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日露大戦  作者: 登録情報はありません
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1905年バルチック艦隊002

いよいよバルチック艦隊はインドシナのハロンに寄港した。ここでメンテナンスと大改造を行い、日本海海戦へと出撃する。

ここはフランス領インドシナ(現ベトナム)。

ロシアの同盟国フランスの植民地だ。


バルチック艦隊は、ここでしばしの休息を取った。

ここにはホンゲイ炭鉱があり、良質な無煙炭が採れる。


バクダン、ハロン、ナムチューには造船所もあった。


ネボガトフ「カムラン湾には寄港しないのですか」

「あそこは良港で接岸ヤードも多いですが・・・・・・」


ロジェストヴェンスキー「あそこはドライドックが無いよ」

「あと、ハロンの工廠には変人が多い」


ネボガトフ「それが何か役に立つのですか?」

ロジェストヴェンスキー「まあ見ておれ」


造船所のあるハロンには、観光リゾートとして有名なハロン湾がある。

ロシア水兵たちは充分に英気を養い、艦体は充分に整備された。


ロシア水兵A「いいところだなあ」

ロシア水兵B「オレ海戦が終わったら、ココに移住するんだ!」

ロシア水兵C「この前は帰ったら結婚するんだって言ってただろ?」


ハロンにはドライドックがあり、艦体を引き上げて整備した。

ロジェストヴェンスキー「おう、来たぞ」


フランス人技師ベルタン「お待ちしておりました、司令官様」

ボサボサの髪に日焼けした肌、ボロボロの作業服。


ネボガトフ「なるほど変人だ」

だがその瞳には、技術者特有の輝きに満ちていた。


ロジェストヴェンスキーは彼から電信を受けていた。

「ハロン造船所にくれば、船体整備と改造を承ります!」


彼はドライドックの船体のプロペラボスの基部に客人を案内した。

造船技師はプロペラ・ボス・キャップ・フィンズという新技術を持っていた。


ベルタンは笑って言った「日本人の発案なんですよコレ」

日本へ行った時に一人の鋳造技術者と口論になったという。


それはスクリューの起こす気泡(キャビテーション)の低減方法だった。

そこでその日本人が熱っぽく語ったのが、新技術だ。

かのプロペラ・ボス・キャップ・フィンズ(PBCF)だった。


あろう事か、白熱した2人の論争は社外秘に及んだ。

設計の基本の特許事項を喋ってしまったのだ。


かの日本人は後日、「三津輪プロペラ」を祖父中島善一が製造する。

彼がナカシマプロペラを起業し、ベトナムで工場を操業する事になる。


ナカシマプロペラではPBCFはエコキャップと呼ばれている。

その後フランス人は、気にも掛けない体で、日本を離れた。


そして、ここフランス領インドシナで研究を続けてきたのだ。

ベルタン「なぜ本国でやらないのかですって?」


「本国でやったら、すぐ特許研究なんて盗まれちゃいますよ」

「ここだと自由気ままに研究開発が出来ますよ」


それは分かる、とロジェストヴェンスキーは思った。

このオレでさえ本国では意見具申が上層部でもみ消された。


ボロジノ級の大改装をやるには本国を離れなければならなかった。

ここ、インドシナのハロンなら海軍科学技術委員会の目も届くまい。


ベルタンは船底に空気の気泡を流す研究も行っていた。

気泡が水と壁面の水流抵抗を激減させるのだ。


これは後日、ロシアに技術が漏れ、ロケット魚雷シクヴァルとなる。

速度200knots(時速370km/h)のロケット魚雷は全世界を驚かす。


ロジェストヴェンスキーは平民で、砲術アカデミーの出身だ。

当時司令官は貴族出身者がやるものだった。


それゆえ頭を下げるのも躊躇しない生い立ちだったと言える。

技師が熱心に語る流体力学の説明をすべて理解した。


ロジェストヴェンスキー「つまりバルバスバウよりアックスバウか」

「スーパーストリーム・ダクトか、なるほど」


ロジェストヴェンスキー「コレは面白い」

プロペラ・ボス・キャップ・フィンズは軸系の変更無く、追加可能だ。


ロジェストヴェンスキー「ボロジノ級4隻全てに、換装と追加工事を頼む」

こうしてロシア艦は異常な装備をインドシナで追加した。


また設計時の不備であった転覆の危険性も指摘された。

満載排水量が計画時より2000トン多いのだ。


それは船体の上部構造物の重量超過であった。

トップヘビーになってしまい、傾斜でクルリと転覆する。


そこで「船体ダイエット」に挑戦した。

船体上部構造物から不必要なモノを全部引き剥がした。


ベルタン「私はタンブルホーム形状が欠陥とは思いません」

「実際の艤装で上部構造物が重量オーバーになったのが原因です」


ロシアの戦艦には家具調度品などが船内環境の向上の為に設置されていた。

これを全て引き剥がし、スッカラカンにハンモックだけとなった。


ダイエットは家具調度品700トン、金属部品800トンに及んだ。

これで復元に必要な数値(GM)を充分にとる事ができた。


また水雷艇攻撃用の75mm速射砲の配置は喫水線のすぐ上で低い。

これは喫水の低い水雷艇の撃攘に有利であるとの判断からだ。


実際アレクサンドル3世号の全力公試では全力回頭で浸水した。

ロジェストヴェンスキー「ここは塞いでおいてかまわん」

「戦場で全速回頭できんと艦隊運動と戦闘にならん」


ベルタン「水雷艇撃攘はどうするのですか」

ロジェストヴェンスキー「速射砲は砲廓式で甲板に戻そう」


そのほか日本海の荒波に対する方策も考えねばならない。

ロジェストヴェンスキーはベルダンに問うた。


ロジェストヴェンスキー「ほかに船体の揺動を最小限に抑えたい」

ベルタン「ではフィン・スタビライザーを取り付けましょう」


日本海には、大陸からの季節風が吹き付けている。

さらに暖流の対馬海流と寒流のリマン海流の激突の場でもある。


揺動が大きければ、主砲の照準どころではない。

舷幅が大きければ揺動も少ないが、ここで船体を作り直す訳にもいかない。


フィン・スタビライザーで揺動抑止に努めることになった。

ボロジノ級の船速は5%アップ、揺動は荒天で70%ダウンとなった。


ロジェストヴェンスキーは日本連合艦隊と対馬で接触すると睨んでいた。

すでに日本側の航空機が台湾方面をウロウロしていた。


航空機が一番の厄介者だ。

だが幸いにして航続距離はまだ短い。


空母無しでは航空機はそれほど脅威ではないのだ。

彼はスパイが撮った空母の写真を見ながら言った。


ロジェストヴェンスキー「全通甲板の航空母艦が厄介だな」

だが運用には対馬沖はいささか波が高すぎる。

水雷艇でさえ出番はないだろう。


ロジェストヴェンスキー「ここで決戦だ!」

「戦闘用減炭準備!」


燃料満載で戦闘すれば、当然戦速が遅くなり機敏さが失われる。

そのため無煙炭の積載量を70%まで減らすよう、全船に通達していた。

それで最大船速19.8ノットを維持出来るはずだ。

ロジェストヴェンスキー「全艦、抜錨!バルチック艦隊発進せよ!」

整備され、補給を整えたバルチック艦隊は出航した。


目指すはウラジオストク。

だがロジェストヴェンスキーは対馬海峡で海戦になると睨んでいた。

次回は1905年バルチック艦隊003です。

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