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(新)父母誕生です
今気付いたけど絶倫侯爵も奥様と踊っていて視線を送ってくる。
レイモンド様がその視線が私に向かない様にターンをし躱してくれている。
せっかく楽しくレイモンド様と踊っているのに、お邪魔虫だなぁ!絶倫侯爵は!
「レイモンド様!私は大丈夫です。だから楽しく踊りましょ!」
「春香…そうだね。今は春香とのダンスを楽しもう」
レイモンド様だけを見て踊る。レイモンド様はいつも慈愛に満ちた視線を送ってくれて安心する。本当のお父さんみたい。
「レイモンド様。”お父さん”って呼んでいいですか⁈」
レイモンド様は一瞬目を見開き直ぐに目尻下げて微笑み
「勿論だ。やっと呼んでくれたね!アビーも”母”と呼んでやってくれ」
「はい!」
すっかり絶倫侯爵を忘れ楽しく踊った。曲か終わりレイモンド様と向かい合い礼をし控席に戻ろうとしたら絶倫侯爵に呼び止められた。
「素晴らしいダンスでした。父と娘の様で微笑ましかったですぞ。私も春香嬢のような娘が欲しいものです」
レイモンド様は相手にせず会釈だけして立ち去ろうとしたら絶倫侯爵が意味の分からない事を言って去っていった。意味が分からずレイモンド様を見上げたら険しい表情。
また余計な事を言ったのか絶倫侯爵!
控席に戻るとレイモンド様はミハイルさんとジョシュさんに
「春香の側を離れるな!また他の者も近付けさすな。化粧室は必ずアビーと行くように。分かったか春香」
「あっ!はい!」
そう言い残し宰相様のところに足早に行ってしまった。残されは私たちは意味が分からず唖然とする
「春香ちゃん何かあったの?」
「私にもよく分かりませんがバーミリオン侯爵様がお父さんに”ヴェルディアの王”とか”乙女が”とか言っていました」
アビー様はグラスを手にしたまま固まり厳しい表情をする。嫌な予感がして来た。
それより”ヴェルディアの王”って誰?
“ヴェルディアの王”はアビー様は教えてくれなかった。きっとタイミングが来たら教えてくれるだろう。
控席で休憩していたら貴族男性が代わる代わるダンスを申し込みに来ている。全てミハイルさんとジョシュさんが断ってくれ、母親らしき婦人が代わりに申し込みに来た時はびっくりした。それに対してはアビー様が断ってくれる。今私絶賛過保護中です。
徐にアビー様が
「さっき内容が衝撃的で流してしまったけど、春香ちゃんレイモンドの事”お父さん”って言ってなかった?」
「あ…はい。レイモンド様がダンス中バーミリオン侯爵の視線から守って下さって、何かお父さんみたいで…その…呼ぶ許可を頂いて」
「まぁ!レイモンド喜んだでしょ!私も嬉しいわ」
「それで…もしお嫌で無ければ、アビー様…”お母さん”とお呼びしていいですか⁈」
「うっげ!」苦しい位にアビー様に抱きつかれた!
「嬉しいわ!やっと母と呼んでくれるのね!欲を言えばレイモンドより先に呼ばれたかったわ」
アビー様はとっても優しい匂いがして亡くなった母を思い出す。アビー様の抱擁にほっこりしていたら
「春香ちゃん。休憩出来たかぃ?まだ俺と踊っていないよ!母上!春香ちゃんを解放してください」
「仕方ないわね。春香ちゃんは華奢たから優しくエスコートなさい」
「心得ております!さぁ春香嬢お手をどうぞ!」
「はい!よろしくお願いします」
ジョシュさんの手を取りフロアーに向かう。ジョシュさんはとの会話は楽しいし、ダンスのエスコートも上手でステップが軽く羽が生えたようだ。
機嫌良く踊っていたら急にジョシュさんがターンをした。驚いてジョシュさんを見上げたら嫌そうな顔をして舌打ちした。
後ろをチラ見したら後方がバーミリオン侯爵家のダニエルさんが向かって来ている。もうすぐ曲が終わる。次のダンスを申し込むつもりらしい。
「うっわ…嫌だ」
思わず本音が出る。ジョシュさんの表情は厳しいままでこの後どうやって断ろうかと悩んでいた。
「ふっ」
「へ?」
ジョシュさんが表情を緩めた。なんで?
