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日露大戦  作者: 登録情報はありません
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1904年旅順口攻撃

旅順口の旅順港は自然の良港だ。港内は遊弋に充分な余裕があり、なおかつ港口は270mの幅しかない。守るに易く攻めるに難しとはこの事だった。

1904年2月7日、佐世保を旅順攻撃艦隊が出撃していた。

東郷平八郎率いる主戦力の艦隊であった。


目的は旅順口区の旅順港の制圧である。

2月8日18時、旅順港外に停泊中のロシア艦隊を偵察機が発見。


旅順港の80km手前で「テキカンミユ」を傍受。

商船を改造した全通甲板型空母から爆撃機が発艦した。


2月8日20時、戦艦2隻、巡洋艦1隻を爆撃により大破させた。

これが旅順口攻撃の第1弾となった。


赤々と上がる炎が、遙か彼方の水平線にチラッっと見える。


この報告を聞いた加藤友三郎参謀長は愕然とした。

加藤「これからは航空機の時代なのだな」


かつては連合艦隊の露払(つゆはら)い程度に考えられていた航空機。

航空機が艦隊の進路に先回りして、障害となる敵工作艇を追い払った。


それが今や、露払いは戦艦の役目に成り下がっていた。

艦隊の主役は航空母艦で、戦艦は護衛役に過ぎなかった。


航空機は航続距離が「主砲の射程距離」の空飛ぶ「砲弾」なのだ。

戦艦薩摩の全高は50mとすれば「見通し距離」は約27kmだ。


80kmは水平線の彼方で、艦砲射撃は出来たとしてもめくら撃ちだった。

まあそんな射程の艦砲があるわけがなかった。


東郷「大艦巨砲主義はまだ始まってもおらんのにもう終わりか・・・・・・」

旗艦薩摩の司令室で、秋山、飯田、清河ら参謀も顔を見合わせた。


将来戦艦の主砲の射程距離は45km程度を見込んでいた。

将来航空機の航続距離は1000kmを越えると見込まれている。


つまり航空爆撃機は射程距離1000kmの砲弾なのだ。

射程で叶わない戦艦は空母を魚雷攻撃から守る役目となった。

狙ってくる巡洋艦や駆逐艦を追い払うのだ。


これはとんでもない事が起きているといった体である。

だが頭が付いていかない、斬新過ぎるのだ。


東郷「艦隊決戦はもはや時代遅れか」

「航空決戦の時代が来るのだ」


東郷は魚雷搭載機vs戦艦の戦闘を思い描こうとした。

航空魚雷が戦艦に襲いかかるさまを想像しようとした。


その攻撃方法はまもなく現実となる。

東郷は新しい時代に立ち向かわなくてはならない。


ロシア太平洋艦隊のスタルク司令官は為す術もない。

高空からの爆撃を長距離艦砲射撃だと思っていた。

これは偽装の為、艦船が空砲を撃ったのも効果があった。


スタルク「沿岸砲も届かない彼方から撃ってくる」

「見通し距離の向こうからとか48cm砲か?」


疑心暗鬼になったスタルクは戦前の噂を思い出していた。

日本が広島の呉でとんでもない巨艦を造船中だという噂だ。


これは日本の間諜明石元二郎の放ったニセ情報だった。

だがスタルクはまんまと引っ掛かってしまった。


ここでスタルク司令官は更迭され、後任はマカロフ司令官である。

水雷号撃主義で、海軍戦術論という本まで出していた。

その英才ぶりは世界が認めるところである。


そして東郷平八郎はこの本を翻訳させて読破していた。

「水雷艇と機雷による小艇作戦が得意なのだな」

マカロフ司令官の英才ぶりが仇となったのである。


東郷は米西戦争でサンチャゴ湾を閉塞した作戦を思い出した。

貨物船老朽船を自沈させ、港口を塞ぐ戦法だ。

実際、旅順港の湾口の幅は270mしかなかった。


だがそこは敵の集中砲火とサーチライトの餌食になる場所だ。

東郷は航空機爆撃で充分と判断し、閉塞作戦を破棄した。


第2弾攻撃は猛吹雪の為、小競り合い程度で終わった。

その日から海が荒れ始め、空母は発着艦が出来なくなった。

艦隊行動も乱され、しばしの休戦となった。


第3次攻撃は港湾施設の破壊である。

2月18日深夜、爆撃機による旅順港係留の艦艇への空爆が始まった。


航空機を知らないロシアは水雷艇かと緊張した。

ロシア軍指揮官「敵が湾内に潜入したか!」


直ちに探照灯が照らされたが、湾内に敵はいなかった。

ロシア軍指揮官「いないぞ、一体どこから撃ってくるんだ?」


燃え上がる炎と煙、爆発音で航空機の存在は確定出来なかった。

ロシア軍指揮官「ならば気球による空爆だ!」


「対空警戒!空中聴音機を出せ」

戦争チューバと言われるバケモノみたいな聴音機が現れた。


