1908年レーニン暗殺
大粛清を号令したレーニン自身が、仲間から粛清される運命にあった。後継者はスターリン、だが穏健派スターリンの目指した国家は社会主義や資本主義の国家ではなかった。
ここはサンクトペテルブルク南方数kmにあるガッチナ。
ここにはサンクトペテルブルク空爆を逃れたガッチナ宮殿がある。
その中庭に別荘「隠遁所」があった。
窮屈な宮廷生活を逃れ、貴族が「田舎」生活を味わう。
そんなアトラクションの為に「わざと」農村風に作ってある。
そこに2人の男が「密談」のために部屋に潜んでいた。
スターリンとトロツキーであった。
2人はある密談の為ここに来ていた。
スターリン「レーニンは社会主義の為に国を磨り潰す気だ」
トロツキー「まさか貴様からそのような言葉が聞けるとはな」
強制的に貧富の差を無くす手段は革命であった。
富める者から奪い、逆らう者は粛清する。
貴族は財産と土地を奪われ、報道の自由も消えた。
国力はまだ低く、軍事力は日露大戦で削がれた為、脆弱である。
革命後の列強の干渉に対抗するために、戦時体制がとられた。
外出は制限され、食料物資は配給制だ。
ロシア正教会の莫大な資産もターゲットになっていた。
宗教弾圧も始まり、聖職者を粛清し、資産は没収された。
ここでやっと人民は「あれ、おかしいな」と気付いた。
貴族から奪うのには「義賊」的要素があった。
金持ちから見れば犯罪者だが、大衆からは支持される存在だ。
だが教会が豪奢で壮麗なのは信者の献金によるものだ。
金銀で飾られた資産は信者が望んで寄付した結果だった。
それを国家が一方的に奪うのは人民から資産を奪うのも同然だ。
これを批判した市民たちも粛清されてしまった。
これがレーニンの「大粛清」の始まりだった。
人民A「何もかも国家が奪っていく!」
人民B「これなら帝政のほうがまだマシだ!」
人民C「それならあるぞ!」
人民たちは昔懐かしい帝国がウラル山脈の彼方に残っているに気付いた。
「新生シベリア帝国」である。
ニコライ二世は穏健になり、専制君主をやめて立憲君主制を敷いていた。
人民たちは昔の方がまだマシと考えるようになっていた。
ウラル山脈を越えて、我も我もと移住が始まった。
山脈と行っても低い荒れ地が続く丘陵地帯がほとんどだ。
越境するのは訳無いことだった。
人口流出がもの凄い勢いで始まった。
これをまたレーニンは厳しく取り締まった。
だがそれはまったくの逆効果だった。
それをスターリンもトロツキーも冷めた目で見ていた。
もうレーニンは誰にも止められない。
スターリン「もう説得も懐柔も効かない」
トロツキー「ここは最後の手段しかなかろう」
スターリンの手は震えていた。
穏健派の彼が「これ」を決断したのはよっぽどの事だった。
スターリン「医者を送る(暗殺)しかないだろう」
トロツキー「ううむ、やむを得まい」
トロツキー「して、その方法は?」
絶対犯人もわからず、確実に効く毒物は?
1億分の1でも殺せる猛毒中の猛毒は?
その時ロッカールームのロッカーの扉が静かに開いた。
謎の男「ふっふっふっ」
日本の間諜、明石元二郎である。
明石「それは放射性物質のα線だよ」
スターリン「おわっ、いつも神出鬼没だなあ」
トロツキー「だれだこいつは」
スターリン「日本の間諜の明石だ」
明石「アバズレーエフとお呼び下さい」
トロツキー「知っとるぞ、我々の資金源だ」
明石「さすがにお目がお高い」
トロツキー「してその放射性物質とは?」
明石「ポロニウム210です」
暗殺には放射性物質ポロニウム210が使われる事となった。
1898年マリー・キュリー(ポーランド人)が発見した。
まだ合成は不可能である。
1トンの原石から1gも採れないのだ。
ポロニウム210はウランの約100億倍の毒性を持つ。
化学的毒性ではなくα線による放射性毒性だ。
成人男性(70kg)に対して610n(10億分の1)gで亜急性の死に至る。
これをドアノブ、愛読書、愛用のペンにたっぷり塗り込んだ。
レーニンはその日も執務室のドアノブを押して部屋に入った。
事務机で愛読書を読み、愛用のペンでラインを引いた。
レーニン「うぐうっ」
突然の嘔吐と下痢。
レーニン「Sushiに当たったようだ」
夕食にSushiを食べて当たったと最初は思った。
だが腹痛はひどくなり、嘔吐は止まらない
レーニン「ダ、ダレカ、イ・イシャヲ・・・・・・」
すぐ信用のおける下部消化器外科、胃腸科の医師団が診断に当たった。
最初の診断はClostridium difficile(偽膜性)腸炎だった。
便から菌を培養し、トキシン毒素を検出する。
だが、毒素が検出できない!
