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日露大戦  作者: 登録情報はありません
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1906年ニコライ二世誘拐

帝国の体制を崩壊させる最後の葬送曲、それが皇帝誘拐だ。ニコライ二世を日本の松山の捕虜収容所に連行する。

謎の男「ふっふっふっ」

突然、皇帝は自分専用待避壕に自分一人ではない事に気付いた。


謎の男はロッカールームの筐体の中からゆっくりとその姿を現した。

ニコライ二世「誰だ!」「きさまは何者だ!」


謎の男「私はアバズレーエフと申す者」

ニコライ二世「きさま、明石元二郎か!」


明石「ご存じでしたか、恐悦至極に存じます。」

ニコライ二世「おのれ!黄色い猿の分際でよくもぬけぬけと!」

ニコライ二世はこの後の記憶が飛んでいた。

前向性健忘(障害後記憶障害)を起こす催眠鎮痛剤を静注されたのだ。


敵国の皇帝を拐かして連れ去るのは容易ではない。

普通は薬か暴力で気を失わせて、担いで連れ去るしかない。


気を失うと一人の男を担いで脱出しなければならない。

この催眠鎮痛剤は相手を完全な催眠状態に陥れるものだ。


気絶させないので、普通に会話できる。

催眠状態なので、意のままに操ることができる。


明石「脱出用通路から外に出たい」

ニコライ二世「ハイ」


ニコライ二世はすっくと立つと壁の絵画の後ろのスイッチを回した。

壁の一部がへこんで、脱出用通路が現れた。


明石「なるほど本人しかわからんな」

ニコライ二世はさらに何重もの仕掛けを解除してゆく。


やがて2人はネヴァ川に通じる地下秘密水路に出た。

そこには高速艇が準備されていた。


明石「なるほどな、皇帝専用脱出艇というわけか」


諜報によると英国王ジョージ5世がニコライ二世を救おうとしていたとか。

この艇では英国まではムリだが、母方のデンマークが近い。


次女の嫁ぎ先の息子が逃げ込んでも無下にはするまい。

明石はニコライ二世とともに高速艇に乗り込んだ。


明石は無線機で日本側と連絡をとり、迎えを請うた。

「ネヴァ川にいる、場所は」

こうして操り人形となったニコライ二世。

彼が気が付くとそこは舟の中だった。


サンクトペテルブルク市内を流れるネヴァ川に浮く舟の中だ。

明石は舳先に立ち、何かを待っている様子だ」


ニコライ二世「逃げられんぞ」

「海へ出れば、湾内は警備艇で一杯だ」


明石「目を覚まされましたか」

「その点はご心配なく、ダイジョウブですよ」


そこに巨大な飛行艇が降りてきた。

ブルルル~ンッバシャバシャッバシャ~ンッ。


舷側のドアがガチャンと開いて、ロシア人がひょっこり顔を出した。

デカンスキー「お~い、こっちこっち」


それを見たニコライ二世はみるみる顔を紅潮させた。

ニコライ二世「きさまはアゼフ!よくもぬけぬけと!」


社会党の幹部アゼフはロシア革命最大の内通者デカンスキーであった。

アゼフ「まあまあ、これも時代の趨勢(すうせい)ということで」


ニコライ二世「この、この裏切り者めが、ペッペッ」

ニコライ二世がツバを吐きかけた。


アゼフ「うわっ、きたないなあ」

「なんですか、子供みたいに」


「Стой, или я выстрелю!」

遠くから叫ぶ声が聞こえてきた。


声の主はサーチライトを照らした警備艇だった。

こちらに凄い勢いで向かっていた。


アゼフ「急いで下さい、この巨体です、警備兵が」

チューン、弾道が逃亡者たちをかすめた。


河岸の堰堤から、警備兵の一人が狙っている。

他にもわらわらと人が集まってきた。


警備兵A「逃がしはせんぞ!」

警備兵B「待て!あれは皇帝陛下だ!」

警備兵C「撃ち方やめ、流れ弾が当たってしまうぞ」


警備兵が悶着を起こしている間に逃亡者達は移乗を完了した。

ブオ~ンッブルンブルンッバリバリバリっ。


飛行艇は白波を蹴立てて滑空し、やがて水面を離れた。

警備兵たちは呆然と空を仰ぐばかりであった。

次回は1906年モスクワ進攻です。

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