が!しかしアレックスさんからしたら危険だからやめろと言ってあったのに私が約束を破ったのだ。どう考えても私が悪い。アレックスさんに謝ろうとして立とうとしたが、エリックさんががっちりホールドして離してくれない。
「父上、ハルカが疲れたようなので部屋に送ってきます。ブライスと兄上から報告がまだおありでしょう。私はハルカを送った後グリフの様子を見てきます」
アレックスさんが止めるのも無視してエリックさんは私を抱き抱えズンズン歩いて行く。
「あの!エリックさん!疲れてませんから下ろして下さい!」
「だめだめ!さっきまで兄貴に睨まれ震えていたじゃん!サロンで甘い物でも食べて落ち着こう!」
「下ろして!私アレックスさんに謝らないと!」
気が付くとサロンに着いていて2掛けのソファーに座らされエリックさんは隣に座る。
侍女さんがお茶と焼き菓子を出してくれた。
お茶をしている場合ではない、アレックスさんのところに戻らないと!
「あので!ふんご!」
フィナンシェを口を開け瞬間掘り込まれた。モゴモゴしてる間にエリックさんは楽しそうに私の腰に腕を回して来た。
子供が宝物を見せびらかす様に楽しげにグリフの話をします。その顔は邪な感情はない様で可愛らしくかんじる。一頻り話したら満足したようで、断ってもまた抱っこされた。もぅ反抗する元気も無くなすがままされるがままだ。
部屋前に来るとアレックスさんが待っていた。
もぉ!この気まずさ今日何回目なんだ!
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