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日露大戦  作者: 登録情報はありません
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1905年ウラジオストク攻撃

とうとうウラジオストク攻撃の時がやって来た。その役目は特設艦隊の第三艦隊に回ってきた。

日本軍はすでに銃弾3400万発、砲弾48万発を消費していた。

今後の戦闘によってはさらに消費は増大するだろう。


おそらく銃弾1億発、砲弾100万発は必要と思われた。

在庫は国産で国内備蓄は充分だが、流通が追い付かないのだ。


大陸で待つ軍隊に向けて、急遽輸送船を派遣した。

釜関連絡船の徴用では間に合わず、各国内線を総動員した。


瀬戸内海連絡船が消え、四国は少々困った事になった。

明治政府は本州四国連絡橋の建設を本気で考えねばならなかった。


すでに3つのルートが策定されている。

神戸-鳴門、児島-坂出、尾道-今治の3つである。


だがまずは軍需産業の拡充が最優先である。

爆撃機と戦車の増産にも全力で掛かっている。


爆撃機は4機しかなかったのだ。

時代は航空機の、それも飛行機の時代に差し掛かっていた。


戦車も日本が戦場に投入した為に各国での研究が加速している。

すでにいくつかの国は本格的戦車の開発に乗り出している。


1915年頃に出だす戦車の原型のランドシップ構想が既に出ていた。

英国は装甲装輪車の研究も始めた。


日本はやはり飛行機の研究で一歩先んじていた。

高高度(10000m)での作戦行動も視野に入れた研究である。

最新鋭機「超空の要塞」がすでに試験飛行に成功している。


軍極秘だが、南満州鉄道への装甲列車の投入も準備されていた。

現在のあらゆる国内産業は軍需産業一辺倒だった。


国内の銑鋼一貫製鉄所は全てがフル稼働している。

銃弾、砲弾の払底は見る間に改善されていった。


この時の為に今まで準備してきたのだった。

すでに日本は全力で戦っていた。


だが超大国ロシアは欧州でも中東でも戦っている。

極東は片手間なのだ。


これを覆すのがウラジオストク攻撃である。

ウラジオストクには数千人の日本人がいた。


その中に貿易事務官として当地に潜入していた川上俊彦がいた。

身分は領事官だったが、ロシアが領事館を認めなかった。


やむなく貿易事務官としての着任だが、諜報活動も行っていた。

彼はウラジオストクの地勢を逐一日本に報告していた。


日本ではその情報を元にウラジオストクの立体模型を製作した。

まさしく手に取るように敵地の情報を見る事が出来たのである。


そしてここはウラジオストクを遠巻きにしている日本第三艦隊。

第三艦隊は第一第二と違って、その都度編成される特設艦隊だ。


旗艦厳島は三景艦と言われた松島型防護巡洋艦の二番艦である。。

ウラジオストクの模型を前に士官が集まっていた。


第三艦隊司令片岡七郎中将が模型を手で触った。

「南北西には強固な防衛が設えてあるようだ」


斎藤孝至参謀長も模型を触りながら答えた。

「東側が手薄のようですな」


スヴェトランスカヤ通りにはホテルまである。

ベルサイユホテルといい、由緒正しいホテルである。


クレストヴァヤ山が市街地に迫っている。

旅順口もそうだったが、ロシアは本当に軍港選びが上手い。


片岡「ロシア軍が失ってはならないというのがよく分かる」

「この軍港こそアジア太平洋側の(かなめ)の場所だ」


斎藤「ドックが2つ、工廠が2箇所あります」

「ここを吹っ飛ばせば、軍港は機能を失います」


片岡「そりゃそうだが、港はドックも工廠も必要だ」

