表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私、お嫁になんていきません  作者: 歌○
第五章 〜新米辺境伯編〜
625/864

625.制服って大切ですよ。 言っておくけどJCやJKの制服じゃないですからね。





【商会、森の滴・トライワイト王国支部】



 商会のトライワイト王国支店長、ゼンターによる現地雇用者への軍隊式洗脳教育疑惑は、どうやら私の誤解と言うか早とちりだったようだ。

 あの後、周りの女性に違うと説明された。

 皆んなにとってゼンターは、厳しいものの、もの凄く良くしてくれているらしいとの事。

 宿舎による安心な寝床に、温かい御飯、更にお金が貰えるお仕事までと。

 先程のは偶々で、ゼンターにはもの凄く感謝しているのだとか。

 とくに紳士な所が。

 奥さん一筋で、周りにたくさん女性がいても、一切そう言う目で周りの女性を見ない辺りが、特に好感持てると。

 男色趣味があるなら、なお安全で良いって、……身の安全と言う視点で人気なのね。

 そこまで言われると、ある意味ゼンターが哀れね。

 もう若くはないとは言っても、なかなかの美丈夫で性格も悪くないのに……。




「私物は籠一つ分って、昔の私の所の村みたいね」

「少しずつですよ、これでも頑張った方なんですよ。

 他所よりも優遇すると言っても、あまり周りと差をつけてしまって、摩擦を起こしても問題が出てしまいますから」


 ゼンターがモテるモテないはさておき、宿舎の方は結構殺風景だ。

 備え付け収納があるから、物が表に出ていないと言うのも大きい。

 それに私の趣味が反映しているのか、土足禁止の高床式の住居。

 建物が清潔に保たれやすく、病気になり難いと言うのが、採用した理由のようだ。

 あと、地面との高さの差があると、自然と窓の位置も高くなるため、防犯性も高まるのも理由らしい。

 そうだよね。

 覗きや不法侵入は、女性にとって脅威だもんね。

 現地で雇った工場を含む商会員は、九割が女性。

 実際に商いに携わる人間は全員男性で、肉体労働とも言える作業を女性がとなる。

 女性の殆どが未亡人なり、その連れ子なり、酷い扱いで逃げ出して来た者とかなのだとか。

 男性の方も信頼できる相手と言うか、半分はトライワイト王国の関係者みたい。

 監視兼警護、更に揉め事が起きた際の対応要員を兼ねているらしい。

 国からも商会からも、お給金を二重に貰っているので、キッチリ仕事はしてくれそうだ。

 海藻を使った商いは、国内では私の商会が半永久的に独占とか言うのだから、至れり尽くせりだけど……、言っておくけど、私はそこまで求めてないからね。

 トライワイト王国内で商会の支店を置く上での優遇処置程度です。

 幾ら海藻をを扱っている大きな店が他にないからって、やりすぎな気がするけど。


「女性蔑視撤廃政策の一環だそうです」


 ……上からの命令による押し付けより、自分達で切り開くのを見守りながら保護した方が、周りからの反発が少なくて楽な上、色々と学べる事になると。

 便乗している上に、色々と押し付ける気だな……、そう言う事なら信じるとして。

 は〜い、皆んな集合~~っ。

 見て欲しい物があると集めるのだけど、ゼンターが私が広げた物を見るなり、眉を顰めて聞いてくる。


「会長これは?」

「商会や工場での制服の参考資料よ。

 同じ意匠の服を着る事で、仲間意識を意識させると共に、商会の一員だと誇りを持ってもらうの。

 ゼンターが頑張って商会を大きくすれば、私の商会関係者には手を出すなと、周りの変な輩に狙われなくなる可能性が高くなるだろうと言う希望的観測もあるけどね」

「……本音は?」

「折角の女所帯なんだから、着飾らせたいに決まっているでしょう」


 勿論、最初に言っていた事の方がメイン。

 ただね、私もこの国の男尊女卑の風潮を考えれば、少し早いかなぁとも思っていたのよ。

 でもね、やっぱり着ている物を見ると、忍びなくなって着たわけ。

 まだ寒い季節なのに、季節外れの擦り切れた服を皆着ているのよ。

 しかも継ぎ接ぎだらけのボロボロの服を。


「制服なら、十分な理由にはなるでしょう?

