675.殿下、その内に馬に蹴られますよ。
【王都ルグスブルグ、皇太子執務室】
「忙しだろうに、急に呼び出して申し訳ないね」
「いいえ、殿下のお呼び出しとならば、まずは駆け付けさせて戴きますわ。
ええ、遠い領地から早急に呼び出すだけの御用件があると、私、心から殿下を信じておりますので」
何か周りの人が、私の物言いに苦笑を浮かべているけど気にしない。
私、ごくごく普通で当り前の事を口にしただけですよ。
飛行機も電車も車もないこの世界において、王都の最寄りの港まで船で数ヶ月も掛かる程遠く離れ、更には魔物の領域で俗世から切り離された土地から、手が空いたらなるべく早く王都に顔を出す様にとFAXの魔道具でお手紙を戴いた以上、それ相応の内容に決まっているじゃないですか、と言外に言っているだけです。
「……あぁ、一応は聞はかせてほしいのだが、今日は何か予定が入っていたのかね?」
「ふふふふっ、今日は本当に偶々ですが、仕事は入っておりませんでしたので、どうかご安心ください」
本当の事ですよぉ~。
お・し・ご・と・は、入っていないのは本当の事だし、今日一日空けていたのも本当の事。
「ああ、それで、今日は一段と華やかな装いなのか。
普段の落ち着いた装いも君の魅力を引き立てるものだったが、こうして改めて見ると着飾らないのが、実にもったいないな」
「うふふっ、嬉しいお言葉をありがとうございます。
ですがお恥ずかしながら私の趣味ではなく、本日は相手の強い要望がありまして」
因みに今日の私はヒラヒラたっぷりの装いの上に、リボンなどの装飾品も全身に嫌みなくセンス良く身に付けている。
勿論、殿下に言ったとおり、少女趣味全開の装いなど私の趣味ではない。
見た目はともかく、中身は中年のオジサンですよ。
だと言うのに、人にこういう可愛いもの系をやたらと身に付けさせたがるのは、私の可愛い嫁です。
そして名目上は休息日にはなってはいるけど、実際には可愛い嫁達との甘々な日で、本日はジュリとお出かけをする予定だった日。
ジュリの趣味全開の装いに身を包まされて、丁度出かける準備がほぼ整った所でFAXの魔導具による手紙を受け取ったので、着替えるのも面倒なのでそのまま来た次第。
当然、幾ら先方からの要望だとは言え、お忙しい殿下にお会いする為には時間が掛かり、既に昼を大きく回っており。
「殿下、お耳を………」
おっと、お付きの女性の一人が殿下に何やら耳打ちをし、次第に殿下は非常に気まずそうな顔をされる。
どうやら殿下は漸く気が付いたようだ。
王族から早急に会いたいと連絡があれば、臣下は余程手が離せない状況ではない限り、出来るだけその願いに応えないとならない事を。
王都暮らしの貴族でない限り、呼び出しに応じるにはそれ相応の日数が掛かり、呼び出す側もそれ相応に配慮をすもの。
だけど、私には空間移動の魔法があるから、殿下もその辺りの配慮が抜けていたのでしょうね。
「ちなみに陛下と合わせて、既に二桁の大台に上がっております」
言うまでもなく、デート日を潰された数の通算です。
二桁の大台に上がったのが何時かは聞かない様に。
十でも九十九でも、同じ二桁には違いないと言う事で察してください。
明確な数字を提示しないのは、王族に対する配慮です。
別に私はお仕事だから仕方ないと思えるけど、可愛い嫁達の膨れた顔を戻す私の苦労を少しは労ってほしい。
ここの所、夜の方は御無沙汰しているから、余計に嫁達の不満が溜まっているので、本当に勘弁してもらいたい。
ご無沙汰の理由は、私がする気がないから。
愛が冷めたとかではなく、単に私がしたくないだけ。
その分、普通にイチャイチャする分には、嫁達の希望をなるべく叶えたいと思っていると言うのに、今回の急遽な呼び出し。
これで下らない要件だったらどうしてくれようか、と言う脅しの意味を込めた言葉に、何故か固まる殿下の顔。
まさか、本当に下らない要件という訳ではないですよね?
