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時を渡る邪鬼  作者: 齧られたメロン
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闇の住人

ーー俺は空いた腹を満たすためコンビニへと向かっていた。ただ、近場のコンビニは500メートルほど距離があり歩いて行くと最低でも10分ほどの時間がかかる。いつもなら自転車を使うのだが先日なぜかパンクした状態になっていたため渋々徒歩で向かう羽目になってしまった。

 「たくッ、いまどき自転車パンクさせる悪戯なんて初めて聞いたぞ。あぁ……ついてねぇ」


 愚痴を溢しながら夜道を歩く。季節はまだ秋なのに氷点下並みの寒さだ。厚着で着て本当に良かったと安堵していた。その時ふと、コンクリートの壁に目を向けた。そこには先ほど見た丸い傷が付けられていた。ただ、一つだけ異なる点があった。

「でけぇ……猫が出てきた傷の2倍……いや、3倍はあるな。こんなでっかい傷どうやったらできるんだよ……」


 あまりの大きさに様々な妄想を膨らませていると冷たい風が顔を打ち自分を仮想の世界から引きずり出した。

「あぁ寒ぃ、早くコンビニいこ」


 俺は寒さで身を震わせながらコンビニへと足早に向かった。


 ……だれもいない街道は風の威力を強めながら時間を刻一刻と過ごしていた……一人の酔っぱらいが千鳥足でふらついていた。

 「……許さねぇぞぉ、くそ上司がぁ……責任を押し付けるだけ押しつけてこっちの手柄は横取りしやがるぅ‥あんな会社いつか辞めてやるぅ‥いいや明日からでも辞めてやるぅ‥

へへ、辞表書かないとなぁ……」

 

 酔っぱらいが調子よく歩いているとナニかにつまずきその場で転んだ。黒の塊で異臭を放つナニかに……

 「イってえなぁ、誰だよこんなとこにごみ置きやがってぇ……

 酔っぱらいはその黒い塊をまじまじと眺めた。黒……否赤だ。赤い液体が付着している。回転させてみた、

 「え……顔……なん……え?」

 

 状況がうまく呑み込めず思わず腑抜けた声が出た。人型の頭‥否人間の頭部である。しかもそれは両方に目が存在していなかった。料理に例えるのなら ~目玉なしの頭・血肉を添えて~といったところだろう。感傷に浸っていると前方の暗闇から低いうめき声が聞こえた。

 「ーーヤバイ……何かわからんがとにかくこの場から逃げた方がいいな……いや逃げよう! 」

 

 酔っぱらいは酔いが覚めてただの男になった。男は全速力でその場から立ち去ろうとしてた。ただ、不可解なことにどれだけ走っても風景が変わらない。常に同じ場所を走っているようだった。

 「はぁ……はぁ……なんだこれどんだけ走っても場所が変わんないぞ、ほんとに走ってんのか……? 」

 あまりにも変化がないので走っているのかどうかも疑わしい。もしかしたら一歩も動いていないのではないだろうか。

 「はっ‥!はっ‥!こんだけ走れば追って来れないだろ……はぁ」

 

 何とか引き離した。ただナニを引き離したのかはわからない。それでもなにか生命を脅かすようなナニかに違いないと思い足早にその場を去った。


 「……そんなシチュエーションがありゃあ……よかったなあ……」

 

 周りにはバラバラとなった自分の四肢が転げ落ちていた。

 何もかもが妄想だった。俺は今目の前にいる怪物に殺されそうになっている。その場から去ろうと背中を見せた瞬間に四肢がはじけ飛んでた。怪物から咀嚼音が聞こえる……

 ああ、俺食べられてんのか。全身から血が抜け体の感覚なんてものがなくなっていた。

 「あぁ、人生最後に食べたのが焼き鳥とビールかよ……ろくな奴じゃ……ねぇ‥な……」

 

 体を貪られながら男性はゆっくりと死んでいった。

       

     -一般男性ー      死亡



 

人間は性欲が強いと長生きしやすい傾向にある。

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