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トラックに轢かれたら、なんか女神と名乗る美人の女がそこにいた件

作者: akmmdk

「残念、あなたは死にました」

目の前にいた可愛い感じの女は開口一番、物騒な言葉を放つ。

俺が死んだ。という事実。

さっきまで、俺は外にいた。ウキウキ気分で。

高二の最後、部活で一緒だった気になる女の子に、どうにかして告白し、

それで、なんとかうまくいった感じの状態までこぎ着け、なんというか、数回デートを楽しめた。

そして、今日は、彼女の家にお呼ばれしていて、彼女は今日は一人という。

なんというか、この日、一線を越えるのではないか?そんな期待をしていたのだ。

しかし、気がついたら俺は見知らぬ部屋で椅子に座っていた。

「あなたは、トラックに轢かれて、死んだんです。即死です」

「ええ……」

困惑する。つまり、今流行り(?)の異世界転生の冒頭なのだ。

「つまりあんたは、女神で、異世界に転生させるために俺を呼び寄せたわけだ」

「ええ、日本人は話が早くて助かるわ、

あなたは異世界に行って、魔王討伐にいかなくてはならないの」

「そんなゲームみたいな展開が本当になるのか疑問だけどな」

「いいから聞いて」


女神は、これから行く異世界のことについて説明し始めた。


「異世界の魔王は非常に強力で、どれだけ勇者を生み出しても

ことごとく、みんな死んでいったわ、そこで育った人間は皆、誰もあの世界に再び行きたがらない。

だから、異世界転生で、神々は魔王討伐という、手段を用いることになったのよ」

「なぜ、異世界の人間なんだ……、神がやればいいだろ」

「神は世界に直接干渉してはいけないって奴なのよ」

「民事不介入とかそういう感じか」

「まあ、そういう理解でいいわ、とにかく、転生特典つけて復活させるから

俺TSUEEEEEEで無双すれば、地位も名誉も上がり放題、彼女なんて作り放題、

男はハーレムが好きなんでしょ?

だから、あなた、異世界に行きなさい」


この女は、必死にまくし立てる。

異世界に行くように、何か、裏があるのだろうか。

世界のバランスとかなんかあって、そこに魂を何人ぶち込めばマージン見たいのがもらえる的な。

それか、異世界召喚は悪魔でも現地の人間がやるが、

その力を与えるのは目の前の神であり、そこから信仰ポイントが上がって、神自身も特典見たいのが手に入れられる的な。


だが、無双チートなら序盤は非常に楽だ。

敵を楽に倒せるから小金も貯まるし、名声も信用も上げやすい。


受付嬢のおねーさんも、ギルドで偶然であった初心者のパートナーも、魔法使いの娘も、僧侶の娘も

令嬢の剣士も、豪快な女戦士も、偶然であったお城の姫だって、やりようになればワンチャンある……っ!