「よ、よくは分からないが、私と妻が懇意にしているお店を後で幾つか紹介しておこう。
最近は立場的にもあまり行けてはいないが、君ならば向こうも喜んでもてなしてくれるだろう」
用件の前に、ご機嫌取りに来たか。
でも実際にお店の候補を探し出させられるのは、側付きの方々なんだろうね。
王族の紹介に恥ないのは勿論、更には若い娘向きの華やかで、更には私の性格も考えて落ち着いた雰囲気があり、尚且つ流行にも載っているお店の候補を上げないといけない訳だからね。
まぁ、なんのお店なのかを口にしないだけ、配下への配慮なのかな。
だからと言って本当に下らない要件だったら、流石に一言二言は言わせてもらう気持ちは変わらないけど。
「最初に言っておくが、これは母上からの強い要望でな」
「王妃様の?」
「ああ、君はカーマイン伯爵のファルーナ嬢を知っているかね?」
一応は面識はあるので、小さく頷いておく。
近衛騎士団に所属し、王妃様の筆頭護衛騎士でもあり、王妃様から強い信頼を受けている女性騎士。
ただ昔に怪我をしたとかで、いつも顔の半分を仮面をつけておられる、大変に印象深い方なのでよく覚えている。
治癒魔法があるこの世界だけど、なんらかの理由で治癒魔法が受けられなかったり、治癒魔法をが聞く期間に間に合わなかったりして、貴族であっても傷跡を残す場合がある。
特に魔物の討伐騎士団や、軍の任務で少数で町から遠く離れた場所で傷を負った場合など。
「彼女の傷は母がある領地への視察からの帰りの道、襲撃を受けた際に襲撃者から母を庇って負ったものでね。
その後は母達と共に近くの小さな砦に逃げ込み籠城したらしいのだが、味方の軍が駆け付けるまで、半月近くに及ぶ激しい戦いだったそうだ。
救出がそこまで長引いた理由は、察してくれ」
王族が襲撃を受け、その救出にそれだけの時間が掛かる事の意味など、深く考えなくても分かる事。
だからこそ疑問には思うかもしれないが、聞くなと釘を刺しているのだろう。
私も面倒臭い事には首を突っ込みたくないので聞く気はないけど……、殿下、重い話をして人のデートを邪魔したことを誤魔化そうと思っていませんよね?
「ここに先日君が出した、麻酔薬の使用用途の拡大に関する要望書がある」
リズドの街のジィーヤに、正式な要望書にさせてから提出させたものだけど、カイル殿下の手に渡るまでがえらく早くない?
私は時折陛下に直接持って行くからあれだけど、普通は国へのその手の要望書って、陛下達の手元に行く前の段階で、審査だなんだと何ヶ月も掛かる様な代物。
そんな疑問が顔に出ていたのか、殿下が教えてくれる。
「君が何か行動を起こすと、大なり小なり問題が起きる事が多いからね。
その君が態々正式な手順で国に要望書を書いてまで、何かをしようと考えているのだから、真っ先に調べて当然であろう」
わぉ、その認識は流石に酷くない?