「ウラジオストクを占拠すれば、日本軍の補給港になるからな」


片岡司令は少し離れた駅の操車場を指でなぞった。

「このシベリア鉄道の操車場破壊のほうが先であろう」


斎藤「ペルヴァヤ・レーチカ駅ですか、確かにそうですな」

「ウラジオストク最大の操車場を爆撃すれば」

片岡「そうだ、もう補給も撤退も不可能になる」


「最終目標はペルヴァヤ・レーチカ駅操車場とする」


上陸作戦のための航空写真が山のように撮られた。

航空写真が全てを物語っていた。


これは間諜川上俊彦の情報と一致していた。

彼はウラジオストク東側が手薄だと報告していたのだ。


鉄道の操車場の引き込み線とその数が物語る兵器庫の位置。

耐爆のため出入り口が海側を向いている地下貯蔵庫が弾薬庫だった。


兵舎の位置、司令部らしき庁舎、食料備蓄庫の位置・・・・・・。

いつもながら航空写真がすべてを赤裸々に暴いていた。


写真分析班はスケールルーペで写真を拡大して「おやっ」と思った。

そこには川上の報告にない高射砲陣地が写っていた。 


ここに侵空すれば、高射砲の集中砲火を浴びるだろう。

当時の対空砲火の標的は気球であった。


気球を狙うのが気球砲だった。

その気球砲(1870)が高射砲に進化していた。


元々沿岸砲だったものを高射砲に転用したものだ。

M1898、M1902、M1903対空砲を次々に投入してきた。


爆撃機が低空進入すればタダでは済まない構えである。

急場凌ぎではあったが、勿論当たれば航空機は墜落だ。


この高射砲陣地がコンクリート砲台にハリネズミのように突き立っていた。

おそらくは急遽シベリア鉄道経由で運び込まれたモノだ。


片岡「やはりシベリア鉄道は絶対に潰しておかねばならん」

「次から次へと増強されたら戦機を逸してしまうぞ」


戦略の第一段階に空爆を、と考えていた案は崩れてしまった。

別の奇想兵器が必要だった。


日本海海戦の後、バルチック艦隊は全滅。

たどり着いたのは穴だらけの巡洋艦1隻と水雷艇2隻だけだった。


第一太平洋艦隊司令官たるマカロフはすでに戦死していた。

座乗艦が触雷して沈没、艦と運命を供にしていた。


ウラジオストクの港湾司令官ニコライ・グレーヴェは港から出ない。

籠城して耐えれば、ロシアにはシベリア鉄道の兵站流通があった。


耐えれば耐えるだけ本国で兵器開発が活発になる。

ロシアの軍需産業は恐ろしい規模だ。


友好国フランスの航空先駆者ルイ・ブレリオ。

彼はブレリオシリーズの航空機の製造に着手していた。


もう少しで航空兵力に手が届くのだ。

グレーヴェ「ロシアの逆襲がやがて始まるのだ」

日本如きにいつまでも独占させる訳にはいかぬ。


グレーヴェ「もう少しでロシアは日本に追い付く」

「ウラジオストクで耐える事が肝要だ」


グレーヴェは軍接収の商工会議所の一室にいた。

彼は神経質そうに窓から港外の沖合を遠望した。


うっすらと黒煙が見えるのが日本海軍第三艦隊だ。


すでに日本海軍は港外に機雷を敷設していて艦船は動けない。

グレーヴェ「出る事は叶わぬが、入っても来られまい」


第三艦隊(司令長官:片岡七郎中将)は考えあぐねていた。。

片岡司令「ロシア海軍は出てこんなぁ」


斎藤孝至参謀長「秘匿兵器を使いますか?」

片岡は考え込んで動かなかった。


老朽艦を改造して全通甲板を設けた空母には爆撃機が係留されている。

これは虎の子で最終的にとどめを刺すのに使いたい。


工作艦には秘匿兵器の地面効果翼機とホバークラフトが積載されていた。

こちらでまず攪乱して、まず浮き足だった所で総攻撃に移る。


日露大戦で旅順から奉天まで、日本軍の被害はほとんど無い。