「あ、でも、私を連れて行くのは駄目よ。

世界不介入っていうのもあるけど、一回それで問題になった先輩もいるし何より、ネタがかぶってしまうわ」

目の前の女神は何か言っている。


魔王を倒せと言う、だが、魔王を必ずしも倒す必要はない。

ずるずるやって、続けていけば、自分の優位な状態で物事を進められるようになる。

自分を動かすのに貢ぎ物を要求することも出来るのだ。


俺の知ってる転生チートものは、おいしい展開が多い。

だからこそ、俺は答えた。


「お断りだ」


「何でよ!!」

目の前の女神は俺にぶち切れる。

「なんで、こんないい展開なのに、どうして断れるの!!」

「正直言って、そんなうまい展開最後まであるわけないだろ……なんかいろいろ政権闘争や派閥争い見たいのに巻き込まれて

嫌な思いとかめっちゃしそうだし胃に穴開きそう」

そして俺は再び答える。

「第一、魔王を倒したとしても、目の前の脅威がなくなったら自分が脅威に思われる可能性大だし

なんというか、俺の知ってる勇者はいろいろ人間に裏切られて魔王になったぞ」

「いやそういう特殊な事例はいいから…、断ってもあなた、魂が砕かれて消えるだけよ、それでもいいの?」

「構わない、あいつがそこにいないのなら、俺は消えてもいい……」


あいつ、……俺が今付き合ってる彼女のことだ。

俺が死んだことで、彼女は悲しんでくれるだろうか、それはそれでうれしいが……

悲しみ続けて、自分の人生を歩めなくなったら嫌だな……。


「あなたまだ18にもなってないのよ、その上童貞で、

その彼女と一生添い遂げられるとは限らないのに、その彼女だけで、これからの可能性を消すというの!!」

「そんなことをお前に関係ないだろ!」

「大体あの子貧乳じゃない!!性格も面倒くさそうだし!!あっちにはまだ好条件の子がいるのに!!」

「うるせええ!!俺はあいつのすべてを受け入れて選んだんだ!!貧乳だろうが面倒くさかろうが知ったことか!!!」

俺は一呼吸を置いて、冷静に答える。

「第一、俺の魂がこの世界で砕かれて消えたところで何の問題がある、こんな風に不幸な事故で死ぬ奴なんていろいろあるだろ、溺死とか」

女神は面倒くさそうに答えた。

「ええ…、だって、ある程度意識がある方が向こうに行ったとき、

一から育てるより、効率いいというか……、それに魂の資源化は面倒くさいからやりたくないし……」

「そんなこと俺の知ったことじゃない。

それに死んで楽になったんだ。また生き返って苦しんでくれって言うのも残酷じゃないんですかね……」

「あああ、こいつはもおおおおおめんどうくさあああああい」

女神はうなだれて、苦虫をかみながら言葉を出す。

「大体、俺が魔王を倒したところでこっちに戻れるとは限らないしというか戻れないだろ、

魂が、どうこう言ってるのなら、それに仮に戻ったとして、俺の彼女が別の男と歩いてたとする……死にたくなるぞ」

あの幼なじみとか言ってるあいつ、なんかあってより戻してたりとか……

それに大学に上がるだろうし、あいつはなんだかんだ言ってルックスいいから絶対他の男言い寄ってくる。

俺が死んだあとだから、受け入れられるかもしれんし、あいつが幸せになれるならそれでいいが、戻ってきたら、別の男いたとか最悪すぎる……。


「ああ、どうしたらいいのかしら……、資源化にするしかないのかしら」

「ちょっといいかしら」

うなだれてる女神の隣に、新しい女神が現れた。

黒髪ロングのとても美人な女神だった。

白衣装で、清楚って感じだった。

残念ながら慎ましいバストだったが。


「あなた、まだ契約にまでこぎ着けていないの?」

「先輩、聞いてくださいよ、この人、前カノのことが諦められなくて契約してくれないんです」

「そう、……残念ながら諦めて、彼女はあなたには過ぎた存在なのよ」

「確かに俺の手に余るぐらいの重い存在(性格的な意味で、決して体重ではない)だったが、

それでも俺を選んでくれたのは非常にうれしい……と思う」

「でも気の迷いなんじゃないのかしら……、彼女があなたを選んだのは」

「確かに……あり得なくもないかもしれん……」

「なら、一度死んだ身なのなら、再びあっちで死んでも変わりないのではなくて?」

「ちょっと、あっちで死ぬこと前提で話を進めるのやめてくれない?」

「でもこのままこっちにいても資源化で消えるのだし」

目の前の先輩女神はきょとんとした感じで俺を見つめる。

「どうせなら、この子の成果になる形で消えてくれた方が私としても助かるわ」

「それあれだよね、俺に何も得は無いよね」

先輩女神のずいぶんな言い方に俺は突っ込む。

「ええ、正直あなたがどうなろうと私にとって知ったことではないのもの

ただ、この子の成果が上がれば私の評価につながるし、極端なことを言えば、裸一貫で向こうにもっていても構わないわけで」

「…資源化すら許されない訳か……」

「ええ、許さない、あなたが消えることは」

先輩女神は影を落とした表情で俺を見つめる。

「そうか……」

俺は、目の前の女の表情を見たとき、何かを感じた。

それが何かはわからなかったが……


「なら、転生してやる。何でもあっちに持って行けるんだよな」

「ええ、女神自身以外とかなら何でももっていけるわ」

「なら……」



―――――――――

「先輩、やっぱりすごいですね、あんなに面倒な人間を転生させたなんて」

「ええ、まあ、大したことはしていないのだけれど」

「けど、あいつ、持って行ったものが彼女の思い出の写真で良かったんですかね」

「いいんじゃないかしら、それこそ彼の自由なのだし、それに」

「それに……、何です?」

「……なんでもないわ、彼に、どんな形であれ、生きてほしいと思った人間がいたことは確かなことだったのだし」

「あ、つまり、リア充爆発しろって訳ですよね」

「……ええ、そういうことよ」

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