ロシア軍指揮官「どうだ、聞こえるか?」

聴音士官「なにも、敵は去ったようです」


ロシア軍は気球による爆撃に備えて、気球砲を準備した。

それを撃つ暇も無く、地上設備はメチャクチャに破壊された。


この爆撃で旅順港の海岸砲はほぼ全滅した。

旅順要塞は大型砲の8割を大陸側に、2割を海岸側に向けていた。


コンクリートの基礎ごと吹き飛ばされた海岸側砲台。

これを完全再建すれば、再起に1ヶ月は掛かる。


ロシア軍指揮官「そんな悠長な事は言ってられん」

ロシアは無理矢理に木製基台で突貫工事して乗り切った。


3月10日第4次攻撃の際には、海岸砲はもう元通りになっていた。

また「阻害気球」も上げられ、地上空爆は難しくなっていた。


阻害気球は低空で侵入する敵機を妨害する防衛兵器だ。

ロシア側は航空機はないが、偵察用気球はたっぷりあった。


気球は水素充填で空中浮遊している。

これに釘や鉄屑を混ぜて、空中で炸薬爆発させるのだ。


そうすると破片が四方八方に吹き飛び、敵気球を傷つける。

この原理は航空機にとっても極めて危険であった。


爆撃機は次回攻撃より「航空魚雷」攻撃に切り替えた。

爆弾による地上攻撃は阻害気球で防衛されており危険だ。


それよりも、魚雷による停泊艦艇の攻撃に切り替えたのだ。

まだ対空防衛兵器が艦船には備え付けられていない。


停泊中の艦船は、爆撃機の格好の的になった。

地上の砲塔は代替えが効くが、船舶は撃沈されると後がなかった。


この時まで連合艦隊の砲塔は、まだ一発も火を噴いていない。

海戦は大艦巨砲主義から、魚雷と爆撃の時代へと移ろうとしていた。


この航空魚雷攻撃で、戦艦レトヴィザンほか戦艦3隻が沈没した。

これより先、ロシア戦艦は駆逐艦や水雷艇を盾にして停泊した。


第5次攻撃は日本駆逐艦隊とロシア哨戒艇の小競り合いに終わった。

時々、哨戒任務で、水雷艇が湾外に出てくるが、これも魚雷で撃沈していた。


第6次攻撃は造船工廠と燃料貯蔵庫の完全破壊が目標だ。

これにはテルミット反応を利用した焼夷弾を用いた。


工廠と燃料貯蔵庫は跡形も無く灰燼に帰した。

工作機械と治具は3000度の熱で変形していた。

 

ガントリークレーンもドライドックのゲートも粉々になった。

もう艦船の修理をする事は出来なかった。


燃料貯蔵庫の石炭はまだ燃えていた。

東郷「勿体ないがこれも戦争だ」


第7次攻撃ではロシア側は残った戦力を絞って最終決戦に出た。

すでに港外は日本軍側とロシア側の機雷で一杯である。


作戦航路には機雷はないはずだが、掃海艇を露払いに粛々と進む。

海岸砲の射程を援護にそれ以上は出てこない。


マカロフは旗艦ペトロパヴロフスクをいつもの手順で運航した。

だがその操船手順は日本軍側に読まれていた。


湾口より東南2kmにあるルチン岩を基準とした操船を読まれていた。

前日密かに設置した日本側機雷に旗艦は触れてしまったのだ。


東郷は外の見えない薩摩のCICで報告を聞いた。

ペリスコープで見ると既に旗艦は轟沈していた。


東郷「直接轟沈を見られないのは如何にも残念だ」

「だが戦闘はアミューズメントパークじゃない」

「結果が全てで、過程はどうでも良いのだ」


ここで東郷はいかにも悔しそうだった。

かつては露天艦橋で不動を貫いていた不屈の司令官。

しかし時代は近代化し、それに甘んじるしかないのだ。


この戦闘でマカロフは戦死、アレクセーエフが代行を務めた。


第8次攻撃はさらなる空爆である。

軍艦を素通りし、港湾施設を徹底的に破壊した。


容赦なく港湾施設は破壊され、ここに旅順港は沈黙した。

ここで港閉塞作戦が計画されたが実行されなかった。


この頃、バルチック艦隊がバルト海のリバウ軍港を出発した。

だがもう旅順港はメチャクチャで使えないだろう。


こうなると陸軍の旅順要塞攻略戦は意味が無いように思える。

白兵突撃による総力戦主義は損耗が激しいだけだろう。


日清戦争では簡単に落とせたが、今回はそうはいかない。

機関銃と無筋コンクリートで防備した近代要塞だ。


清国兵が弱かったのは日本軍の白兵突撃が疾風迅雷だったからだ。

今の旅順要塞はそれを打ちのめす機関銃砲座がある。

まるでそれは地獄の針山の如くであった。


銃剣突撃がいかに疾風怒濤であろうとも機関銃には叶わない。

ハチの巣になって戦死者の山を築くだけである。


しかし今の陸軍はそうではない。

それは次の南山の戦いで明らかになる。

次回は1904年南山の戦い000です。

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