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日露大戦  作者: 登録情報はありません
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1904年南山の戦い001

要塞の空撮写真は日本軍の戦略を大きく変えた、航空爆撃だ。

奥司令「ここまで全部分かってしまうのか?」

奥司令は南山要塞の航空写真を見て愕然とした。


鉄騎兵第4旅団長の吉橋「丸見えだ、机上演習というヤツだ」

「ここの鉄条網は戦車でないとムリだ」


吉橋は航空写真の鉄条網のラインをなぞった。

角面堡と角面堡の間の鉄条網のラインだ。


砲弾が野積みにされた陣地。

さすがに薬嚢(やくのう)は弾薬庫の中だが、(わだち)で場所は分かった。

天蓋で隠されているのが主要砲台だろう。


あれだけ旅順港では航空機を使ったのだ。

航空偵察に用心しているのが窺える。


数枚重ねると、人の動きから地下通路入り口の位置も分かった。

まさしく丸出しとはこの事だった。


中国人労働者「苦力」の情報とは位置配置はかなり異なっていた。

おそらくは二重スパイなのだろう。


この南山の地図と遼東半島の地図を重ね合わせる。

こうして南山要塞の詳細な内部配置は数mに至るまで把握出来た。


ここまで分かってしまうと日本陸軍の戦略も変わった。

砲座と角面堡、眼鏡堡が十字砲火を前提に効率よく配置されている。


前面の鉄条網で日本得意の白兵突撃をまず食い止める。

そこに毎分600発のマキシム機関銃を見舞う。


戦闘精神旺盛な突撃で突破する兵もおろう。

彼らを待つのは対人地雷原である。


4000人で白兵突撃して何人残るのか?40人か?

