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ヴェータと合流

小窓から戻ってきたラピスィを受け止めて、場所を移動した。

抜け道の出口でヴェータを待つのだ。




小高い丘に建っている城。

地面はなだらかに繋がっているけれど、一部そうではない箇所がある。


3mほどの落差がある、浅い崖のようになっている箇所。

崖の下はすぐ森に繋がるため、人はほぼ来ない。

この崖に扉がついており、抜け道と繋がっているのだ。



ヴェータが出てくるまでに30分はかかるだろう。

木に寄りかかって腰を下ろし、ラピスィに話しかける。




「ヴェータの様子はどうだった?すんなり脱出しようって乗ってくれた?」


「…ううん。……すごい、落ち込んでた。国なんかどうでもいい、亡んじゃえばいいって」





ラピスィも近くの木に寄りかかる。



現実世界では今の状況まで書けなかったから、ヴェータの心情をそこまで理解できてないんだけど、そうか、そこまで苦しんでたか。


私は書いてみてようやくキャラの心情を深く理解できるタイプの創作者なのだ。

自分を責めて苦しんではいるだろうけど、国の滅亡を望むほどとは考えていなかった。


あれか。

悪い方向に転がりやすいこの世界の影響を、ヴェータも受けているのかもしれない。






「でもね、ヴェータが出たら未来は変わるんだよって、そう言ったら、泣き止んでくれた」




達成感からか、恩人が悲しみから抜け出してくれた嬉しさからか、はにかむラピスィ。

ラピスィが嬉しそうで私も嬉しい。


にへーっと笑い合っていると、ケッツが鋭く言葉を投げてくる。





「その国に絶望してる奴が国を救わなきゃいけないんだろ。動かせるのか?」


「いけるいける」


たぶん。





軽く答える私にケッツは胡乱な目だ。


そんな疑わなくてもいいじゃなーい。

創造神たる私を信じなさーい。







“未来は変わる”




ラピスィのその言葉に動かされて脱獄を決意したのだとしたら、気持ちは前向きになってきているはず。

絶望の幅は大きいようだけど、元のシナリオに戻りつつある。


いい流れに変わってきたんじゃない?


一先ずヴェータに春を呼んでもらえれば、息を吹き返せる。

その後は、自分のせいでとヴェータが責めていた、捕まっていた人たちを助けるのだ。

取り急ぎシナリオに必要な人を、だけど。



春の儀式さえ済ませられれば、その後はとんとん拍子に進めるはずである。


救いたい人たちを救える流れだ。

反発するわけがない。







ぽつぽつと言葉を交わしながらヴェータを待つ。

雲に長くかくれんぼしていた月が顔を出したかと思えば、抜け道の扉が外へと動いた。



長らく開かれていなくて固まっていたのか、始めは重そうに。

少しして、ストッパーが外れたかのように、勢いづいて開く。


その開いた扉から半ばこけるように出てくる女性の姿。

ヴェータだ。







ラピスィが駆け足でヴェータに近づく。



「…ヴェータ、無事に出てこれて、良かった」





急に月明かりに照らされたからか、軽くぼうっとしているように見えたヴェータ。

ラピスィに話しかけられてハッと反応しだす。




「…っ、ありがとうございます」





さてさて、ほっと安心している場合でも、和やかに会話している場合でもない。

ヴェータが牢からいなくなったことはすぐに露見するし、急いで次の段階へ進まなきゃならない。




「ヴェータ、初めまして。私はミコトっていいます。後ろのはケッツ。牢から出てすぐで悪いんだけど、春を呼んでほしいんだ。できるかな」




仕切り始めたのは、集まっている中で一番幼い私。

怪訝な目で見られたり、怪しまれたり、とにかくなんかマイナスな態度を取られると予想していたのだけど。




「…っは、はい」






なんだか畏まられている様子。

おや?



すっと両膝を地面につき、ヴェータはまるで祈るように私を見る。




「あなたが、あなた様が、神の遣いなのですね。お導きいただき、感謝いたします」




なんてこった。


勢いよくラピスィの顔を見るも、私の慌てようの意味が分からないようで首を傾げられた。




くああああ!

やめてくれ!

確かに私は創造神だけれどもそんな大層なもんじゃないんだ。

というかそもそもヴェータが苦しむ状況を創り出したのは私だ。


失意のどん底に落ちたところから、幸せを掴む道筋を書きたいと思って作り出したのだ。

全ての元凶は私だ。

そんな無垢な瞳で見ないでくれ良心が痛む。




苦悩する私をラピスィとヴェータがどうしたのかと見つめる。

その顔は純真そのものでいたたまれなくてたまらない。




「時間ないんだろ。さっさと移動すんぞ神の遣い様」




意地の悪いケッツはにやにやと口を緩ませながら言う。

その言いようは、明らかに狼狽える私を楽しんでいた。


こんにゃろう。




ラピスィの前で認めてしまった手前、神の遣いではないと否定はできないし、かといって長々と、大層な存在ではないと釈明する時間もなかった。

諦めて事を進めようと決める。




「ヴェータ、そんな畏まらないでほしいな。膝をつかないで、立って、普通に接してほしい。とりあえず移動しよう。一緒に来てくれる?」




ヴェータの手を取ってそう言う。




「っは、はい」




が、すぐには態度を変えてくれなさそうだ。


こんな小さなただの女の子に、畏まることなんてないのよ。本当に。

なんの力もありゃしないんだから。




会う前に“神の遣い”と耳に入れてしまった先入観からか、お偉いさんやそれこそ神を前にしているかのような態度だ。

距離が感じられて私はちょっと悲しいぞ。








季節の儀式を行うための礼拝堂は、城のすぐ近くに建てられている。

大昔には季節の儀式を行う重要性が理解されていて、その建物も儀式を行う人物も保護すべきという観点から、礼拝堂の後から城が近くに建てられたのだ。


礼拝堂に何かあれば城の兵士がすぐに駆け付ける。

仮に礼拝堂が駄目になった場合には城へ避難できるし、逆も然りの関係だったのだ。



今じゃ考えられないけど。





神が軽んじられるようになって久しい近年では、礼拝堂の存在する意義が分からないと、取り壊される危険性さえあった。

ヴェータが登場してそれは阻止されたのだけど、もしそうなってたら、この国は救いようのない事態に陥ってただろう。

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