陛下もそうだけど、いったい人をなんだと思っているのかと思う。
だから、そこで起きた問題の例を喩えなくても良いですからね。
そもそも、それらの問題は私が起こした訳ではなく、逆恨みした相手が引き起こした問題であって、私の責任ではない。
例で出されたのだって、私の商会がより魅力的な商品を出して、そのために客を奪われたから、損失分の金額を賠償した上に利権を寄越せと言われて、はいそうですか、と言える人間はまずいない。
せめてなんらかの取引の上でならともかく、こちらが小娘だと思って脅してくる始末。
私、外見は小娘かもしれないけど、中身はオジさんですから、そんな脅しに屈する訳がないじゃない。
大抵は私が直接に対応するまでもなく、ゼルが脅しの見本を見せて終わりです。
まぁ中には、取引を持ち掛けた人達もいたけど……。
『息子をやろう』
『いらないです』
『では、息子の妻として我が家に迎えてやろう』
『全力でお断りします』
と、内容が取引にすらならない。
いえ、貴族社会だと取引になるのだけど、私には当て嵌まらないと言うだけ。
結果、我が家の自慢の息子の何が不満なんだと逆ギレですよ。
私、お嫁になんていきませんし、お婿さんもいらないのに、もう理不尽の嵐。
いくらイケメンで文武両道の見本みたいな方であろうと、男の時点でアウト。
挙句に男妾の座でも構わないとか言ってくる始末。
でも、ここで終わればまだ良かったのだけど、相手の息子さん、両親に言われてなのか、猛烈に情熱的にアタックしてきたのよね。
私が出る数少ない社交の場で会う度にそのアタックが酷くなり、終いには突如として抱きしめられて耳元で愛を囁かれたものだから、あの時は全身鳥肌ものでしたよ。
恋人でもないのに、普通、耳に唇を当てるかっ!?
しかも大勢の人がいる中でですよ?
『うぎゃ〜〜〜〜っ!』
パーティーの最中ではあったけど、相手を癒しの獣扇で叩き倒した私は悪くない。
悲鳴が可愛らしくなかろうと知った事か。
手袋越しに手にキスされるのも気持ち悪いと思っているのに、それなのに耳にキスよ。
しかも人が硬直しているのを良い事に、ハムハムまでしてきやがった。
極薄の結界越しだろうと、気持ち悪いものは気持ち悪いったらありはしない。
おまけに、そこで諦めて終わってくれれば良いのに、今度は責任を取ろうと言い出してくる始末。
なので商会のゼルに命じて、相手の家の領地に、私の商会関係の商品を全て差し止めさせたのは、もはや正当防衛と言える。
ちなみに私の商会の製品は、一般人をメインターゲットにしていると言っても、ある程度の発言力がある富裕層の生活必需品となった物もかなり多い。
支払いの終えていないものは勿論、終えた物もそれまでの代金を返金してまで引き上げさせたわよ。
ゼルの手配なのか、私の後ろ盾の家々もそれに同調したのものだから、まぁ悲惨な事に。
国の取りなしもあって、禍根を残さないと言う事で手打ちになったのだけど、似たような案件が数件あったので、殿下はきっとその事を言っているのだろう。
だからって私への信頼のなさの理由にされるのには、欠片も納得できないけどね。
「殿下が国を思う気持ちはよく分かりました、それでお話の続きは?」
でも貴族同士の喧嘩に巻き込まれる人達が、一番可哀想だものね。
そんな事態になる前に、止めたいと思う殿下の気持ちは汲んでおくとして。
終わった面倒事を思い出したくないので、話の先を促させてもらう。
「まぁいい、ともかくこの要望書によると、君は治癒魔法が効かなくなった火傷や傷の痕を消せる治療方法を確立したと考えても良いんだね?」
「確立と言うには些か早計ですし、もともとある治療方法を発展させた物に過ぎません。
ただ、現状ではかなりの痛みを伴う治療になってしまうため、その痛みを軽減させるために、現在国で定められている麻酔薬の用途の拡大を要望いたしました」
「技術的な事は分からぬが、傷痕はどれくらい目立たなく出来るのかね?」
ああ、そう言う事ね。
殿下の言葉に、王妃様の護衛騎士の話が繋がった。
王妃様は厳しい方でもあるけど、努力を弛まぬ方にはお優しい方でもある。
自分を守るために、癒えぬ傷を負った騎士のために陛下や殿下に無理を言ったのだろう。
今回の招集は、おそらくそう言う事。
「まだ治験の最中ですので、詳しい事はまでは。
ただ動物実験では二ヶ月ほどで、パッと見では分からないくらいには。
人体に対しては小さな物しか行っておらず、大きな物となると今回が初めての事例になります」
「その治験者の具合はどうなのかね?」
「現在は身体の一部に対して施しており、今後の経過観察を見てから顔や手などの肌を露出する部分に施そうと考えております。
前もって言わせて戴けるのであれば、私としては治験者の命と身体が最優先です」
