1905年バルチック艦隊005
ついに艦隊決戦が始まった。この決戦が日露大戦の行く末を決定する。負ければ日本海の制海権を失い、大陸に残った陸軍は日干しになる。そうすればロシアの勝ちだ。
ロジェストヴェンスキー「戦艦オスリャービャはどうした!」
観測員「爆炎を上げて炎上中」
煙突から煙が出ていないので機関が停止している。
あれだけ撃ち込まれればひとたまりも無かったろう。
第二太平洋艦隊司令ドミトリー・フェルケルザムの座乗艦だった。
だが彼は南シナ海で熱病のため、病死していた。
この事は士気低下を恐れて公表していない。
第三太平洋艦隊司令ニコライ・ネボガトフでさえ知らない。
観測員「敵の巨大測距儀がこちらを向いています!」
ロジェストヴェンスキー「なんだと!」
爆炎の中、日本軍の艦隊の斉射がフラッシュのように見えた。
ロジェストヴェンスキー「くるぞ!」
グワン!ドカン!
2発命中!
ロジェストヴェンスキー「クソ!当たりすぎだろ!」
「こちらも撃ち返せ!どうした!」
副砲が被弾して沈黙していた。
主砲が火を噴くが当たらない。
今度は手前過ぎる。
艦がジグザグ運動を取っている為、照準が合わないのだ。
また日本軍の斉射がフラッシュのように光った。
ロジェストヴェンスキー「くるぞ!」
グワン!ドカン!ズシン!バガン!
4発命中!
ロジェストヴェンスキー「速すぎる!1分経っていないではないか?」
ボロジノ級の主砲も1分に0.5~0.7発を誇る最新型だ。
ただし揚弾の時間と手動装填の時間は除く。
日本の全自動装填とジャイロ付き照準器の敵ではない。
スワロフの砲術長と操舵手はすでに戦死していた。
床は地で滑るのを防ぐ為、砂が撒かれている。
だが飛び出した臓物がそこら中に飛び散っていてそれで滑った。
砲術長と操舵手はすぐに交代の兵曹が装置に飛びついた。
襲撃操作盤はまだ動いている。
砲撃の振動と爆煙の中で計算尺を読むのは大変だ。
だが担当兵曹はよくやっている。
大声で諸元を読み上げ、テレメーターを部下が操作する。
その諸元がハンドルを回せばと砲塔に電気的に伝えられる。
その諸元通りに砲を操作し砲弾が発射される。
システムは破綻せず、まだ正常に機能していた。
ロジェストヴェンスキー「やれる!」「まだ出来る!」
ロジェストヴェンスキー「撃て!」
遂にスワロフの主砲が薩摩のマストに命中、たたき折った。
ロジェストヴェンスキー「やったか!」
すぐに返礼の日本軍の斉射がフラッシュのように光った。
ロジェストヴェンスキー「くるぞ!」
ドガッ!バキッ!ズドーンッ!ガアーンッ!
4発命中!
ロジェストヴェンスキー「速すぎる!」
「奴らの計算機はどうなっているのだ!」
日本の歯車式計算機はモーター駆動の最新式だ。
手動計算の計算尺とは速度が違う。
雨あられと降る砲弾の嵐で火災が発生していた。
数千度の熱で乾いたペンキ跡でさえ発火した。
司令塔を出て危険だが見晴らしの良い前艦橋に出た。
だが彼がそこで見たモノは、悲惨な艦隊の有様だった。
司令ロジェストヴェンスキーは顔面蒼白だった。
ロジェストヴェンスキー「万全の準備をしてこの有様か!」
そのロジェストヴェンスキーの姿を追尾中の駆逐艦、漣が捉えた。
全くの偶然から戦艦スワロフの前艦橋にその姿を認めたのだ。
この事は直ちに旗艦薩摩CICの東郷司令の元に伝えられた。
東郷「ワシもそうだったから気持ちは分かる」
東郷「戦艦スワロフの前艦橋を狙え!」
薩摩と安芸の主砲が戦艦スワロフの艦橋を狙う。
ロシア監視員「敵主砲がこちら(艦橋)を向いています」
ロジェストヴェンスキー「なに!」
その時、座乗艦スワロフの前艦橋に砲弾が着弾し爆発した。
その後の事はロジェストヴェンスキーは覚えていない。
駆逐艦ブイヌイに移乗し、さらに駆逐艦ベドーヴイに移乗したらしい。
駆逐艦ベドーヴイは戦闘海域を脱出しようと試みた。
そこへ追尾中の駆逐艦の漣に捕縛される。
前額部挫創兼前頭骨骨折、右大腿部及左足部挫創、背部擦過創であった。
とくに左足部挫創からは動脈性出血が続いていた。
駆逐艦の漣が佐世保に入港するまで何度も意識消失となった。
軍医「重傷だ」「一刻も早く正規の手術を受けねばならん」
だが結局ロジェストヴェンスキーは助かった。
バルチック艦隊は指揮官を失い、迷走を始めた。
全ての太平洋艦隊の司令官を失ったのだ。
もはや艦隊行動による一斉射撃は不可能である。
バルチック艦隊全艦が各個に旗艦薩摩に向かって撃ち始めた。
日本艦隊は一斉射撃で、1艦づつ照準して大破撃沈させていく。
薩摩は30発以上の命中弾による大損害を受けていた。
集中的に敵の砲弾を浴びたからだ。
600発以上の砲弾が集中した事になる。
命中率は当時5%だった。
この後15分ほど戦闘はつづいただろうか。
敵に命中した砲弾は200発。
日本軍側の命中率は20%であった。
1000発以上バルチック艦隊に撃ち込んだ計算である。
次回は1905年バルチック艦隊006です。