残りの3960人は死傷兵だろう。


ロシアは捕虜を取らないと聞いている。

日本人の手榴弾自決を恐れているのだ。


奥司令「まあ、どっちもどっちか」

どっちにせよもう白兵突撃は出来ない。


吉橋「ここはやっぱり戦車!」

奥司令「実を言うとオレも突撃は好きだ」


奥「敵の心胆を寒からしめる銃剣突撃が好きだ」

「だからオレは陸軍に入隊し、とうとう司令にまでなった」


「寡をもって衆を制すと言ってな」

「重装備の敵に、軽装備で対決する」


「鍛えたワザで鈍重な敵の攻撃をヒラリとかわす」

「そしてふところに潜り込んで、とどめの一撃を食らわす」


「戦闘はかくあるべきと常々考えていた」

「だがこの近代ルドゥートで防備した野戦陣地はどうだ?」


吉橋は黙って「奥司令の独白」を聞いていた。

かつての自分も悩み、騎馬戦闘では同じ事を考えていたからだ。


奥「もう白兵突撃は古いんだよ」

「明日は航空機による爆撃を行う」


翌日26日早朝。

飛行船による南山空爆が決定した。

第二軍奥司令「今度は飛行船爆撃だ」


奥司令「飛行船離陸せよ」

飛行船は今度は爆撃目的で離陸した。。


沖合の艦砲射撃によるおとり攻撃も同じ。

高度は2000m、飛行船は爆撃準備に入った。


八頭純一郎が1894年に機械式計算機を発明している。

爆撃照準器はその機械式計算機の付いた最新式だった。


爆撃手が高度と風速などの当日の諸元を入力した。

爆撃手「目標右プラス4、修正誤差22」


爆撃管制装置は歯車で爆撃用レールとリンクしている。

照準器を調整するとリンク機構で爆撃用レールも動いた。


「よし投下」

爆弾をレールに沿って手動で落とす、あとは自由落下だ。


ヒュルヒュルヒュルッドッカアア~ンッ。

グワアア~ン、バラバラバラッ。


艦砲射撃の死角の筈の陣地に爆発が起こった。

ロシア兵「ななんだあっ」


副官「司令!敵の新兵器です!」

フォーク中将「うろたえるなっ」


地響きに震える司令室で要塞司令アレクサンドル・フォークは叫んだ。

「偵察気球は撃ち落とした!」


「陣地の配置が洋上の戦艦から見える筈がない」

「敵の艦砲射撃に散弾(ブドウ弾)が混じっているのだ!」


建設に携わった中国人労働者にはわざと欺瞞情報を流してある。

日本軍はそれにまんまと引っ掛かり、機関銃の十字砲火を浴びる算段だ。


防御陣地の指揮官トレチャコフ大佐が負傷して担ぎ込まれてきた。

医務室は一杯な時は士官室を使っても良いとしていた。


フォーク「もうそんなに死傷者が出ているのか?」

トレチャコフ「大丈夫です、戦えます」


フォーク「あほう、多発外傷で血まみれではないか!」

「爆圧腹部臓器損傷を考えねばならん」


トレチャコフ「平気です、痛みなどありません」

フォーク「あほう、管腔臓器の損傷があれば腹膜炎だぞ」


続々と士官室には重傷者が担ぎ込まれてきた。

そのさまにフォーク中将はパニックになりそうだった。


爆撃の地響きに戸惑いながら、フォーク中将はふと思った。

「もはや撤退しかない、のでは?」


爆撃は正確であり、陣地内が上から見えているかのようであった。

実際見えているのだが、空爆はロシア軍の案の外である。


資材は吹き飛び、通路は崩れ落ち、陣地は粉々になった。

ドカンドカンッボカンボカンッ、もうメチャクチャである。


陣地の地面は軟らかい土で雨が降るとぬかるんだ。

この水浸しの大地に着弾しても爆弾信管は作動しない。


そこで信管を前後に二つ付け、後部に弾底信管を取り付けた。

これは弾速を感知する慣性感知型であった。


爆弾にはテルミット焼夷弾も含まれており、大火災に陥った。

1894年にテルミット反応はボーチンによって発見されている。


ロシア兵「か火薬庫に火が!ひ、ひぃー」

フォーク中将「て撤退だ!撤退せよっ」


トレチャコフ大佐「防戦だ!まだ()ちぬ!」

フォーク「その傷で戦いは無理だ、撤退するぞ!」


トレチャコフ大佐「いや、まだまだ戦える!」

フォーク中将はしかたなく落ちのびていった。


後日フォーク中将は大佐援護を放棄した譴責を問われる事となる。

多くの将兵が着の身着のまま、我先に逃げ出していた。


兵站を持ち出す間もあらばこそ、全てを投げ出しての退散だ。

ロシア兵らは鉄壁防御要塞「旅順」に逃げ出していった。


損害:ロシア死傷者1600名。

損害:日本軍死傷者0名。


第二軍奥司令「これが航空機の威力なのか・・・・・・」

メチャクチャになった南山の様子に奥は唖然としていた。


もし陸戦を強行していたら人的被害は数千人に達したろう。

その戦闘で戦死する筈だった多くの将兵が生き長らえた。


その中に乃木将軍の子息もいた。

乃木勝典「し死なないで済んだ・・・・・・」


日本の大本営も、海底ケーブルを通して、南山陥落の報に接した。

満州軍総司令官大山巌「戦傷者は0名です」


大本営「なに、戦傷者0名だと?桁が違うんじゃないか?戦争だぞ」

総司令官は思ったとおりの大本営の反応にニヤリとした。


南山の戦いは終わった。


その圧倒的勝利に陸軍は航空戦力の将来を楽観もし、悲観もした。

未来の戦争は航空機による爆撃の時代を迎えるだろう。

それはとんでもない時代の到来になるだろう。


戦車も出番がなく、鉄騎兵第4旅団長の吉橋はムッとしていた。

「初めての空爆でもトレチャコフ大佐のように逃げない猛者がいる」


「次回からは要領よく地下通路に隠れ、耐え忍ぶ知恵を身につける」

「初回は上手く行ったが次からは地上戦を強いられるぞ」


その時こそ戦車の出番なのだろう。

吉橋「航空戦力にお株を奪われちまったよ」


この戦いで秘匿兵器「飛行機」の出る幕はなかった。

だが敵の退却した旅順要塞ではどうか?

次回は1904年旅順要塞包囲戦です。

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