人に対しての実験が満足に済んでいないからと言って、ある程度の安全性と効果を確認してからでなければ、治療予定を早める訳にはいかないので予め釘を刺しておく。
「それと治験者は女性ですので、現在の結果が出てからの方が、患者の精神的な負担を減らせると思います」
「……はぁ、既に君も気が付いていると思うが、今回呼び出したのはファルーナ嬢に対しての治療を施してもらいたいと考えたのだが、他にも治療が出来るのならばと思っている者も、それなりにいる」
治験希望者で人体実験は幾らでも出来ると言われても、問題が残っていたなら犠牲者が増えるだけだし、問題があるのであればそれを改善しないといけない。
こればかりは一つ一つ乗り越えて行く物であって、単に数を増やせば良いと言う物ではないため、カイル殿下の要望には応えられない。
それに気なる事もある。
「騎士や武人にとって、傷は勲章という言葉があります。
傷の一つ一つに想いがあり、約束の地へ旅立った方との繋がりでもあると考える方が多いという話も聞き及んでおります。
傷を抱える皆様が全てが、必ずしも傷を癒したいと考えているとは限りません」
人には価値観があり、それは人によって違う。
たとえ醜いと言われようが鼻で笑い、その醜いと言われた傷の経緯と当時の想いを大切にしている方がいるのも本当の事。
現に命に関わらないからと、治癒魔法を受けずに自分への戒めとして敢えて傷を残す人間もいるほど。
自分勝手な同情心でもって、他人の心に踏み込むべきではないものと言うものは、世の中には存在する。
「女性の君からそう言う言葉を聞けるとは思ってもいなかったが、……確かにそのとおりだな。
母上の一方的な思いと言うのもあるため、その辺りは私の方で今一度確認しておこう。
それとは別に、やはり治療方法があるのであれば、早急にその方法を確立しておきたいと言う思いがあるのは本当の事だ」
「殿下のお言葉は私にとって都合が良い話ではありますが、理由をお聞きしても?」
ぶっちゃけて言わせてもらうならば、治療のための麻酔薬の治療用途の拡大の要望書は出したものの、認められる可能性は低いと思っていた。
私がポーションの魔導具を作ったため、ちょっとした怪我ならば治癒術師や医療神官がいなくても、現場での治療が可能になったからだ。
傷跡を消すための治療費を出せる人間であるならば、ポーションを携帯出来るようになるため、ますます新しい治療方法で治療を受ける人間は少なくなり、廃れてゆく治療方法になる可能性が高い。
そんな先細りが見えている患者のために、国が麻薬の乱用に繋がるかもしれない治療用途の拡大に許可を出すとは思えなかった。
ただ、それでも一縷の望みを掛けて要望書を出しただけの事。
「恥ずかしい話、母上の思いと似たようなものだ。
私や妻のセレスにとっても、ファルーナ嬢の事は他人事ではない。
近衛騎士にとって、護衛対象である王族のために傷を負い、時に命を落とすのは職務であると同時に栄誉な事だ。
無論、家族の心情としては、とてもそうは思えぬだろうが、王族のためにその身を盾にした事は栄誉な事としなければならない。
それは彼等に守られた王族としての義務であり、彼等の誇りを守るための務めだ。
君はファルーナ嬢が、何故『嬢』呼ばわりされてているか分かるかね?」
言われてみれば、確かに変かも。
近衛騎士であるファルーナ様は、昔から王妃様に付き従っているため、それなりの年齢。
ただ、貴族の中で独身女性がいない訳ではないので、おかしな事ではないけど、王族から信頼を得ている近衛騎士ともなれば、その縁を求めて、それなりに縁談の話があるはず。
『嬢』は未婚女性や成人していない女性を表す敬称で、ファルーナ様ならば『夫人』と呼ばれるのが正しい。
無論、私みたいに、男性は嫌だと言う女性という可能性はあるし、未婚という可能性もある。
でもそれなら『婦人』と呼ばれるはずだし、ファルーナ様は騎士でもあるから『卿』でも構わないはずだけど……、殿下の言い方だと違うみたいね。
「傷が元で婚姻を解消されたそうだ。
そして、家とは関係ないところで怪我を負ってきたのだから、ファルーナ嬢の実家であるカーマイン伯爵の教育によるものであり、自分達には過失がないため離婚の際に賠償を請求すると言われたそうだ」
「はぁ?」
「開いた口が閉じない気持ちは分かるが、話は最後まで聞きたまえ。
醜い妻を持つ事になったと、かなり法外の要求だったらしいが、それは口実でね。
素直に離婚に応じ、彼女が生涯『嬢』と呼ばれる事を受け入れるのであれば、賠償の要求はしないとね。
彼女は実家に迷惑を掛けたくないと、黙って受け入れたそうだよ」
ぁぁ……、なんと言うか、頭が痛くなる。
またですか、またそう言う案件ですか?