「春香嬢。次は私と踊っていただけますか?」
えっ!今の声は…
振り返るとアレックスさんが手を差し伸べていて、すぐ後ろに苦々しい顔をしたダニエルさんがいる。
一応受けていいかミハイルさんを見て許可を得る。
ミハイルさんは頷いてくれた。すると目の前のアレックスさんが小声で”殿下にも”と促す。
ローランド殿下に視線を送ると頷いてくれた。
「アレックス様。喜んで」
アレックスさんの手に自分の手を重ねる。
曲がかわりダニエルさんはフロアーの外にでる。
ホッとため息を吐き改めてアレックスさんを見たら、アレックスさんは繋いだ私の手を見ている。
「何か?」
「女の手はこんなにも小さく柔らかいのか…加減を間違うと折ってしまいそうだ…」
「折らないで下さいね!」
「だっ!大丈夫そんな事はしない」
踊り出して暫くするとアレックスさんが唐突に話しだす。
「中々2人になる事がないから、今話しておく」
「はい」
アレックスさんの話は神テクルスの啓示についてだ。見た夢から推測した半年は見事当たっていた。
私が”織田春香”のまま帰れる期限は半年。つまりあと4ヶ月程だ。半年以内ならテクルスの神力でこちらに来る直前に帰してくれる。
6ヶ月を超えると肉体は時空を渡れなくなり、魂のみ元の世界に帰る。体がない私の魂は新しい肉体に入り生まれ直す事になる。つまり完全に”織田春香”は死んでしまう。
「じゃー帰りたい時は後4ヶ月以内ならアレックスさんが帰してくれるの?」
「俺はお前の本心を受けテクルスに繋ぐ橋渡しの役割になる。実際帰す手助をする者は他にいるらしい」
「アレックスさんその人を知っているの?」
「否…知らないのだ」
私が心から帰りたいと望んだ時に神テクルスからアレックスさんに啓示にが降りるらしい。迷い人を元の世界に帰す人を”送り人”といい、初めから分かっていると迷い人を帰したく無い者が邪魔をする恐れが有るので、直前まで明かされないそうだ。
「この話は誰にも言っていない。知っているのはお前と俺だけだ。だから周りを気にせずにお前は心のままいればいいし望めば俺が叶える。誰にも邪魔はさせないから安心しろ」
「分かった。あの…ありがとう」
アレックスさんは横を向いてしまった。素直にお礼言ったのに…あれ?耳が赤い?
「あまり女性慣れしていないから、どうしていいか分からん。あまり揶揄うな」
厳つい顔しているのに可愛とこあんじゃん。
アレックスさんの意外な一面を見た気がした。
「春香!」
ダンスの最中なのに誰か呼んでいる。
踊っているの一組が近づいて来る誰?よく見るとレイモンド様とアビー様ですれ違った様に
「この曲が終わったらそのまま出口に行き、出口に控えているミハイルと殿下の控室に行きなさい!」
「えっ!なんて?」
またレイモンド様は離れたけど、また直ぐ近づいて
「アレックス殿。春香を頼む」
「閣下お任せを」
何か緊急事態の様だ。不安顔の私にアレックスさんが
「俺に任せておけ。お前を危険な目には合わせない」
「ありがとう?」
「なぜ疑問文なんだ?」
「いや…なんとなく」
実は照れ隠しです。喪女には刺激のキツイお言葉でした。それにしてもレイモンド様とアビー様のダンス迫力があったなぁ…
お読みいただきありがとうございます。
入力中の文章がぶっ飛び打ち直す羽目に。
でも入力し直して新しい内容を思い付き怪我の功名かも