もし消耗戦を展開していたらウラジオストク攻撃は出来なかったろう。


陸軍は今、満州北部でロシア陸軍と戦っていた。

南満州鉄道を遡上してロシア軍と拮抗している。


シベリア鉄道ある限り、ロシア軍には勝てない。

だからこそシベリア鉄道起点ウラジオストクを撃滅する。


後顧の憂いを断つのだ。

その先はバイカル湖湖畔都市イルクーツクだ。


そこはもはや「外地」ではなく「内地」である。

とうとうロシア国内に攻め入るのだ。


片岡司令はとうとう腹を決めたようである。

「まず地面効果翼機を使おうか」

地面効果翼機は水面上1mを滑空するため、触雷の危険はない。


あの彦島で初めて見た時の地面効果翼機とホバークラフトの衝撃。

「ついていけんわ」と独りごちたあの観念と焦燥感。


片岡「今こそロシア兵にたっぷりと味あわせてやる」

斎藤「???」


片岡「そうか、斎藤はまだ未体験だったな」

斎藤「はあ初見ですが」


片岡「まあ見ておれ、奇想とはこういう事だ」

斎藤「はあ、見させて頂きます」


工作艦から地面効果翼機がクレーンに吊られてゆっくりと海面に降ろされた。

当日はベタ凪で、効果翼機にはピッタリの天候だ。


ブルンブルンッブルルルルッ。

地面効果翼機は滑空を開始した。


20km/h、60km/h、100km/h、そして滑空速度は200km/hに達した。

ロシア水兵「ななんだ、ありゃあ」


提督「全艦抜錨!湾内を遊弋しろ」

「魚雷艇だ、停泊しているとマトになるぞ!」


巡洋艦隊はゆっくりと離岸し始めた。

水雷艇は輪形陣を取ろうとしたが、あまりにも遅かった。


それでも狭い湾内でカマ状に展開しつつあった。

そこにもの凄い速さで地面効果翼機が突っ込んできた。


地面効果翼機が時速200km/hで遊弋艦に迫ったのだ。

当時どう考えても、そんな高速船はなかった。


しかも翼端を切り狭めた翼のようなもので滑空してきた!

それでもロシア側は果敢に機銃で撃ってきた。


だが機銃で狙おうにも速すぎて、目視では狙えない。


ロシア水兵A「速すぎて当たらない!」

ロシア水兵B「あれは水雷艇か飛行機か」

ロシア水兵C「なんかめまいがする・・・・・・」


ウラジオストクにも水雷艇隊はあった。

当時最速の20ノット(37km/h)を誇る高速艇だ。


だが地面効果翼機はその6~7倍は速かった。

ロシア水兵「来るぞ!」


地面効果翼機はボガトィーリ級防護巡洋艦ロシアに狙いを定めた。

この艦は気球を飛ばして、日本海軍を空中偵察していたからだ。


効果翼機の魚雷発射管から魚雷が勢いよく発射される。

シュッポオォ~ンッ、ザブンッ、シュルシュルシュルッ。


それをすぐ監視員が見とがめた。

「魚雷接近、3時方向、距離2000」


艦長「機関全速後退!」

波を蹴立てて巡洋艦は急減速。


かろうじて魚雷は艦首をかすめていった・・・・・・。

だが次の瞬間!


監視員「ぎ魚雷が戻ってきます!」

艦長「な、なんだとう!」


これは平面模索魚雷であった。

命中爆発しない場合、一定のパターンで戻ってくるのだ。


誘導ではない撃ち放しのため、コントロールは出来なかった。

だが敵に与える精神的効果は絶望的かつ破壊的であった。


ロシア兵A「魚雷が戻ってくるぞ!」

ロシア兵B「バカな、そんなバカな!」

ロシア兵C「ああ、もうおしまいだ!」


ドッカアァ~ンッ、ズッシイィ~ン、メリメリメリッ!

二往復の後、魚雷は遂に命中した。


他3隻の巡洋艦も逃れる術もなく撃沈され、静かに着底した。

次回は1905年ボスボラスの怪物です。

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