前世では男だったけど、本気で男性不信に陥りそう。
いやいや、そう言うクズはごく一部だから。
基本的にこの国の貴族の男性は、一夫多妻が認められてはいるものの、己が妻を大切にする気風があるし、私の周りの男性も色々と問題があってもそこは変わらない。
ただ、私の場合は男性というより、人間性で見ているのだけどね。
「つまり、相手が女性として『未熟』だから、離婚も仕方なしという事にしたかったと?」
「そのようだね。
隠語ではあるが、『嬢』と言うのは未熟者を表す言葉でもあるからね」
「そいつ馬鹿ですか?」
「私もそう思うが、どうしようもない見栄っ張りなのだろう」
私は中央政権には何ら興味はないけど、王族、それも王妃様のお気に入りの騎士で、命を賭けて王妃様を守ったともなれば、王族全体からも強い信頼を得られる。
貴族であるならば、その縁を失ってまで普通は離婚はしないわよ。
横に美人をはべらかせて見栄を張りたいにしても、一夫多妻が認められるこの国なら、別に態々離婚しなくても良いはずなのに。
「彼女の功績を考えれば、第一夫人から外す訳にはいかないのだろう。
そうなれば、公な催しでは彼女を連れて歩かない訳にはいかない」
「ですが、王妃様付きの護衛騎士ともなれば、その手の催しには滅多に出ないのでは?」
「貴族の慣わしや家の都合もあるから、年に数回は出る必要がある。
それも我慢ならんのであろう。
あとは騎士や魔導士の女性を妻に持つ男性によくある病気だ」
ああ、自分より強くて優秀な女性を認めたくないと言うアレね。
女性は男性を立てて、あらゆる意味で下にいるべきだと言う病的な思想。
男性優位の社会だからある程度は仕方ないにしても、行き過ぎた行為や思想は問題にもなっている。
でも家や夫婦の仲ともなれば、他人は介入しにくい。
「彼女に関しては、寧ろ離縁されて正解だと思うが、彼女のような思いを他の者にさせたくないと言う方が私としての本音だ。
ポーションと言う魔導具を君が世に出してくれはしたが、それを使える状況ばかりとも限らない。
守られる立場である王族としては、彼女のような傷痕が残る事になっても、元に戻せる治療方法を確保しておきたいのだ」
ふぅ……、急を要する話ではないけど、だからと言って不用意に呼び出すなと怒れるような軽い話でもない。
王妃様からすれば、一刻でも早く傷跡を消してあげたいと言う気持ちも分かるから、今回は大人しく、ジュリのお怒りを鎮める事に力を入れるかな。
あっ、因みに麻酔の使用用途の拡大に関しては、治験と言う事で特別に許可を戴けた。
治療方法が確立した事が確認できれば、議会に掛けて正式に許可を通すつもりだとか。