輸液療法で脱水状態を改善する。
だが症状は悪化するばかりだ。
医師A「数日後に血小板が減少している」
医師B「皮下出血やあざが現れている」
医師C「これは・・・・・・毒物によるものだぞ!」
医師A「好中球減少が認められる」
医師B「殺虫剤の食事への混入ではないのか」
医師C「骨髄抑制・脱毛・・・・・・毒物は一体何なのだ?」
重症の粘膜炎の発症・・・・・・、だが毒物の特定が出来ない。
どんな治療にも反応しない感染症の発症。
組織が全てダメになっていく。
とうとう多臓器不全に陥ってしまった。
腎臓・肝臓・血液系・呼吸器・消化器・心血管系・神経系。
そのすべてに機能不全が現れていた。
レーニンは意識不明に陥った。
そして入滅・・・・・・。
レーニンの時代は終わった。
後継者はヨシフ・スターリン。
スターリン+カーメネフ+ジノヴィエフの「3人組」体制だ。
一致団結して政敵トロツキーと対立した。
トロツキー「このオレと反目するのか?かつての盟友だったオレと?」
スターリン「こんな独裁が社会主義革命であるものか」
スターリン「結局は個人崇拝と独裁ではないか?」
「集団指導体制は何処に行ってしまったのか?」
「いったい濡れ衣で何人の中央委員を処刑したのか?」
スターリン「もうけっこうだ!」
レーニンの「大粛清」は経済の停滞と衰退をもたらした。
強制的な農業集産化は自営農民を消滅させた。
スターリン「もうこりごりだ!」
国家管理下にある市場は硬直して、技術革新が出来なくなっていた。
なにより革新のための人的資源を粛清してしまっていたのだ。
スターリン「もうたくさんだ!」
トロツキー「うまくやればできる」
スターリン「いや、できない、もうムリなんだよ」
スターリン「オレたちは絶対王制の下で虐げられ苦しんでいた」
トロツキー「その通りだ」
スターリン「思っても口に出せず、嘘をついて身を守るしかなかった」
トロツキー「その通りだ」
スターリン「嘘を付き罪を逃れ、騙すことが生活の手段となった」
トロツキー「その通りだ」
スターリン「騙して嘘をつく事が日常になり、習慣となった」
「誠実も愛国心も消え、我々はそれを打破しようとしたんだよ」
スターリン「だがレーニンの大粛清と、絶対王制のどこが違うんだ」
「オレたちが独裁者になっただけじゃないか」
トロツキー「全体社会主義も万能の神の定義じゃない」
「革命の過程は暴力なしには成し得ないものなのだ」
スターリン「じゃあ、社会主義革命そのものが間違っているのだ」
トロツキー「スターリン!」
スターリン「資本主義は違う、だが社会主義にも寄らない」
「中道主義とでも言おうか、これが一番難しいがオレは中道を行く」
スターリンは急にトロツキーに向かい合った。
この場で粛清か?
トロツキーは身を固くした。
スターリン「キミとは政敵になって争いたくない、トロツキー」
「理想の地があるなら行くがいい、中米メキシコとかな」
トロツキー「中米?メキシコ?」
スターリン「官僚主義が横暴を振るい、庶民が苦しんでるそうだ」
トロツキーはこうしてメキシコに旅立った。
向こうでは革命家として名を馳せたらしい。
スターリンはレーニンの個人崇拝を批判した。
大粛清の犠牲者の名誉回復にも努めた。
粉砕された文化の自由化を慎重に行った。
だが集団的指導体制は残した。
ジノヴィエフ「かつては告発したり、忠誠を誓ったり権力抗争に明け暮れていた」
「誰も工場労働者や、農村の農民の事を考えたりしなかった」
カーメネフ「雄弁で宣伝・交渉能力があれば、議会で優位に立てた」
「いつの間にか、執行委員会と組織局員の事しか頭になかった」
スターリン「わたし一代ではやらない、すこしずつだ」
「平穏な政治とは、指導者が見えないことなのだ」
こうしてロシアは二つの国が両立する事となった。
1)エカテリンブルグを帝都とする新生シベリア帝国。
2)モスクワを首都とするロシア社会主義連邦ソビエト共和国。
ニコライ二世は日本の支援の下で新生シベリア帝国を勃興出来た。
敗戦国として日本と友好国となった。
ニコライ二世が暗殺される事はなかった。
それを目論んだレーニン自身が暗殺されてしまったからだ。
スターリンは日本の明石元二郎の支援の下で革命家として活動出来た。
日本の援助で革命と独立を勝ち取る事が出来た。
そのどちらにも日本の息が掛かっていた。
日本、ロシア社会主義連邦ソビエト共和国、新生シベリア帝国。
世界はその強大な帝国の出現に仰天した。
大日本-ロシア-シベリアの3つの大国が合体した帝国。
大日露帝国の出現である。
次回は1908年大日露帝国です。




