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日露大戦  作者: 登録情報はありません
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1883年海底ケーブル

日露戦争の前の日清戦争の情報収集を支えたのが海底ケーブルです。大陸の前線と日本の大本営は電信で繋がっていました。

日本が電信を知ったのはペリー来航(1853)だった。

将軍に献上した電信装置が最初だった。


1858年薩摩藩主の島津斉彬(しまづなりあきら)が実用化した。

一方欧米では、電信は大陸間の海底ケーブルの時代に入っていた。


1840年西洋では地上の電信網は充分に張り巡らされていた。

だが大陸間はまだ船便による郵便に頼っていた。


大陸間電信のための海底ケーブルの実現が求められた。

最初の実験は、テムズ川の河川ケーブルの試験敷設が行われた。


1843年米国ニューヨーク湾でも同様の敷設試験が行われた。

だがゴム劣化によって、これらはどちらも失敗に終わった。

普通のゴム(ラテックス)はこの用途に向いていないのだ。


一方、歯科充填用には「ガタパーチャ」というゴムが使われていた。

これはアマゾンのパラゴムノキとは別の東南アジア産のゴムであった。


高い絶縁性と水に不溶で低温硬化性に優れるゴムであるが弾性が無かった。

それゆえ歯の詰め物に特化されて使用されていたが、英国がコレに目をつけた。


このガタパーチャによって海底ケーブル敷設の目安が立ったのだ。

米英は今度もほぼ同時に実験し、結果は良好で、実用化に弾みを付けた。


1848年ついにドーバー海峡横断ケーブル敷設が開始された。

場所は英国ドーバーとフランスカレー間であった。


この時は周知を徹底しなかった為、漁師がケーブルを誤って切断してしまった。

1851年再度ケーブル敷設にチャレンジし、今度は見事に通信機能を果たした。


このケーブルは10年間に渡り修繕を繰り返しながら使用され続けた。

ガタパーチャは、高分子材料が発明されるまで、使い続けられた。


この成功によって英国は次々とケーブル網を充実させていった。

次は英国植民地のインドとの通信ケーブル敷設であった。


英国-スペイン-地中海-スエズ-アデン-インドのムンバイが経由地だ。

挿絵(By みてみん)

1870年この海底ケーブルの「インド洋線」が開通した。


1871年日本でも上海-長崎-ウラジオストク間で海底ケーブルが敷設された。

挿絵(By みてみん)

この敷設はデンマーク主導で行われ、インド、東南アジア側の英国と拮抗した。


1878年この国際通信主導権を巡って、日本側が抵抗した。

この為、国際電報営業権を日本に返還している。


1883年日本政府は将来の対清戦争に備える必要があった。

その為に、デンマークに佐賀県呼子-釜山間の海底ケーブル敷設を要請した。


その敷設と引き換えに20年の期限付きでアジア通信の独占権を与えた。

さらにロシア及び清が認めた場合は10年延長する条件を加えた。


これによって呼子-壱岐-対馬-釜山間の海底ケーブルが敷設された。

挿絵(By みてみん)

これで日本と朝鮮と清国とは有線で繋がったといえる。


1894年日清戦争勃発。

戦況は逐一日本に有線で伝えられた。


日本の電撃作戦はこの有線回線のおかげだとも言えた。

だが地球規模で、海底ケーブルを敷設していたのは、やはり英国であった。


材料のガタパーチャは英国の東南アジア植民地産だった。

それゆえ、その収穫は独占であった。


これに対抗するのは高分子材料(塩化ビニル、ポリエチレン)である。


1835年ドイツで塩化ビニル(PVC)が化学者リービッヒによって発見される。

1865年英国でセルロイドが合成に成功する(日本輸入は1877年)。

1898年ドイツでポリエチレンがジアゾメタンの熱分解から偶然発見される。


だがまだ高分子化学は黎明期だった。

ガタパーチャというゴムが唯一の選択だった。


それゆえに米英に対して日独は無線技術を発達させて行く事になった。

次回は1886年ノンマントン号です。

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― 新着の感想 ―
[一言] 薩英戦争時に川本幸民が管制機雷を製造、養命酒の原料としてガタパーチャを含む杜仲が用いられているのでケーブル造れたんですがね……。 実に惜しい。
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