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協力要請

私を見るケッツの表情に気味の悪さが覗いている。


小さな体をした、片手で足りるだろう年数しか生きていないはずの子供が、訳知り顔で十数年前の事情を語るのだ。

気味が悪いのは当然か。


拒絶せずに話を聞いてくれるだけ有難い。







「私がヴェータを外に出したいのは、単に季節を安定させたいから。国が駄目になるのを食い止めたいからだよ。ヴェータとは知り合いじゃないし、会ったこともない」




一方的に知り尽くしてますけどね。

作者ですから。

ええ。




「だが王が勅命を出して逮捕した人物だ。そうそう解放はさせられない」


「王がなんで逮捕させたかわかってる?単なる偏見だよ。ヴェータが悪いことをしたわけじゃない。ヴェータにはなんも罪はない。ヴェータを捕まえてたら国は悪くなる一方なのに。何か良いことある?」




私の発言に押されかけたが、ケッツは一呼吸おいて持ち直す。




「その真偽は測りかねるから一旦置いておく。ミコトはどうしてそう言い切れるんだ」


「神から聞いたの」


「は?」




眉間に皺を寄せてすごい顔をしてるぞケッツよ。




「この国が滅びないように神が私を遣わしたの。だからある程度事情は把握してるの。過去も未来も」





嘘ではない。

嘘では。


いや、むしろ私が神だろ?


この世界の創造神。

アイアムゴッド。





「人間でも半人族でも小人族でもない見た目をしてるでしょ?神が私に特別な容姿をくれたの。そのせいで危ない目にはあったけど。この容姿が私が特別である証拠よ」











この世界の人間は、暗い髪色に鮮やかな目の色をしている。



多い髪色はネイビー、ボルドー、バーガンディ、ダークグレー、ダークブルーなど。

一見黒く見えるけれど、陽に透かすと、人によって赤や青や様々な色合いを見せる髪色。


一方の瞳は、高価な宝石のように彩度が高い。

何も混ぜずに原色で塗ったような鮮やかな瞳。




そんな人たちの中で、私は突飛に映ることだろう。


白にも似た明るい黄金の髪。

確認できていないけど、左右で違うはずの瞳の色。


この世界にオッドアイは存在しないのだ。

加えて黄色人種の肌が基本の世界に、白人のような色素の薄い肌色が混じる、



人間の見た目なのに、どうあがいても馴染めない色。










「産まれ落ちたわけじゃないから、親も育った家も何もない。さっき会った兵士用の道で目が覚めたの」


「わからないと答えたのはそういうわけか」




信じてくれたんだろうか。

納得した風の言い方だ。




「その外見年齢にそぐわない話し方と思考は?」


「えーっとね、…魂は大人なの。精神世界があるでしょ。そこを漂ってた私という魂を、この姿でここに出現させた」


「神はなぜそのようなことを?」


「知らないよ。神様の考えることなんて」





なんてね。

外見はただの趣味です。


だって可愛いじゃん。

小さい女の子。


薄い色素は透明感があって儚げで心ときめくし、オッドアイは厨二患者の永遠の憧れでしょ。

え、違う?





「その見た目以外に証拠はあげられるか?」


「見た目以外に?うーん」




城の内情を話すのは兵士にとって心証悪いだろうし、かといってケッツからは遠い話題を選んでも話が通じないよな。

何がいいかな。


少し考えて口を開く。





「隊長が…、重度の馬好きとか?」




馬というのは兵士にとってとても重要な道具だ。


戦場へ駆けつけるにも、情報を走らせるにも、車や電車のないこの世界では馬が不可欠。

馬の健康を保ち、良い状態に整えておくことも兵士の仕事だ。



だけど兵士自身が常に馬の様子を見ることは不可能なため、違う誰かが世話をする必要がある。

城には城の、屋敷にはその屋敷の厩番がいるものだ。



だけど隊長は、屋敷の厩番がすでにいるにも関わらず、自分の馬専用の厩番を雇っている。


馬の体調管理を行い、具合が悪い場合には獣医や装蹄師など適宜手配する厩番。

半端な仕事をされてはたまらないと、隊長は相当の給料を出している。







「自分の馬専用の厩番を雇って、病気や蹄の手入れも決まった人にしか頼まない。毛並みを楽しむためだけの馬も飼ってるよね?」




話してからふと気づく。


隊長の馬好きについてケッツがそこまで知らない場合もあるじゃん!

無駄なこと話した?

意味なかった?


私的な交流が無いと、個人的に所有している馬の話なんて知らないだろう。



様子を窺おうとケッツの顔を見る。

私の話が理解できない、という顔ではなかった。


良かった。

隊長の馬好き事情は知ってるみたいだ。





「隊長が個人で雇っている厩番の名前はわかるか?」


「うん。ヴァケアって名前」





ヴァケアは馬だけでなく動物全般が好きな女性だ。

隊長が好みの馬を求め馬飼いの家を訪ねて、腕の良さから個人契約を交わすに至った人。


下の身分の人には見下した態度を取る兵士や貴族も多い中、隊長は実力主義とも言える。



静かに息を吐くケッツ。





「…わかった。信じがたいが、信じよう」






そう言いながらも、眉間に皺を寄せて不服そうな顔だ。

ケッツは現実主義っぽいもんな。完全に信じるのは難しいか。


まあケッツの心情など知ったことではない。

大事なのはこれからだ。





「それでね、ヴェータを外に出す手伝いをしてほしいの」


「国を救うためか」


「そう!」


「どうするつもりだ」


「リーレィにいるツフマって人に会いに行く」





ツフマは故あって影からヴェータを支えていた人だ。

寄宿学校時代や、交信者として働き始めてからも、ヴェータにばれないようひっそりと手助けをしている。


私の脳内プロットではツフマがヴェータを救うキーパーソンなのだ。




意気込んで言う私に、ケッツが爆弾を落とす。




「ツフマならもう捕らえられてると思うぞ」


「え!?」


「ツフマを捕らえにリーレィに向かう途中でミコトと会ったんだ」





そういえば厨房でもそんな話を聞いた。

一個小隊がリーレィに向かったって。


ツフマを捕らえる目的で行ってたのか。





「王から命令が出てる。ヴェータと関わりのある人物を片っ端から捕らえろと」






それはわかる。

何人かが牢に捕らえられたところまで既に書いた。


ヴェータと寄宿学校で仲良くなった同級生。

血の繋がっていないヴェータの育て親。



でもまさかツフマまで捕まってるなんて。





ちょっと前に頭をよぎった考えが真実味を増す。

というか、きっとそうだ。

私が執筆して更新した段階よりも、この世界の時間は進んでいる。


しかも悪い方向に。



もー!

神様説明不足すぎ!

ここが現実なのか夢なのか、疑ってる間にどんどん話が進んでるじゃん!




この世界を導くために神様が私を呼んだということは、何もしなかったら脳内プロットとはどんどん違う方向に行ってしまうのだろう。

何とかしないといけない。

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