 例え目立とうとも、逆に、女性蔑視政策の広告塔にもなるでしょうし」

「……はぁ、せめて生地は安いものでお願いします」


 その辺りが妥協点か。

 広告塔と言うのは私が勝手に言っている事だけど、たぶんこの国の思惑には沿っているので、乗って来てくれると思う。

 でも、逆に女性蔑視問題の改善に対して否定的な人達には、攻撃の対象になり得る。

 男に媚を売るためでもないのに、良い服を着るなど生意気だって。

 なら、生地の質でその辺りの調整を取ろうと、瞬時に提案できるゼンターの感覚は悪くないと思う。

 そんなやり取りしている間に、女性従業員達は、私が書いた幾つかの意匠図を見比べながら、痩せこけてはいても明るい笑みを浮かべる様子に、彼女等が希望を持って生きているのだと何となく感じられる。

 そうして、周りと相談した結果は……。


「……ものの見事に全部ズボンね。しかもラインの出難い」

「安全そうですから」

「危険な目には遭いたくないの」

「少しでも抵抗できそう」

「綺麗な服や可愛い服よりも……ね」

「はしたなくても構わない」


 ぁ~……ぅ……、うん、何も言えないわ。

 『女性=スカート』が常識の世界で、ファッションとは関係なくズボンを履きたがる詳しい理由など聞きたくないし、言葉の意味を想像したくもない。

 とにかく切実な事情の方が優先。

 私、中身が男なのに、この国の男の蛇口を捥いで廻りたくなるって、どれだけなのよ。

 だけど、そんな自分の自己満足よりも、目の前の人達の事の方が優先。


「なら綺麗や可愛いよりも、働く女の格好良さを追求しようじゃないのっ!」


 と言っても、上着の丈はやはり少し長めで、ズボンの上からでも女性らしい部分は隠す。

 それでいて動きに支障ない様に折り込みかスリットを入れつつ、スーツのイメージを残して。

 ……これでも、まだ危険と?

 では、作業着系レディース服を、前世では結構、格好可愛いのあったからね。

 要所要所をこの世界に合うように修正しつつ、使う人間の意見を取り入れる。

 着る人間が着たいと思える服って大切だもんね。

 ……生地の候補としてこれはどうかって?

 綿の一種だけど、繊維が太過ぎて、作った布は頑丈だけど、ゴワゴワでザラザラと肌触りが悪くて不人気。

 でも植物性で繁殖力が強いから、大量に出来るため安い、とゼンター御推薦の生地は……。

 デニム生地っぽいの来たぁぁ~~~~~っ!

 不人気で安い生地だから、海を渡ってこなかったのね。

 なら路線変更よっ!

 これなら幾らでも女性に似合って、格好良い作業着を兼ねた制服が作れるわっ!

 アメリカントラックレディーとかねっ!

 ジュリに着せてみたいなぁ〜。

 スタイルの良い彼女が着たら、絶対に格好良いはずだもの。

 エリシィーも意外に似合いそうではあるから、一度お試しでもって……、待て待て、今は目の前の人達の分を考えるのが最優先。

 意匠図を書いている間に、お互いに採寸して貰うけど、実際作るのは私の商会傘下の服飾店。

 私のは所詮は素人だから、そちらで意匠図の修正を入れる必要性があるもの。


「はぁ……、此処まで纏まっているのに、今更、帰属意識を強める必要があるとは思えないんですがね」


 ん? ゼンター、何か言った?

 悪いけど、今は集中しているから、用が無いなら黙っていてくれない。

 丁度、筆に油が乗って来た所だからさ。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